今、幸せな気持ちで子育てをしています。
もうすぐ9カ月になる子どもがいます。この本を読んで変わったことは、なかなか離乳食が進んでいなかった息子が、今、喜んでごはんを食べるようになったこと。そして、それと同時に、私の考え方が変わったことだといえます。
私が中学生の頃、98点の美術のテストを持って帰ったことがあります。間違ったのは1問だけ。「あと少しで100点だったのに」、こう言われると思いな がら父親に差し出しました。しかし、父から出てきた言葉は、「おお、すごいな!」でした。さらに、実技で描いた薔薇の絵を見て、「すごく上手だ。生きてい るようだ。美術という立派な特技を持っているよ」と言ってくれました。
今思えば、小学校から大学までで受けてきた、何十、何百というテストの中で、この薔薇の絵を描いた1枚が、最も思い出深くて大好きな答案用紙なのです。 それはやはり、大好きな父に認められたという、大きな意味のある1枚だからです。大人になっても、親にほめられた喜びは忘れないものだということを、大人 になって初めて知りました。
あれから13年が経ち、今では自分が子を持ち、この本に出会いました。思えば父は、どんな時でも私のよいところを、言葉で伝えてくれていました。私の心は、そんな父の優しさで育ったのだと、今感じています。
この本に、「できた1割をほめていけば子どもはぐんぐん元気になります」とあります。息子におかゆを作っても、一口食べてはすぐに口を固く閉じ、嫌だと いう顔をしていました。野菜も、果物も、すべて同じでした。しかし、「全く食べていなかった」のではなく、10のうち1は「食べている」ことに、この本を 読んで気づかされました。なぜこの「1」に気づいてあげられなかったのだろう。0と1の差はとても大きいのに。
その日から、私と息子の食事の時間は変わりました。一口でも食べれば、「よく食べたね!」と頭をなでてほめてあげるようにしました。すると、二口、三口と、次第に食べるようになってきたのです。
8カ月だからこのくらいのものが食べられるのが普通、というのは、親のペースから見たもの。自分の子には自分の子のペースがあって当たり前。ゆっくりでいいよ、と思えるようになりました。
ほめてあげるようになってからは、食事が楽しいと思うようになったようです。ごはんを見せると、にこにこして、身を乗り出して来るほどです。間違いなく、私の考え方が変わってから変化した子どもの様子です。
中学生だった私が親にほめられてうれしく、次もがんばろうと思えたように、8カ月の小さな子どもも、親の表情や伝わるものは一緒なのだと、我が子によって教えられました。
離乳食が進まないことを悩み、父に相談すると、「いつかは食べるようになるんだから焦ることないよ」という答えが返ってきたことがあります。父は少々の ん気なところもありますが、小さなことに悩まず、いつもどっしりと構えていて、とても大らかです。今では、「親の姿」として、また1つ尊敬する部分が見え ました。
初めての子育てで、どのように子どもと接していけばよいかが全くわからなかった私。この本を読んで、「今すでにある、いいところ、がんばっているところ を見つけていく」ことを知り、毎日が発見の連続です。さらに、見つけようとすることで、息子が好きなアニメのキャラクター、足をバタバタさせたりして喜ん で聴く歌、パパとママの匂いが染み込んだお気に入りグッズなど、たくさんのことに気づけるようになりました。それだけで、急に、育児というものが楽しいと 思うのです。
この先、息子は自分の将来へ向けて、自分の足で歩いていくことでしょう。その中で、学校での学びも含め、「わかった」「できた」の数は、きっと、とても 数えられるものではありません。しかし、それは「当たり前」のことではなく、子ども自身ががんばった結果だということを、忘れないでいたいと思います。が んばったこと、できたことを見逃さず、たとえ10のうちの1であっても、100のうちの1であっても、思いきりほめてあげようと思います。いつも私のよい ところを見てくれていた、父のように。