私はもともと古典があまり好きではなかった。馴染みのない文語の羅列、難しい内容。けれど、その考えは古典を読む前の偏見に過ぎなかった。
最初に古典の魅力に気が付いたのは中学二年生の春。宿題で『伊勢物語(角川ソフィア文庫-ビギナーズ・クラシックス)』を読んだ時。伊勢物語は和歌が織り交ぜられた短編集で多種多様な人間模様が描かれている。
私はこの本を読み進めていくうちに次のページを早く読みたいと思うほど古典に興味を持った。
ある日の授業で伊勢物語を扱った。最初の一文を読んだだけで、話の内容すべてが稲妻のように駆け巡った。あまり記憶力が良い方では無い私がここまで鮮明に覚えていることに驚いた。
古典は短い文でありながらそこに大きな思いを乗せることができる。だからこそ人の胸に深く刻みこみ、心を豊かにしてくれる。そう思い、今回『こころ彩る徒然草 兼好さんとお茶をいっぷく』を手に取った。
本書ではすべての人が共感できる「人生のヒント」が描かれていた。
その中で私が一番共感したのは、『第九十二段 「後で、時間を取って、しっかりやろう」これは、今を怠けている姿です』だ。この段では、弓(弓道)を例にしている。
私も弓道をしているので興味を持ったのだが、弓道していることだけでなく、この段で伝えようとしていることにも共感した。この段では、「後があるから今は怠けても大丈夫だ。」という気持ちを捨てなければいけないということを伝えている。
私も宿題をやるときに
「まだ、明日提出じゃないからやらなくていいや。」
という考えが浮かび、その時は怠けてしまう。次はすぐにやろうと思っても、やはり
「今はやらなくてもまだ大丈夫」
と思ってしまう。本書で登場する弟子のように自分では気が付かないが心の奥には
「まだ大丈夫」
という気の緩みがあるのだと思った。
このように古典は、昔に制作された文章ではあるが、内容は現代に通用するものばかり。昔も今も人間の心は変わらない。
人間は事実を率直に言われると心に響く。だからこそ古典は人々の心に残り、現代まで受け継がれてきた。そして、現代を生きる私たちはこの大切な日本の文学たちを後世に残し続けるべきである。