フレイル・寝たきり予防に欠かせない食事バランスを紹介!高齢者の痩せすぎに注意
若いときは食欲が旺盛で、ついつい食べ過ぎてしまうことがよくあります。
そのため脂肪がつきやすく、瘦せるように指導されたことのある方もおられるかもしれません。
しかし、必ずしも痩せていることがよいとは限らないのです。
痩せることで、筋力の低下につながるからです。
高齢者はただでさえ加齢とともに筋肉が落ちますし、食べる量も減りますから、痩せにはよくよく注意する必要があります。
筋肉減少→活動量低下→食事量低下→低栄養→筋肉減少(振り出しに戻る)
高齢者はこのような悪循環を繰り返し、要介護、寝たきりへと進んでいきます。
心身が弱った状態をフレイルと呼ばれますが、フレイルについて詳しくはこちらをご覧ください。
痩せすぎは健康リスクにつながるので、しっかり栄養をとることが大切です。
では、どのような食事を心がけたらよいのでしょうか。
この記事では、寝たきり予防に重要な食事のバランスについて解説します。
食事のバランスとは何か?
栄養が大事、と聞いて気になるのは、「具体的にどのような食事をとったらいいのか」ということでしょう。
具体的な食品についてはこのあと書きたいと思いますが、まず前提として食事のバランスとは何かのお話をします。
バランスのよい食事を摂りましょう、と言われますね。
では、食事のバランスとは何のことでしょうか。
色とりどりの料理を並べた色合いのバランス?甘味と酸味のバランスが絶妙とか?
いえいえ、もちろん食事のバランスとは栄養のバランスのことです。
栄養にもいろいろあるので、具体的に紹介していきます。
食事のバランスに欠かせない「五大栄養素」
栄養のバランスをとるためには、五大栄養素について知っておくとよいと思います。
五大栄養素とは、糖質、脂質、たんぱく質、ビタミン、ミネラルの5つのことです。
中でも糖質、脂質、たんぱく質を「三大栄養素」といいます。
一つずつ簡単に解説します。
糖質
糖質と聞くと砂糖など甘いものだけを想像するかもしれませんが、甘くないご飯やパンも糖質を多く含んだ食品です。
別名、炭水化物とも言います。
生命維持のためのエネルギー源であり、車ならばガソリンにあたります。
糖質が不足すると体力が落ちたり、疲れやすくなるので、日常生活を送るうえで欠かせない栄養です。
ご飯、パン、麺類、イモ類、餅、砂糖などに多く含まれています。
脂質
脂質は他の栄養素と比べて1グラムあたりのカロリーが高いため、脂質からは最も多くエネルギーを得ることができます。
また、脂質は体をつくる成分でもあります。
脂質には必須脂肪酸というものがありますが、これは体内でつくることができず、食事からとらなければなりません。
あぶら抜きの食事を続けていると、お肌のトラブルや脱毛の原因となるのです。
脂質は植物油以外にも、肉、魚、乳製品などからとることができます。
たんぱく質
筋肉や臓器など体をつくる重要な栄養素であり、体内で働いているホルモンや酵素、ウイルスと戦ってくれる抗体もたんぱく質です。
全身をつくりあげているたんぱく質は、20種類のアミノ酸がたくさん組み合わさってできています。
そのうち、体の中で作り出せない9種類のアミノ酸を必須アミノ酸といい、必ず食事から取らなければなりません。
各アミノ酸のバランスが、体内でのたんぱく質合成に大切なのです。
動物性食品の方が、アミノ酸バランスは優れています。
肉、魚、卵、牛乳・乳製品には良質のたんぱく質が豊富です。
米にもたんぱく質は含まれますが、アミノ酸のバランスが悪いのです。
しかし米に大豆を組み合わせると、お互い補い合ってアミノ酸バランスがよくなります。
ご飯に納豆、味噌汁といった組み合わせの日本食は、昔の人の知恵なのです。
これらの三大栄養素に、微量でも体の調子を整えるために欠かせないビタミンとミネラルを加えて、五大栄養素と呼びます。
ビタミン
体の調子を整えて、三大栄養素が体内でスムーズに働けるように助けています。
ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKなどがあります。
ビタミンはそれぞれ働きが違い、他の栄養素やビタミンと合わせて機能しますから、偏食でビタミンが偏るとビタミン欠乏症を引き起こすのです。
野菜、果物に多く含まれます。
中でも筋肉を作るはたらきがあるのがビタミンⅮです。
年齢とともに筋肉量が減っていくことをサルコペニアと言いますが、ビタミンⅮはサルコペニアの対策に有効と言われます。
魚やきのこに豊富です。
ミネラル(無機質)
体のはたらきを助けたり、骨をつくる材料になります。
カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛などです。
小魚、海藻、レバー、緑黄色野菜、ナッツ類などに豊富に含まれます。
加齢によって吸収や消化の機能が衰えることなどから、高齢者は亜鉛欠乏になりやすく、味覚障害や食欲低下を引き起こすことが多いです。
床ずれ(褥瘡)ができた場合は、傷を治すために亜鉛が必要で、亜鉛が強化された栄養食品も勧められます。
とるように心がけたい食品の種類
バランスの良い食事とは、以下のように栄養素のバランスがいい食事のことです。
- 三大栄養素(糖質・脂質・たんぱく質)のバランス
- 脂肪酸のバランス
- たんぱく質のアミノ酸のバランス
- ビタミン、ミネラルが過不足ない
- 食物繊維が豊富
ところが、私たちが食事をするときに、どの栄養がどのくらい含まれているのか、目には見えません。見えるものは食品です。
そこでどの食品をどのくらい食べれば、栄養バランスがよくなるのかが問題になります。
まず、バランスよく食事をとるために参考になるのが、三色食品群の分類です。
小学校の給食のメニューも三色食品群に分類されています。
三色食品群とは、体内での働きや特徴によって、「赤」「黄」「緑」の3つの色に分類したものです。
黄:おもにエネルギーのもとになる ごはん、パン、いも、油、砂糖など
赤:おもに体をつくるもとになる 肉、魚、卵、乳製品、豆腐など
緑:おもに体の調子を整えるもとになる キャベツ、にんじん、りんごなど
三色バランスよく摂りましょう。食品の色ではありません。
豆腐は見た目は白くても、赤群の食品です。
バランスの取れた食事にするには?
三色食品群をもとに、食事1回につき三色それぞれの食品を万遍なく食べることで、栄養が偏らずバランスよく摂取することができます。
ただ、三色食品群といっても、どの食品が何色なのか分からない場合が多いでしょう。
誰でも栄養バランスがうまくとれるように、各団体で覚え方が示されているので、いくつかご紹介しましょう。
コマゴタチニオヤサシイワ(子孫たちにお優しいわ)
栄養改善普及会では、次のような覚え方が示されています。
コ(黄):米、小麦、穀類
マ(赤):まめ、大豆製品
ゴ(黄):ゴマ、種実類
タ(赤):卵類
チ(赤):チーズ、乳製品
ニ(赤):肉類
オ(黄):オイル、油脂類
ヤ(緑):野菜、果物
サ(赤):魚や貝類など
シ(緑):シイタケなどきのこ
イ(黄):いも類
ワ(緑):ワカメなど海藻類
※参考 栄養改善普及会 http://www.fukyukai.jp/eiyou.html
栄養士のように専門知識がなくてもわかるように考えられたものですから、毎日それぞれの品目から取るように心がければ、おのずと栄養バランスがよくなります。
さあにぎやか(に)いただく
「ロコモチャレンジ!推進協議会」が考案したものが、「さあにぎやか(に)いただく」の10の食品群です。
1群で1点、毎日7点以上が目標とされています。
さかな
あぶら
にく
ぎゅうにゅう
やさい
かいそう
いも
たまご
だいずせいひん
くだもの
※参考 ロコモONLINE https://locomo-joa.jp/check/food/
ロコモONLINEでは、1日にどのくらいの量をとったらよいかも詳しく紹介されていますので、参考にしてみてください。
どんなに健康によいと言われる食品でも、その食品一つだけでは栄養バランスが偏ってしまいます。
1日3食の食事の中でいろいろな食品を摂ることで平均化され、バランスがとれるのです。
毎日摂取している食品の数が多い人ほど、歩行速度が高いことが東京都健康長寿医療センターの研究でわかっています。
歩行速度が高いということは、それだけ足の筋力があるということですから、寝たきり予防につながるのです。
しかし、バランスのいい食事を毎日考えるのは難しいと思いますので、オススメの方法を紹介します。
簡単に栄養バランスのいい食事がとれる宅配弁当
これまでの話で、さまざまな食品を摂るのが大切ということをお伝えしました。
ただ、各家庭で実行するのはなかなか大変なことだと思います。
忙しくて、バランスの取れた食事を用意するのが難しいという方には、宅配弁当の利用をおすすめします。
地域にそういったお店がなければ、インターネットで冷凍弁当を購入することも可能です。
ご家族と離れて暮らしていても、インターネットで代わりに注文すれば届けてもらうことができます。
冷凍庫に入れておいて、レンジでチンするだけなので簡単です。
1日1食だけでもお弁当にすることで、栄養バランスの改善、介護の負担を減らすことにつながります。
たくさんの業者があり、メニュー、味、価格、利用しやすさなどさまざまですが、私がおすすめしているのは、安心、安全に配慮された「あんしん弁当」です。
https://a-bento.jp/category/1
栄養バランスが考えられた栄養食品が多く市販されていますので、それらを利用されてもよいと思います。
介護ハッピーメッセージ
身体を作るのが食事ですから、ぜひご家族で気を配ってみてください。
みんなで健康に長生きしましょう!