三国志の定番、吉川英治の名作を、単行本で大きな活字で味わいたい、という読者の要望に応え、全10巻を刊行。
『三国志』は、ただの娯楽小説ではない。「人間とは、何か」を、深くえぐり、考えさせる力を持っています。 初めて吉川文学に触れる人は、読書がますます楽しくなることでしょう。 かつて胸躍らせて『三国志』を読みふけっていた人には、再びあの感動を、読みやすい大きな文字でお届けします。
内容紹介
英雄も病にはかてない。豪勢な宮殿を造り、天子に並ぶ権力を誇っていた曹操も、重態に陥った。 家臣が厄払いを勧める。天下の道士を集めて祈祷を命じてはどうか、と言う。曹操は苦笑しながら、 「日々千金を費やすとも、天命ならば一日の寿も購うことはできまい。(中略)世のもの笑いであろう。無用無用」 と退けた。涙雨のごとく頬をぬらし、やがて最期の息を終わった。 百難を克服する英雄の姿に、いつまでも死なないような錯覚を抱きがちだ。しかし、劉備、関羽、張飛も、次々に亡くなっていく。 「人々の胸へも云わず語らず、人間は遂に誰であろうとまぬがれ難い天命の下にあることを、今さらのように深く内省させた」 小説を書きながら、吉川英治は、私たちにも内省を求めている。