三国志の定番、吉川英治の名作を、単行本で大きな活字で味わいたい、という読者の要望に応え、全10巻を刊行。
スケールの大きな構想、美しさ、リズム感、臨場感のある文章は、吉川英治の『三国志』の大きな魅力です。
成功し、失敗し、泣き、笑い、苦労する登場人物の姿には、生きるヒントがあふれています。
あの感動を、読みやすい大きな文字でお届けします。
劉備、関羽、張飛の誓い
世の中は乱れている。民衆は苦悩にあえいでいる。男子たるもの、黙って見過ごしていいのか。天下国家を救いたい。
大志を抱き、立ち上がる劉備、関羽、張飛――。三人は、美しい花が咲き誇る桃園で、義兄弟の杯を交わし、生涯、背かないことを誓った。
「われらここにあるの三名。同年同月同日に生まるるを希わず、願わくば同年同月同日に死なん」
この誓いが、美しい音楽となって、『三国志』全十巻の根底に、常に鳴り響いている。
だが、その道は険しい。実に険しいところが、現実の読者が歩んでいる人生と重なり、共感、共鳴し、感嘆せざるをえなくなる。それが吉川英治『三国志』の魅力である。