三国志の定番、吉川英治の名作を、単行本で大きな活字で味わいたい、という読者の要望に応え、全10巻を刊行。
美しさ、リズム感、臨場感のある文章と、スケールの大きな構想は、読者をぐいぐい引き込んでいく魅力があり、成功し、失敗し、泣き、笑い、苦労する登場人物の姿には、生きるヒントがあふれています。
初めて吉川文学に触れる人は、読書がますます楽しくなることでしょう。
かつて胸躍らせて『三国志』を読みふけっていた人には、再びあの感動を、読みやすい大きな文字でお届けします。
(主な内容)
国が栄える、長久の計は何か。劉備の問いに、孔明は答える。
「人です。すべては人にあります」
荊州を得た劉備は、有能な人材を見出す努力を続けていく。それは、呉の孫権も同じである。
「孔明に勝る大人物がいる」と聞き、急ぎ城へ招いたが、一見して、がっかりした顔をした。「何分にも、風采があがらない。面は黒疱瘡のあとでボツボツだらけだし、鼻はひしげているし、髯は髯というよりも、短い不精髯でいっぱいだ。(こんなまずい男様も少ない)」
孫権の目は感情に曇っていた。虫が好かないという理由で大賢人を他国へ追いやってしまったのである。
この風采のあがらない男こそ、やがて劉備に抜擢され、副軍師の重職に就く龐統だ。
人は、風貌や外見だけでは、判断できない。