心疾患、脳血管疾患は、長い入院を余儀なくされたり、後遺症が残ったりする病気です。また、これらの病気で身近な人を亡くされた方も、あるのではないでしょうか。
健康を失ってしまう原因はさまざまですが、心臓や脳の病気にならないように心掛けることは、とても大切です。
今回は、元気で長生きするために、知っておきたい血管のお話を、内科医のドクターにお聞きしました。
「死因」と「寝たきり」の原因から知る、対応すべき3つの病気
厚生労働省の統計によると、平成27年の日本人の死因は、以下のとおりです。
第1位:悪性新生物(いわゆるがん)
第2位:心疾患
第3位:肺炎
第4位:脳血管疾患
第5位:老衰
また、寝たきりになる原因のトップ5は、以下のとおりです。
第1位:脳血管疾患
第2位:認知症
第3位:高齢による衰弱
第4位:骨折・転倒
第5位:関節疾患
老衰への対応は難しいですが、この「死因」と「寝たきり」の原因への対応ができれば、健康で長生きできる可能性が、ぐっと高くなります。
老衰を除く、これら8つの病気は、大まかに、以下の3つの病気にまとめることができます。
- がん
- 血管の病気
- 運動器(骨・筋肉)の病気
心疾患、脳血管疾患、認知症は、血管の病気に分類されます。
心臓は血管に血液を送り出す臓器だからです。
認知症を血管の病気と分類する理由は、別稿、「認知症の予防」で詳細を記載しましたので、ご参照ください。
高齢による衰弱、骨折・転倒、関節疾患は、いずれも運動器の病気に分類されます。
肺炎は、がんでも、血管の病気でも、運動器の病気でも生じるため、特定の項には分類できませんが、これら3つの病気に対処できれば、肺炎にも対処できます。
以降、順次3つの病気について解説します。
まずは説明の都合上、2番めの血管の病気からお話しします。
心疾患、脳血管疾患などの血管の病気はどうして起こる?
人の臓器には血管が張り巡らされています。
血管には血液が絶えず流れており、臓器に酸素や栄養を与え、二酸化炭素や老廃物を回収しています。
どの臓器も血液の流れなしに生存することはできません。そのため、臓器に血液を運ぶ血管が詰まったり破れたりすると、その臓器は死を迎えます。
脳の血管が詰まると脳梗塞、脳の血管が破れると脳出血、心臓に栄養を与える血管が詰まると、心筋梗塞を起こします。
そうすると、脳や心臓に重大な障害を残し、死亡することもあります。
血管が衰えると、硬く・もろく・狭くなるため、詰まったり破れたりしやすくなります。
ですから、血管が衰えないように、血管を若々しく保つことが、健康長寿には大切なのです。
生活習慣病は、血管の衰えを促進する
では、血管の衰えを促進するものは何なのでしょうか。
実は、生活習慣病といわれる病気のほとんどは、血管を早く衰えさせる病気です。
それぞれの生活習慣病がなぜ、血管を悪くするのか、今回は簡単に説明をいたします。
①喫煙
たばこに含まれている有害物質は、血管に障害を与え、血管を早く衰えさせます。
たばこによる障害は非常に恐ろしく、約10年寿命を縮めるともいわれています。
②糖尿病
血管の中に糖があふれてしまう病気です。過剰な糖が血管に損傷を与えるといわれています。
糖尿病もたばこに匹敵し、約10年寿命を縮めるといわれています。
③高度肥満
体にたまった内臓脂肪から出る物質が、血管に損傷を与えるといわれています。
BMI[体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)]が35を超える病的肥満症は、約10年寿命を縮めるといわれる、非常に恐ろしい状態です。
④高血圧
血管に強い力が掛かり続けるため、血管の損傷が進みます。
高血圧症は、約3年寿命を縮めるといわれています。
⑤高コレステロール血症
血管の内側にコレステロールが沈着することで、内腔が狭くなり、血管が痛む病気です。
高コレステロール血症は、約1.5年寿命を縮めるといわれています。
⑥脂肪性肝炎・アルコール性肝炎
肝臓は、血液に含まれる毒物を分解する臓器です。肝炎があると、毒物がうまく体の外に出て行かずに、血管を傷める可能性があります。
また、炎症(破壊された内臓に細胞が集まり、修復されること)があると、傷ついた血管が回復せず、血管が痛む可能性があります。
⑦歯周病
口の中に細菌が多く住んでいると、それが炎症を引き起こします。
炎症が起こっている部位に、細胞が多く集まるため、他の部位での血管の修復が遅れ、血管がより衰えやすくなる可能性があります。
元気な血管を保つための心掛けとは
よって、血管を若く保ち血管の病気を防ぐ対策は、以下のようになります。
- 禁煙する
- 健診を受ける(糖尿病・高血圧症・高コレステロール血症が見つかったら治療する)
- 食事に気をつけ、適切な運動を行い、体重を適正に保ち、筋肉をつける
- 歯科を受診し、定期的に歯周病のチェックを受ける
※いずれの対策も、機会を改めて、詳しくご説明します。
多くの方が、自らの体を健康に保ち、人生を意義深いものにされるよう願ってやみません。
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