三国志の定番、吉川英治の名作を、単行本で大きな活字で味わいたい、という読者の要望に応え、全10巻を刊行。
美しさ、リズム感、臨場感のある文章と、スケールの大きな構想は、読者をぐいぐい引き込んでいく魅力があり、成功し、失敗し、泣き、笑い、苦労する登場人物の姿には、生きるヒントがあふれています。 初めて吉川文学に触れる人は、読書がますます楽しくなることでしょう。 かつて胸躍らせて『三国志』を読みふけっていた人には、再びあの感動を、読みやすい大きな文字でお届けします。
内容紹介
いよいよ「赤壁の戦い」へ突入する。『三国志』の中で、最も有名な戦闘だ。しかし、吉川英治の面白さは、壮大な戦闘シーンよりも、人間の心の描写にある。欲・怒り・愚痴に翻弄される悲哀。それでも信義を貫く前向きな生き方。人間を、絶妙に描き切っている。
曹操が、呉を攻略しようと百万の軍勢で南下してきた。恐れをなした呉の重臣には、戦う前から降伏を主張する者が多かった。そこへ、劉備の使いとして孔明が一人、乗り込み、舌戦を繰り広げる。
「諸卿らは、一身の安きを思うて国恥を念とせず、ご主君をして、曹賊の軍門に膝を屈せしめようとしておられるではないか。――その懦弱、卑劣……」
重臣らの生き方までえぐり出して論破する。これほど鮮やかな討論は他にない。呉は、開戦へ向け、方針を大転換させた。