1万年堂出版が開催した
読者感想文コンクールの
入賞作品の一部をご紹介します。

金賞

『輝ける子』を読んで

柴田哲子さん(40歳) 一般の部

「100メートルを10秒で走れと言われてもさ……」この副題に私の目は吸い寄せられ、すぐに本を手に取った。
ぱらぱらとめくっただけで、心に染みわたってくる言葉がどんどん飛び込んできて、すぐに買い求め、一気に読んだ。
1ページごとに、はっとさせられる言葉の連続だった。

教員生活18年目。小学校、中学校、養護学校を経て、今小学校の特殊学級の担任をしている。
昨年、小5だった次女が不登校になった。1年4ヶ月経った今、ようやく少しずつ登校できるようになってきた。

養護学校で知的障害のある子どもたちとの生活を通じ、「本来、皆が同じことをして、同じレベルを達成することが求められる」一般の学校に対して疑問を持つようになった。
その矢先の次女の不登校。決して厳しいしつけをしたつもりではないのに、潔癖な次女は、親が何気なく求めていたことや、学校の規則などで、自分を必要以上に縛っていたようだ。
それが、ひとつのきっかけでがらがらと音を立てて崩れて、不登校になってしまった。

今思えば私は、親や教師に反抗するのがへたな「いい子」のまま教員になってしまった。
小・中学校に勤務していた頃、それなりに、子どもの気持ちを考えよう、理解しようとしていたつもりだったが、果たして本当に、ワクからはみ出た子や心の弱い子、ぐれてしまう子に対して思いやりの気持ちを持って接していたのか、自信がない。
私自身が優等生で、苦手なこともあったが、大きなつまずきもなくここまで生きてきてしまったから。

比較的落ち着いた中学校から荒れた中学校への転勤。成り立たない授業。教師としての喜びを感じられなかった日々。
そんな時、自分を変えた一瞬があった。
日暮れの早い秋の夕方、帰宅しようと外に出ると靴箱の上に寝転がる金髪の生徒。「家へ帰ってもつまらん」の一言に私は「そう……」としか言えなかった。
家にいるより、冷え込む夜に学校の靴箱に寝転がる方を選ぶ生徒。私は今までこの子たちの何を見てきたのか。

そして養護学校への転勤。
知的な障害を持って生まれてきた子供たち。字は読めない、書けない、うまくしゃべれない、数がわからない、行動は遅い。
だけどそんな子どもたちの個性を認め、子どもたちのペースに寄り添って楽しく明るく接している先輩の先生たち。
「この子はこの子なんだ」それまで精一杯の指導をして、子どもを「できる」ようにしよう、としゃかりきになっていた私にとって、人生観、人間観が変わる生活だった。

しかし、養護学校の子どもたちには、「あるがままでいいんだから」とのんびり接していた私も、いざ自分の子どもが不登校になり、「ウチの子は普通と違う」という現実を叩きつけられると、そのストレスは大変なものだった。
出勤途中、ランドセルを背負って元気に登校する子どもたちを見ては涙を流した。
「皆が登校してるのに、どうしてウチの子だけできないの?」
一日中テレビを見て、部屋を散らかして、昼夜逆転生活をしている次女が、とんでもなくわがままな人間に見えた。
それでも、少しずつ自己主張をし始めた次女の話を聞いてみると、今まで自分を押さえて、いい子でい続けようとしたことがわかった。

『輝ける子』に出会ったときは、次女の精神状態もかなり落ち着いてきた頃。
やれるだけのことをやって、たくさん失敗もして、「なるようになるさ」と開き直り、弱い子、ワクからはみ出た子に対して、以前とは違った見方ができてきた頃だった。
「わがままだったから、不登校になるのではない。マイペースにできず、ひたすら人に合わせようとして、無理を続けるからだ」次女が自分の力で前進し始めた今、やっとこの言葉の意味がわかった気がする。

極悪非道の犯罪としか思えなかったバスジャック事件。しかし加害者の少年の心を見つめた筆者の文には、感動した。
あんな事件を起こすことでしか自分をアピールできなかった少年が、かわいそうでならなかった。

「学校で、皆ができていることができないと、あたかも人間として失格であるようなメッセージが子どもに伝わっている場合がある」教員としての自分に厳しく訴えかける言葉だ。

『輝ける子』の一文一文に感動できるのは、金髪少年や知的障害の子や不登校の娘と出会うことができたからこそと思う。

今私は、「がんばれ」という言葉を使わないように気をつけている。
それでも言ってしまって、「しまった。」と思うことが多い。ということは、気をつけていなかった頃は、いったいどれだけこのお仕着せがましい言葉を連発していたことだろう。
みんながんばっているんだ。『輝ける子』を繰り返し読んで、転んでしまった子、ちょっと休憩している子を温かく見守れる、親であり教師でありたい。

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