『宮本武蔵』『三国志』『新書太閤記』『新・平家物語』など、数々のヒット作を生み出した吉川英治の、小説第一作は、30代に書いた『親鸞記』でした。その後、40代に書き改めたのが、この『親鸞』です。新聞連載の後、中村錦之助主演で映画化され、大ヒットしました。
吉川英治の名作を、文庫本ではなく単行本で、しかも大きな活字で味わいたいという要望に応え、『親鸞』全4巻を刊行しました。
(1巻のあらすじ)
平家が全盛を誇っていた頃、十八公麿(まつまろ。のちの親鸞聖人)は、京都の藤原家に生まれました。 平安貴族の嫡男でありながら、なぜ、わずか9歳で出家したのか。得度式の前に次の歌を詠んでいます。
明日ありと 思う心の あだ桜 夜半に嵐の 吹かぬものかは (今を盛りと咲く花も、一陣の嵐で散ってしまいます。人の命は、桜の花よりもはかなきもの……)
比叡山で、範宴と名を改め、仏道修行へ。10年間、どれだけ勉学に励んでも、心に明かりがともらない範宴は、大和へ遊学に向かいました。 久しぶりに下山した京の町は、平家の滅亡とともに変わり果て、人も、社会も、激しい無常の中にいることを知らされるのでした。