1万年堂出版が開催した
読者感想文コンクールの
入賞作品の一部をご紹介します。

金賞

『光に向かって100の花束』を読んで

村田順子さん(40歳・埼玉県) 一般の部

主人に対して「外でばかり飲まずに家で飲んでよ」「子供みたいに甘えないで」と責める気持ちが出て、『光に向かって100の花束』のページをめくっていると同じような内容が書かれていて驚いた。48ある女の歯車に対し男の歯車は47だから、かみ合いが悪いと山がぶつかりお互い痛い思いをする。特に今日のような暑い日など、自分はこんなに大変なのに、なぜ分かってくれないの?等と責める気持ちで一杯だった。

しかし、先日、久しぶりに都心の方への満員電車に乗ったところ、主人のような営業職の男性、初老の男性、汗をふきながら、一生懸命踏んばって立っている。皆大変だなあ。家族のために一生懸命頑張って通勤している。主人も大変だろうなあと思い、立ち姿に目をやると気がついた。ズボンや背広にプレスがピシッとかかっている人、上から下までヨレヨレで靴まで薄汚れている人。

主人はどうだっただろう。その時ハッと思った。先日、黙って向こうの部屋でズボンプレッサー機にズボンをセットしていた主人の姿を見たような気がする。私はその時、リビングから主人にお金の愚痴を言っていたような気がする。

主人が帰宅してその姿を見ると、案の定、ズボンに二重の折り目。背広もシワが何本か入っていた。私は一体何をしていたのだろう。自分勝手なことばかり言って主人を責めて……。折り目正しくしないといけないのは私の方だったのに。
私の歯車を折って主人がお風呂から出た時、そのことを詫びた。すると主人は、怒ることもなく「プレッサーは難しいなあ」と笑顔で答えてくれた。私は心から本当に悪かったと思え、もっと主人を思いやっていこうと思った。

次の日の夜、主人がめずらしく缶ビールと、お酒の弱い私にアルコール度の低い飲み物を買ってきてくれた。そうして、2人で「乾杯!」と少し照れながら2個のグラスの水滴に見入った。子供達2人が実家に行っているので久しぶりに新婚さんの気分に戻り、幸せってこんなものかなあとしみじみとした気分になった。その日の主人は、よく笑いよくしゃべった。やはり夫婦はもともと他人同士だから、お互いに相手を思いやって折れていくとうまくいくことを実感した。それも歯車の山の1つ多い女の私の方から。あの本の通りだと思った。

次の日、出張に行く主人にそっと手紙を渡した。

「いつも私達家族のために暑い中、働いてくれてありがとうございます」

口で言うのは照れくさくても文章にしたら書けた。主人がこの手紙を、どんな顔で読んでいるかしら。暑い日なのに余計に体温が上昇したりするのでは。

明日の夜、主人と子供達が帰宅する。皆の元気な笑顔とお土産を楽しみにして、温かい気持ちでこの感想文が書けることに感謝の気持ちで一杯です。この本に出会えて、また大切なことを1つ思い出すことができて有難いことだと思った。