みなさんは、小学校時代と聞くと、何を思い浮かべるでしょうか。
「楽しい思い出」「友達」「給食」など、いろいろあると思います。
私にもそういう思い出はもちろんありますし、楽しかった記憶もあります。
しかし、HSPの私がHSCだったころ、学校はビクビクの連続で、「できれば行きたくないけれども、行かなければいけないところ」であり、まるで毎日が修行のようでした。
朝、目が覚めた瞬間から、「ああ、また行かなきゃいけないのか」と、毎朝思っていました。
では、どんなことがツラかったのか。
HSCだった人は大人になっても敏感さは変わらず、HSPになる人が多いと思いますが、大人になると、子どものころ辛かったことが、分かるようになります。
子どもの頃より冷静に自分を見つめなおすことができるからです。
あくまでも私の場合ですが、HSCの小学校時代を振り返ってみたいと思います。
HSCとは、どんな子ども?
まず、最初にHSCとはどんな子のことでしょうか。
明橋先生は、このようにいわれています。
子どもにもいろいろな性格があります。その中で、特に、さまざまなことに対して敏感な子どもがいます。
(中略)
HSCは、だいたい5人に1人くらいの頻度でいるといわれ、決して少なくありません。
HSCは、まず感覚的に敏感です。音に敏感なので、ちょっとした物音で目を覚ましたり、反応したりします。また、においや味にも敏感です。
あと肌触り。チクチクしたものが苦手で、服のタグなんか、全部切ってくれと言ったりします。そういう感覚的に敏感なところだけ見ると、発達障がいと誤解されることがあるのですが、発達障がいとHSCは違います。
発達障がいの子は、人の気持ちに関しては、なかなか酌み取りにくい、空気を読むのが苦手、ということがあるのですが、HSCの子は、逆に、人の気持ちがわかりすぎるくらいわかります。
親の気持ちもすぐ察知して、親が疲れて帰ってきても、ほかの子はおかまいなしに遊んでいるのですが、HSCの子は、すぐ親の様子に気づいて、「お母さん、大丈夫?疲れてない?」と声をかけてきたりします。
ただ、HSCは、病気でもなければ障がいでもありません。一つの特性、性格です。
ですから、いいところもたくさんあります。
人の気持ちに気づきますから、とても優しいところがあります。「〇〇ちゃん、大丈夫?」と声をかけてくれたりします。
また感覚的に鋭いので、危険予知に優れている。「変なにおいがする!火事じゃない?」と察知したりします。
しかしその一方で、人が気にならないところまで気になってしまう、キャッチしてしまうために、すぐに疲れてしまったりします。
(明橋大二著『0~3歳の これで安心 子育てハッピーアドバイス』より)
※詳しくは、新刊『HSCの子育てハッピーアドバイス』に、マンガで分かりやすく紹介されています。
学校の何が、どうしてつらかったのか
では、何がそんなにつらかったのか、思い出せる限り挙げてみたいと思います。
①先生の怒鳴り声や怒っている雰囲気が、恐かった
クラスメイトが先生に叱られているとき、自分が怒られているわけでもないのに、私に言われているように感じて、ものすごく恐怖を感じていました。
また規則を破ることにも、ひといちばい敏感でした。
「廊下は走らない」という校則はどこでもあり、廊下を走る子もどこにでもいると思います。
怒られると分かっているはずなのに走る友達がいるだけで、自分は悪くないのに心がソワソワして仕方ありませんでした。
ただ恐いという気持ちのほかに、みぞおちの辺りがそわそわして落ち着かず、授業に集中できないこともよくありました。
②友達の感情が入ってくる
怒っている人のそばにいると、イライラすることは誰にでもあると思います。
ですが、自分とは関係ない人たちが「いがみ合っている雰囲気」に気づきすぎて疲れてしまうことが、よくありました。
聞き耳を立ているわけではないのに、「あぁ、あの子たち何かあったんだな」と、ちょっとした表情や声の調子などの雰囲気で、状況が瞬時に理解できてしまうのです。そのため、知りたくない情報まで入ってきて、頭がパンクしてしまうのです。
それを気にせず流せればまだいいのですが、「どうしたんだろう、大丈夫かな?」と心配になり、多すぎる情報を処理できなくて、帰ってきてから、ぐったりしてしまうということがよくありました。
しかも、なんで自分がそんなに疲れているのか説明もできず、心配されたり怠けていると思われたりするのがつらかったです。
③失敗することがとにかく恐かった
周囲の空気や、人の感情に敏感なので、周りの人が自分をどう思っているのか、ひといちばい気になってしまうのも、HSCの特徴ではないかと思います。
そのため、授業で当てられて答えられなかったらどうしよう、どう思われるだろう、と怯えていました。
気にしすぎなのかもしれませんが、気にしてしまうため、疲れや不安が大きくなってしまうのだと思います。
④匂いが苦手
匂いに敏感で、学校独特の匂いや、友達の服の洗剤の匂いをひといちばいキツく感じるため、気分が悪くなることもよくありました。
また、好き嫌いは誰にでもあると思いますが、私はほぼ毎日出てくる牛乳の匂いが苦手で、匂いをかいだだけでも吐き気がすることもありました。
しかし給食を残すと先生に怒られるので残せない。給食の時間が憂鬱で仕方ありませんでした。
何よりも大切なのは「敏感だ」と気づいてあげること
こうして思い返してみると、「とにかくビクビクして」いました。
また実際に体調が悪くなることもありましたが、あまりに頻繁に調子を崩すので、「仮病と思われているんだろうな」とも感じていました。
担任や保健室の先生にも、このつらさを理解してもらえなかったため、自分が気にしすぎていたり、大げさだったり、私が間違っているのだと思っていました。
HSCの敏感さは人それぞれ異なるため、いろいろなことで困っている子どもがいると思いますが、「内心ビクビクしている」という点は共通していると思います。
また、ビクビクすると体に力が入ってしまいます。
一日中気を遣い、学校から帰ってくるとグッタリすることもよくあると思います。
スマホで例えるなら、最近起動が遅いなと思ったら、裏でアプリがとてもたくさん動いていて遅くなっている、というような感じでしょうか。
裏で動いているアプリのように、無意識のうちに、ものすごくたくさんの情報をキャッチして処理するため、頭がフル回転して、ひといちばい疲れてしまうのが、HSP・HSCの特徴だと思います。
HSCが少しでも力を抜いて生活するためには、敏感だということを親や先生が気づいてくれることが、何よりも大切だと思います。
「気のせい」「神経質」「弱い子だ」などと思われることが、何よりも怖かったからです。
感じていることは事実なので、せめて「そんなふうに感じていたらつらいよね」「よくがんばっているね」と認めてあげてほしいなと思います。
HSCの自己肯定感を育むのに大切な言葉
また、当時の私に伝えたい言葉があります。
小説『西の魔女が死んだ』で、不登校になった少女が、学校に行けない理由をおばあちゃんに話す場面での、おばあちゃんのセリフです。
自分が楽に生きられる場所を求めたからといって、後ろめたく思う必要はありませんよ。
サボテンは水の中に生える必要はないし、蓮の花は空中では咲かない。
シロクマがハワイより北極で生きるほうを選んだからといって、誰がシロクマを責めますか。
(梨木香歩著『西の魔女が死んだ』より)
周りの友達と同じようにできない自分は、弱いんだ、劣っているんだと責め続けていましたが、学校は私にとって、シロクマにとってのハワイのようなもので、「合わない場所」だったのだと思います。
今学校が恐くて、怯えている子どものそばにも、あのおばあちゃんのような言葉をかけてくれる人がいてほしい。
自分の小学校時代を振り返るたびに、そう思います。
学校は、いろいろな個性の子どもが集まり、集団で生活する場所です。HSCだけに合わせることは難しいとは思いますが、5人に1人といわれるHSCの敏感さは、もっと知ってほしいなと思います。
それは決して子どもを甘やかすことではなく、「大人は自分のツラさを分かってくれているんだ、大切にされているんだ」と子どもが感じられることで、自己肯定感が育まれ、HSCのよいところも伸ばせると思うからです。
HSCが過ごしやすい学校は、HSCではない子どもも過ごしやすい学校になると思います。一人でも多くの笑顔が学校にあふれることを願わずにおれません。
「学校に行きたくない」という子どもを抱えていましたら、下記が参考になりますのでご覧ください。