おいしいものは食べたいけれど…(仮)

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子どものころ、ひそかに感じていた、素朴な疑問や不安。

学校の先生や家族に聞いてみても、「まぁそんなものだよ」と誤魔化されたり、
「そんなこと言っても、どうしようもないでしょ」と言われたりして、モヤモヤした経験は、誰にでもあると思います。

大人になるにつれて、素朴なギモンには蓋をして、考えないようにしている毎日ですが、
いざ、同じようなことを、身近な誰かから尋ねられたら……。

やっぱり、自分が分かっていないことは、大人になっても、自信を持って答えられないのではないでしょうか。

なかなか人には聞けない悩みについて、700年前の古典『歎異抄』を通じて、少し深めに掘り下げるマンガ連載、『子ども歎異抄(たんにしょう)』。

第一回目の今回は、誰もが一度は考えたことがある、動物と人間の命の関係について、触れてみたいと思います。

豚の一生(仮)

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おいしいものは食べたいけれど…(仮)の画像4

解説(仮)

子どものころ、好きな食べ物は? と聞かれたら、何と答えていたでしょうか。
ステーキ、ハンバーグにおすし……。
世の中には、とってもおいしい料理が溢れていますが、どれも、生き物の命と関係のないものは、ありません。

しかし、よく考えてみると、肉や魚を食べたいと思うことは、鶏や豚、牛といった動物の命を奪いたい、と思っているのと、同じことではないでしょうか。
授業やテレビで、養豚場のドキュメンタリーを見て、ショックを受けたことのある人、命の重さを実感した人も多いと思います。

しかしそれでも、半日も経てば、「ブタさんの命に感謝しよう」と思ったことも忘れて、お腹がグーッと鳴り、給食も夕飯もおいしく食べてしまう。

それは、私たちが、「食欲」という欲から、離れられない存在だからです。

最近は、鬼や巨人といった、人間よりも力の強い生き物が、人間を襲うマンガが大人気です。

一緒に過ごしている家族が、自分自身が、突然何者かにおそわれ、食べられてしまう……。
こんなことがもし、現実に起きたらこわいなぁと思いますが、
毎日、スーパーにお肉が並び、毎日私たちが食事をしているということは、それだけの命が、奪われているということです。

殺される動物の立場に立ってみると、実は、私たち人間こそ、鬼のような姿で映っているのかもしれません。

歎異抄の紹介(仮)

私たちは、何かを食べなければ、生きていくことができません。
野菜しか食べないぞ! と決意したとしても、実行できる人はほとんどいないのではないでしょうか。
もし仮に、出来たとしても、生き物を殺すことから、完全に離れられる人はいないはずです。

鎌倉時代に書かれた古典、『歎異抄(たんにしょう)』には、700年前も今も変わらない、欲から離れては生きていけない私たちの姿が描かれています。

 人間には、いろいろな欲があります。なかでも深くて強いのは、食欲・財欲・色欲・名誉欲・睡眠欲の「五欲」でしょう。

 食欲は、「食べるだけが楽しみ」と笑う人もあるように、好きなものを食べたい、飲みたいという煩悩です。

 一概に食欲と言っても、この食欲で私たちは、どんな言動をするか分かりません。
 あまりに凄惨な話で気が引けますが、大戦中、南方の戦線で飢餓に迫られた兵士たちが、戦友を殺して人肉を食らったと聞きます。
 同じような状況に追い込まれれば、食欲が私たちを鬼にする、他人ごととは思えぬ恐ろしい欲でもあります。
(『歎異抄ってなんだろう』より)

そして同時に、ただ、厳しい現実を突きつけるだけでなく、そんな私たちが幸せになるには、どうしたらいいのか、ヒントを教えてくれるのも、『歎異抄(たんにしょう』の魅力の一つです。

仕事に家事に子育てに……。
忙しい毎日、なかなか自分の心に目を向ける機会もなく、慌ただしく過ぎていってしまいます。
普段は蓋をして、見なかったことにしてしまうモヤモヤも、いざ、子どもに聞かれると、そういえばそうだなぁ、と思うこともあるのではないでしょうか。

大人になってもなかなか答えが分からない、多くのギモン。
自分なりに納得できる答えが出せないか、親子で考えてみるきっかけになれば幸いです。

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