医師の勧める睡眠法 #3

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靴下は履いたほうがいい?ぐっすり眠りための「体温リズム調節」5つのポイント

5人に1人が悩んでいるいわれる睡眠。

睡眠不足は生活習慣病のリスクを高めるともいわれているため、健康維持には快適な睡眠が欠かせません。

快眠を妨げる原因の1つが、「深部体温リズムの乱れ」です。

今回は、「体温調節」という観点から快眠を得る5つのポイントを、精神科医の先生にご紹介いただきます。

「寝る子の手足は温かい」といわれます。

赤ちゃんは、グズグズ泣いていても、手足が温かくなっているとすぐに寝ます。
ふと居眠りをして起きたとき、体が熱く汗をびっしょりかいていた、という経験は誰しもあるのではないでしょうか。

反対に、冷え性で手足が冷たくて、寝つきが悪くて悩んでいる方も少なくないと思います。
あるいは更年期障害などで顔や体が火照って寝にくい、という話もよく聞きます。

このように手足の温度と睡眠には、深い関係があります

今回は、体温リズムと睡眠の関係についてご紹介いたします。
ポイントは、「入浴」と「靴下」を上手に活用することです。

快適な眠りのためにまず知っておきたい「深部体温」とは?

体温には大きく2つあります。
深部体温体内の温度)と表面体温皮膚の温度)です。

なかでも、深部体温のリズムは睡眠に大きな影響を与えるため、ぜひ上手に活用したいところです

私たちが眠るときには、深部体温が下がります。活動が低下すると体温が下がり、お休みモードに入るのです。
そのため、寝る際には深部体温を上手に下げ、体温が下がるタイミングで床に入ると寝つきがよくなります。

「体温が下がるタイミング」を上手に利用するためには、一旦体温を上げてから、下げることが大切です

キーワードは「熱放散」。
熱放散とは、皮膚表面から熱を外界に逃がし、深部体温を下げることです。

皮膚表面とは、特に手足の甲などです。手足の表面の血管が拡張し、熱を外に逃がすときに手足が温かくなります。
この熱放散により深部体温が下がり、脳の温度も少し下がることで眠くなります。

このように、深部体温が下がるときには、手足が温かくなりますので、手足が温かくなるタイミングを逃さずに布団に入るのが、寝つきをよくするポイントです

快適に眠るための、体温リズム調節の5つのポイント

ポイント① 夕方ごろの軽い運動

深部体温には、起床から11時間後に最も高くなり、22時間後に最も低くなるリズムがあります。
6時起床の場合は17時に深部体温が上がり、明け方4時頃に低くなります。

そのため、夕方17時頃に散歩などの軽い運動をして、少し体温をあげるのも夜の睡眠のためには有効です

ポイント② 就寝時間から入浴のタイミングを決める

熱放散のために最も効果的なのは、入浴です。

湯船につかると、体が芯から温まりますよね。
40℃のお湯に15分つかれば、風呂から上がって90分ほどで徐々に下がり、そのまま下がっていく。

一般的にはこの風呂からあがって90分後が寝つきやすいタイミングといわれます
(体の温まりやすさは、季節・室温や湯質、体格・体調などでも変わります。のぼせないよう、自分にとってちょうどよい入浴時間を探してみてください)

シャワーなら、首の後ろにある太い血管のあたりを温めるのも効果的です。

逆に、寝る直前に熱い風呂に入ると、体温が上がって寝つきにくくなります
風呂に入ってすぐに寝たいときは、ぬるめのお湯にするなど調整してみてください。

風呂に入らずに寝たいときは「●湯」を

シャワーで済ませたり、入浴と就寝のタイミングが合わないときは「足湯」も効果的です。
足の血行を良くして、熱放散を促しましょう。

冷え性の方には特におススメです。
冷え性は、手足の細い血管が人一倍細く、血流が少なくなるために冷えてしまった状態です。

ポイント③ 冷え性改善の足裏マッサージ

冷え性改善のためには、外から温めるよりも、血流を良くすることです
足裏マッサージや、簡単な運動(手足のグーパー運動、指や足裏のツボ押しなど)も効果的です。

【参考】不眠症患者も改善! 1日1分の足裏マッサージ法(日経ビジネスONLINE)

ポイント④靴下は“脱いで”寝る

冷え性の方は、靴下を履いたまま寝ることもあると思いますが、靴下は脱いで寝た方が寝やすくなります
靴下を履いたまま寝ると、熱がこもって放散できず、深部体温が下がりにくくなるからです

靴下は寝るまではいて足を温めて、寝るときは脱ぐようにしましょう。
どうしても足が冷たい場合は、足の裏を出して、足首だけ温められるように靴下を切って履いたり、レッグウォーマーなどを使ったりするのがよいと思います。

湯たんぽや電気毛布は、熱がこもって体温が下がらず、うつ熱になってしまいます
これらは布団を温めるために使い、寝るときは外すようにしましょう。

ポイント⑤室温の調節

室温や湿度の調節も大切です
暑すぎて汗をかいていても寝にくいですし、寒すぎても寝にくいです。

寝る前はエアコンで室温や湿度を調整しておくと寝やすいと思います。

そのまま一晩中エアコンをつけておくのもいいと思いますが、タイマーで入眠1時間後くらいに切れるようにしておくと、空気が乾きすぎたりして風邪をひきにくいでしょう

まとめ

動けば体温があがり、休むときは体温が下がる。
当たり前のようですが、快適な睡眠のためには体温調節が一つのカギとなります。

入浴や足湯、マッサージなどは、起床時間などが多少ずれてしまうときでも、寝る前に簡単にできる睡眠の工夫として、とても効果的です

身体を温めること、血流をよくすることは、疲れをとり、身体と気持ちをほぐす効果もあります。
好きな香りの入浴剤で入浴タイムを楽しむのもいいですね。

ぜひ、寝る前には自分へのご褒美として湯船でゆっくり温まるようにしてください。

 

参考文献:

・西野清治「スタンフォード式 最高の睡眠」、サンマーク出版、2017年
・松本俊彦ら監修「くすりにたいよらない精神医学[現場編]」、日本評論社、2017年
・内山真,降籏隆二「ヒトの体温調節と睡眠」,日温気物医誌第78巻1号、2014年
・櫻井武「睡眠の科学 なぜ眠るのか,なぜ目覚めるのか」、BLUE BACKS、2010年
睡眠と体温|体温と生活リズム|テルモ体温研究所

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