東洋医学の専門医・清水和彦先生による「心と体の健康法」シリーズです。
悩みの解決や、目標達成に有効な心理療法として、今、NLPが注目を集めています。
今回は、NLP基礎講座の2回めをお届けします。
なかなか思うようにならないのが人の世です
人生は、難度海(なんどかい)といわれます。難度海とは、「苦しみの波の絶えない海」ということです。
比較的穏やかな日もありますが、激しい嵐の時もあります。その中、泳ぐことを強いられているのが、私たち人間です。
大震災や集中豪雨、大雪や酷暑、恐ろしい無差別殺人も珍しくありません。
いじめを苦に自殺する小学生。身寄りのない孤独なお年寄り…。
毎日の生活でも、寝たと思ったらすぐに朝が来て、眠たくても起きて仕事に行かなければなりません。
急いでいる時に限って信号が赤だったり、電車やバスに乗り遅れたり、傘のない時に雨に降られたりします。
気になる人には、すでに彼や彼女がいるし、関心のない人からは言い寄られる。
思うようにならないのが人の世です。
その中でも、特に思うようにならないと悩むのは、自分の心ではないでしょうか。
些細なことで、クヨクヨしたり、イライラしたり。ちょっとしたことで、自分でも驚くほど腹を立てたり。
肝心なところで緊張して言いたいことが言えず、自己嫌悪に陥る。そんな経験は誰しもあるでしょう。
私も高校生のころに、心を落ち着けたり、集中したりするにはどうしたらいいのか、どうすれば精神状態をコントロールできるかと悩みました。
脳波に関心を持ち、α波というリラックスした状態になるのに、呼吸法や、静かな音楽がよいとか、いろいろと試しました。
近くのレコード店に行って、脳波をα波にするためのレコードも探しました。
(店主からレクイエムがよいと言われ、薦められたレコードを買って帰ったものの、効果がないので返品しました。「返す」「いや返品はできない」と、口論になったのを覚えています)
脳波をコントロールできれば人生が変わる
そんな時、何かの受験雑誌に、脳波測定機の宣伝が載っていました。
脳波測定機とは、手のひらを乗せると赤か緑のランプが点灯し、赤なら興奮したβ波、緑ならα波の状態ということが分かる機械です。
その広告の横に、脳波のコントロール方法について書かれている記事があり、セルフコントロールとして紹介されていました。
どうすれば精神集中できるか、またリラックスできるか。
そういう思いから、私はこの方法をマスターしました。これは、その後の人生で、大いに役に立っています。
セルフコントロールは、興奮している時でも、緊張している時でも、悲しい時でも、瞬時に脳波をリラックスしたα波という状態に整える方法です。
自分で、脳波をコントロールし、平常心になれるので「セルフコントロール」というのだと書かれていました。
大変有用ですので、ぜひ試してください。いつでもどこでも、自分の持てる力を100%発揮できるように、この方法をマスターしていただきたいと思います。
さっそく訓練してみましょう
まず、好きなキーワード(「自然に」「気楽に」「大丈夫」「リラックス」など、何でも可)を決めてください。
心が落ち着くような、心地よい意味と響きを感じ、リラックスできるイメージの言葉がよいです。
一度決めたら、変更しないでください。
そして、次に紹介する訓練中は、常にこのキーワードを心の中で繰り返しとなえるのです。
セルフコントロールの訓練法
- 硬めの椅子に浅く腰をかけ、背筋を伸ばす
- 両膝の上に、軽く手のひらを載せ、無駄な力を抜く
- 目を閉じて、ゆっくり、深呼吸を繰り返す
- 手のひらの感覚に意識を集中し、どのくらいの温度かを感じる
- 手のひらの温度が認識できれば、温度の意識を手首まで広げる
- それを前腕全体、そして上肢、上半身と広げていく
- 今度は、足の裏の感覚に意識を集中し、どのくらいの温度かを感じる
- 足の裏の温度が認識できれば、温度の意識を足首まで広げる
- それを下腿全体、そして下肢、下半身と広げていく
- 最後に、全身で温度を感じる
全身で温度を感じることができたなら、これが雑念のない、リラックスした状態です。
脳波はα波になっているはずです。
空腹時や満腹時は避けて、ゆったりした衣服で、静かな時間帯に、訓練を行ってください。
就寝前の静かな時がよいでしょう。
しばらくは1日に1回は行ってください。
毎日30分程訓練すれば、早ければ1、2週間でマスターできます。
あなたのキーワードを決めるメリット
この訓練法は、「キーワード」と「リラックスした状態」を結び付けるアンカリング法です。
※アンカリングについては、前回の記事を参照してください。
アンカリングの刺激には、視覚、聴覚、体性感覚、言語情報などがありますが、最も効力の強いのは体性感覚です。
右手で左腕を掴む。腕を組む。ガッツポーズをするなどです。
ところが、そういう刺激は場にそぐわないことがあります。
しかし心の中で決まったキーワードをとなえるなら、誰にも分からないので、いつでもどこでも可能です。
条件反射の実験として、パブロフの犬が有名です。これもアンカリングの一つと考えられます。
(ロシアの医学者であるイワン・パブロフが、自分が実験室に入ると、犬がよだれを垂らすのを見て、1902年に、実験を開始しました。ベルを鳴らしてから犬にエサを与える。それを繰り返すことによって、ベルを鳴らすだけで、エサをもらえると思った犬がよだれを垂らす現象を見出し、ノーベル生理学・医学賞を受賞しました)
コツをつかめば瞬時にリラックスした状態に
このキーワードを利用したセルフトレーニングの訓練は、慣れるまでは20~30分かかるかもしれませんが、繰り返すことにより、コツがつかめて、短時間で可能になります。
そして最後には、いつでもキーワードをとなえると、瞬時に、リラックスした状態になれます。
さらに、視点を一点に定めて、意識を一つのことに向ければ、最高に集中した状態になれます。
大事な発表の時、頭が真っ白になってパニックになる、そんなことがなくなります。
机に向かっても気分が乗らない、作業がはかどらない。何もできないまま1時間が過ぎてしまった、ということはありませんか。
この方法をマスターすれば、すぐに集中して作業に入ることができます。
実力を発揮することができます。
ぜひお試しください。