明日のことを考えて緊張したり、「今日のあのことは大丈夫だったかな」と心配になったり、頭の中でグルグル悩んで、布団の中に入ってもなかなか寝つけない、という方は少なくありません。
眠れない日が続くと、「また眠れないのではないか」と不安になり、寝よう寝ようと意気込むほどますます眠れない…、そんな悪循環にも陥りがちです。
そんな時におすすめのリラックス法を、精神科医の先生に教えていただきます。
眠る前のリラックス法を、大きく分けて4つ紹介します。
自分なりの方法を2つ3つ決めておくと、いざという時に、きっと役に立つでしょう。
就寝前のリラックス法① おすすめの飲み物・香り
ご存じの方も多いと思いますが、寝る前に控えたほうがいい飲み物を、まずは確認しておきましょう。
カフェインを含む飲み物は控える
- カフェイン(コーヒー、緑茶、紅茶、栄養ドリンク、コーラなど)
- アルコール
- タバコ
カフェインはコーヒー以外にも、意外と多くの嗜好品に含まれています。
カフェインの効果は4時間ほど続くといわれるため、睡眠で困っている方は、摂取するのは夕方までにしましょう。
どうしても夕食後のコーヒーを飲みたい時は、カフェインレスがいいですね。
寝酒も控えましょう。
リラックスして寝つきはよくなるかもしれませんが、睡眠は浅くなり、トイレが近くなるため夜中に目が覚めやすくなります。
睡眠前におすすめの飲み物
- 好きなハーブティー(カモミール、ラベンダーなど)
- 麦茶、こんぶ茶、杜仲茶
- 白湯
また、匂いに敏感な人には、アロマオイルをティッシュに垂らして置いておくのもおススメです。
好みはあると思いますが、ラベンダーやオレンジスイートなどが有名です。
就寝前のリラックス法② ルーチンを決める
リラックスしたり、安心したりするためには、何か単調なこと、いつもと同じことするのがコツです。逆に、新しいことや、いつもと違うことは、脳が刺激されて目が覚めやすくなります。
「ルーチン」とは、お決まりの手順のことで、ベッドタイムルーチン(入眠儀式)という言葉もあります。
寝る前にすることを決めておくことで、条件反射のように脳が「あ、これから寝るんだな」とお休みモードに入りやすくなります。
自分なりのルーチンを決めておくと、何をするか考えるエネルギーを使う必要もなくなります。
ポイントは、あまり複雑ではない、頭を使わないことを選ぶということです。
例えば
- 軽いストレッチ、マッサージをする(特に足の裏)
- 歌詞がわからない洋楽、歌詞のない音楽を聴く(波の音、クラシックなど ※言葉を追わずに済むため)
- 絵や写真が多く、字が少ない本を見る(絵本、風景や動物などの写真集、ファッション誌など)
などが適切でしょう。
就寝前のリラックス法③ 後頭部を冷やす
いろいろ考えてしまう時は、「頭を冷やす」のもいいでしょう。
落ち着くために、文字どおり、保冷剤をタオルで巻くなどして「頭を冷やす」のです。
脳がオーバーヒートしているのを冷やすイメージです。
この場合、耳よりも上の後頭部を冷やすのがよいとされ、それより下(首のあたり)を冷やさないように注意しましょう。
暑くて寝にくい夏の夜にもおすすめです。
就寝前のリラックス法④ マインドフルネスの実践
「寝よう、寝よう」として「何も考えない」ように意気込むほど、いろいろ頭に浮かんできてしまう。そんな経験はないでしょうか。
自分で自分の心をコントロールするのは、なかなか至難の業です。
そんな時は、「何も考えないようにする」よりも、反対に「何かに意識を向ける」ことで、いろいろ考えてしまうことを減らすことができます。
勝手に浮かんでくる考えのほとんどは「過去の後悔」か「将来への不安」といわれます。
最近話題の瞑想法「マインドフルネス」では、「今、ここに意識を向ける」ことで、気がつくと勝手気ままに頭に浮かぶことに煩わされなくなり、気持ちが落ち着くといわれます。手軽で効果的なリラックス法として世界中で注目されています。
では、「今、ここに意識を向ける」とは具体的にどういうことでしょうか。
寝ながらできる手軽な方法は、呼吸に意識を向けることです。
ゆっくり呼吸しながら、息を吸った時におなかが膨らむ動き、吐いた時におなかがへこむ感覚に意識を向け、「おなかが膨らんでいる、膨らんでいる……、凹んでいる、凹んでいる」と言葉にします。
呼吸の長さを数える方法もありますが、上記のように、ただ「ゆっくり」することだけ意識するのでも、じゅうぶんリラックスできると思います。
その時のおなかの動きの感覚を、そのまま感じてみましょう。
慣れてきたら、手や足の感覚に意識をもっていってみる、という方法もあります。
自分に合った方法を探してみてください。
おわりに
「リラックスする」というのは、意外と難しいものです。
「ゆっくり休んで、と言われても、どう休めばいいのか分からない」といわれる患者さんも少なくありません。
リラックスすることや休むということは、いまの時代では意識して練習し、身に着けるべき技術であるといえます。
そしてこれは、生きていくうえでもとても大切なことです。
リラックスするためには、まずは「自分は今リラックスする必要がある、自分は疲れている」ということに気づくことです。
「疲れて眠れない」時は、無理に寝ようとする前に、「疲れている」自分をいたわることから始めましょう。
睡眠を大切にするということは、自分を大切にするということです。
疲れているのは、それだけ頑張った証拠でもあります。
ぜひ、自分の心と体をいたわってください。
参考文献:
- 松本俊彦ら監修「くすりにたよらない精神医学[現場編]」、日本評論社、2017年
- 熊野宏昭「新世代の認知行動療法」日本評論社、2012年