1万年堂出版が開催した
読者感想文コンクールの
入賞作品の一部をご紹介します。

金賞

なぜだか分からないけれど、ぽろぽろと涙が…

松田周子さん(15歳・兵庫県) 高校生の部

『なぜ生きる』を読んで

この本を読むまで、沢山の宿題や忙しい部活動をこなしていくだけの日々が淡々と過ぎていました。
今考えると、それなりに充実していたし、幸せな暮らしをしていたと思うのですが、その時の私は「生きることの幸せ」を感じる術を知らなかったように思います。

生きていることが当たり前すぎて、有り難いと感じることがありませんでした。

そんな時に、祖父が旅行先で脳内出血で倒れてしまいました。お見舞いに行っても、昔の記憶が断片的にしか無く、私の事はすっかり忘れてしまっているようでした。

祖父とは小さい頃は同居していたので、一緒に虫取りに行ったり旅行に行ったりと、いろいろな思い出があるはずなのに、私が誰かということすら分からない祖父に私は愕然としました。

「老い」という事がとても怖く感じられました。自分にもいつか「老い」が来ると思うと、生きている意味がわからなくなってしまい、素朴な疑問が浮かんできたのです。

「なんで私は生きているのだろう」

お見舞いの頻度も、週1回から月2回、月1回と徐々に減ってきた頃、祖母に1冊の本を手渡されました。

「いい本だから読んでみな」

私は本と言ったら流行作家の推理小説くらいしか読むことが無かったので、分厚さと文字の多さに一瞬戸惑いましたが、祖母のいつになく真剣な眼差しに負け、次のお見舞いの日までに読むと約束しました。

その日の夜、本を開いた私は、頁をめくる手が止まりませんでした。
全ての頁に、私が知りたかったこと、疑問に思っていたことの答えが載っているような気がしました。
もっと早くにこの本と出会えていたら、とさえ感じました。

周囲に自分のことを想ってくれる両親や友達がいることは、なんて幸せなのだろう。
部活動で先輩方が助言してくれる有り難さ、学校の先生が怒って下さる有り難さ……今までは全く気づかなかったけれど、様々な人々や物に支えられて生きているということを思い出すことが出来ました。

生きるということは素晴らしいことなのだと再認識しました。

約束の日は来週だったけれど、翌日、学校帰りに病院に寄ることにしました。
何も連絡せずに突然やってきた私に祖母は少し驚いた様子でしたが、鞄から本を出して見せると、私がなぜ来たのか分かったようでした。

その日は祖母が祖父との昔話を沢山話してくれて、私は何故だかよく分らないけれど、ぽろぽろと涙があふれてきました。
今思うと、祖母の大きな愛を感じたからかな、と思います。

現在、祖父は自宅介護になり、リハビリの成果で前に比べると動きも大分良くなり、よく喋るようになりました。
自宅での介護は大変なことも多いけれど、ケアマネージャーの方や、介護士さんに色々と助けてもらいながら生活しています。
沢山の人が祖父のために手を貸してくれることには感謝の気持ちでいっぱいです。

これからは、周囲の皆に対する感謝の気持ちと、生きることの喜びを忘れずに生活していくことが出来ると思います。
この本を教えてくれたおばあちゃん、ありがとう。一生モノの財産になりました。

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