いじめや不登校、引きこもり、非行など現代の子どもとその親が抱える問題は多くあります。その問題を解決するためのヒントが書いてある本です。私はこの本を読み、納得できる所が随所にあり、また新しい発見も多くありました。
最も印象に残っている言葉は「自己評価」です。自己評価とは自己肯定感、自尊感情とも言いかえられますが、自分は生きている価値がある、大切な存在だ、必要な人間だという気持ちです。現代の子供は自己評価が極端に低いため、不安な行動をとってしまうということが分かりました。
自己評価を育むために必要なのは親の愛情です。しかし共働きが多くなり、子どもとゆっくり向き合う時間の持てる人は減少しています。これは仕方のないことかもしれませんが、せめて子どもが話があると言った時だけでも、じっくり話を聞いてあげることはできないでしょうか。
10代になると、自分から親に話しかけることは少なくなります。普段はあまり話をしない子が何か話そうとする時は、それだけ大事なことがあるのです。いくら忙しくても話を聞いてあげられるようになりたいと思いました。そういった1つ1つのコミュニケーションを通して、愛情を伝えることが大事だということが分かりました。
私は幸い、親から充分な愛情をもらって育つことができました。私の場合は、親よりも祖母が相手になってくれることが多かったのですが、やはりその中からもたくさん愛情を感じることができました。本を読み終えると、家族への感謝の気持ちが強くなりました。
子ども社会で最も多い問題は”いじめ”だと思います。どんな理由があるにせよ、いじめる方が悪いのです。大人はよく、弱いからいじめられるとか、いじめられる方も悪いところがあったなどと言うけれど、そんなことは絶対ありません。いじめはけんかと違って一方的で、多人数で1人をという場合が多いです。そんな中でいじめに耐え、大人に相談してくる子は強いのです。
勇気を出して相談してきた子に対し、お前が弱いからだ、お前に悪いところがあったんじゃないか、というのはあまりに酷く、多くの大人はいじめを甘く見すぎていると思います。昔と違い、今のいじめは陰湿で執拗です。いじめを苦に自殺してしまう子もたくさんいます。やはり、いじめをなくすことは出来なくても、減らしていかないといけないと思います。
いじめをやめさせる上で一番大切なことは、加害者のケアだと書いています。加害者は以前被害者であったということが多いからです。いじめでも家庭内暴力でも、その被害者はそのストレスから加害者になってしまうというのは悲しいサイクルです。それを絶たなければいじめは減りません。加害者1人1人へのケアの大事さが分かりました。
そしてもちろん被害者のケアも大事ですが、そのためには加害者からの、心からの謝罪が必要だそうです。確かに、謝ってもらうことができたら、その人に対する恨みは消えます。とても簡単なことですが、謝罪の一言さえあれば怒りがおさまるということはよくあります。言葉は人を傷つける凶器になりますが、人の心を落ちつかせるための薬にもなる、ということがよく分かった気がします。
いじめは初期に発見し、早期に解決することが必要です。長くいじめを受けてしまうと引きこもってしまったり、不登校になったりしてしまいます。それは、いじめに耐えきれなくなってしまったからだと思います。そのようにSOSを出している子を、無理矢理学校に行かせてしまう親も多いと思うのですが、それはあまりに危険な方法です。
いじめは更に続き、ひどければ自殺してしまうおそれがあります。自分で自分の命を絶つことほど悲しいことはありません。尊い命を救うためにも、子供の小さな変化を見のがさないようにしなければならないと感じました。
この本からは、子供を育てるヒントはもちろん、自分が成長するためのヒントも得ることができました。そして人間という生き物の繊細さを学びました。人間や言葉には取扱説明書は付いていません。人を傷つけ、傷つけられて初めて本当の扱い方が分かるのかもしれません。その本当の扱い方を身につける時期が10代なのだと思います。その時期はとても心が不安定で揺れ動き、たくさんの悩みを抱えてしまいます。死んでしまいたいと思うこともあるでしょう。正しいことは何なのか分からなくて、犯罪や非行に走りたくなることもあるかもしれません。
しかし、思いとどまることができるのは、親を裏切りたくないという気持ちがあるからです。その気持ちは、親からもらったたくさんの愛情から生まれます。これから大きな希望を持って生まれてくるであろうたくさんの命が幸せに生きていけるように、私たちは責任を持って愛情を注いでいかなければならないと思いました。