プロローグ 親のこころ・陽だまりの山道
1 死の淵に立つ母の手が伸び、付き添って寝る私の掛け布団を力なく引き上げてくれた
(愛知県 54歳・女性)
2 「お母さんだって熱があるのに……」
(東京都 28歳・女性)
3 「絶対に幸せにする。幸せになる」
(神奈川県 37歳・女性)
4 車が心配だからと、高齢の母は、五十歳を過ぎた私の手を握り、横断歩道を渡る
(長野県 81歳・女性)
5 「この子を産んだら、あなたは一〇〇パーセント死にます。いいのですか……」
(徳島県 30歳・女性)
6 親は、子供が「ただいま」と家に帰ってくるまで心配なんだ
(愛知県 29歳・女性)
7 子供の命と引き換えに逝った妻の最後の言葉は、
三人の子供を「よろしくお願いしますね」
(神奈川県 44歳・男性)
8 「おまえの痛いその足、私がもらって死んでやるのに……」
(熊本県 59歳・女性)
9 「せめて子供だけでも人並みにお腹いっぱい食べさせてやろう」。
短い生を終えた母の心のうちが、悲しいほど分かる年になった
(愛知県 60歳・男性)
10 背もだんだん縮み、足を引きずりながら手料理を作ってくれる
(東京都 44歳・女性)
11 「お母ちゃんは欲しゅうねえし、のどは渇いておらんからいらん」
(岡山県 64歳・女性)
12 「結婚資金として、お母さんが毎月少しずつ振り込んでるんだよ。
今、これだけあるから。心配しなくても、大丈夫。ね」
(長野県 22歳・女性)
13 うれしかった、ランドセルの鈴
(埼玉県 16歳・女子)
一部 親のこころ・豊穣なる海
1 水戸黄門の誕生祝い
誕生日は、最も粗末な食事でいい。
この日こそ、母を最も苦しめた日だからだ
2 良弁杉の由来
大ワシにさらわれた子供を、
母は、三十年間捜し続けた
3 西郷隆盛の涙
ああ、母に心配をかけてしまった。親不孝なことを
してしまった。すまんことをしてしまった
4 貝原益軒 親孝行の「養生訓」
友人や妻子と親しくし、恩を受けた親を
遠ざけている。なんと愚かなことか
5 正算僧都の母
どうして母は、遠くにいても、
息子の苦しみが分かるのだろうか
6 「断腸の思い」の由来
母猿はあきらめない。
岸をつたって、どこまでも追っていった
7 上杉鷹山の手紙
父母の恩は、山よりも高く、海よりも深い
8 芥川龍之介「杜子春」
この不孝者めが。
おまえは父母が苦しんでも、自分さえ都合が
よければ、いいと思っているのだな
9 紀貫之「土佐日記」
わが子が先に死んだとは、
いつまでたっても思えない……
10 石川啄木「一握の砂」
たわむれに母を背負いて
そのあまり軽きに泣きて……
11 慈母を哀れむ「望児山」
母は、息子の帰りを信じて、
雨の日も、風の日も、山に登った
12 世界の発明王 エジソン
母がいなかったら、
私は、ぐれていたかもしれない……
13 孟母三遷の教え
ここは、わが子を育てるのに、
ふさわしい所ではない
14 斎藤茂吉「死にたまふ母」
みちのくの 母のいのちを 一目見ん
一目みんとぞ ただにいそげる
15 吉田松陰 母の夢
子供は親のことを忘れて突っ走るが、
親は常に子供を案じ続ける
16 ファラデーの研究室
母親の涙には、
化学では分析できない深い愛情がある
17 万葉の歌人 山上憶良
世界中の財宝を集めても、
わが子に勝る宝はない
18 かぐや姫と竹取の翁
どんなに苦しいことがあっても、
この子の顔を見ると元気になる
19 宮本武蔵とお杉
「親バカ」といわれても、わが子を案じるあまり、
判断力を失ってしまう
20 ドラえもん「ぼくの生まれた日」
ひょっとしたら、ぼくはこの家の、
本当の子じゃないのかも……
21 岸壁の母 念じる力
「母は来ました 今日も来た……」
舞鶴港で、わが子の帰りを待ち続ける
22 古典落語「寿限無」
親は、かわいい子供に、
長い長い名前をつけてしまった
23 孔子 風樹の嘆
孝行のしたい時分に親はなし
石に布団は着せられず
24 大岡忠相の名判決
「私が実の母です」
言い張る二人の女性
25 豊臣秀吉 最後の願い
「秀頼を頼む」
息子のためならば、恥も外聞もない
26 黒澤明 映画「生きる」
親が末期ガンで苦しんでいるのに、
子供は気づいてくれない。
耐え切れず、布団にもぐり込んで泣いた……
27 法然上人 父の遺言
決して犯人を恨んではならない。
私が非業の死を遂げるのは、因果応報なのだ
28 ジョン万次郎の漂流記
「母に会いたい……」
十二年かけて、万次郎は日本へ帰ってきた
29 天涯孤独の与謝蕪村
母のふところには、どこにもない
格別な温かさがありました
30 野口英世 母の決心
どんなことがあっても、
おまえだけは一生安楽に養い通すぞ、
たとえこの母が食べるものを食べずとも
二部 親のこころ・キラキラと川は流れ
41名分の体験談を掲載しています。
エピローグ 親のこころ・虹の渡る湖
六十億の母あれど
(高森 顕徹)