三国志の定番、吉川英治の名作を、単行本で大きな活字で味わいたい、という読者の要望に応え、全10巻を刊行。
美しさ、リズム感、臨場感のある文章と、スケールの大きな構想は、読者をぐいぐい引き込んでいく魅力があり、成功し、失敗し、泣き、笑い、苦労する登場人物の姿には、生きるヒントがあふれています。 初めて吉川文学に触れる人は、読書がますます楽しくなることでしょう。 かつて胸躍らせて『三国志』を読みふけっていた人には、再びあの感動を、読みやすい大きな文字でお届けします。
内容紹介
強大な組織が崩壊するのは、どんな時か。その答えが、伝統ある名門・袁紹が滅んでいく過程に、つぶさに描かれている。
曹操は、袁紹が拠点としていた城に猛攻撃を加えていた。しかし、兵の犠牲が増えるばかりで揺るぎもしない。重臣が曹操に進言する。
「この城は胡桃のように外殻は堅固ですが、中身は虫が食っています。やがて亀裂が入るのを、悠々待つべきではありますまいか」
袁紹の家臣団に、内輪もめが絶えないことは、他国にまで知れ渡っていたのだ。どんなに経済力、軍事力を持つ大国であっても、そこを守る人間に不和が生じたら、長続きはしないのだ。 劉備は実に弱い。戦えば負け、家臣はちりぢりに敗走する。それでも心を一つにして、再び結束する。この強固な「人の和」が、やがて曹操に脅威を与える大国「蜀」を築き上げていくのである。