日本では、交通事故のうち、人身事故は年間約50万件も起きています。
ですから、事故の被害者になったり、加害者になったりすることは、決して珍しいことではありません。
実際に、ハンドルを握っている時に、「危なかった!」とヒヤリとした経験は、誰しもあると思います。
もし、交通事故を起こしてしまったら? 巻き込まれてしまったら?
交通事故の案件に詳しい弁護士に聞きました。
ほとんどの人にとって、交通事故は初めての大事件
日本では、人身事故だけでも、年間約50万件もの交通事故が起きています。
ということは、人身事故の加害者か被害者になる人が、1年間で、おおよそ100万人もいるということになります。
すると、単純計算では、10年間で約1000万人、50年間で約5000万人が人身事故の加害者か被害者になるという計算になります。
ですから、誰もが、交通事故に遭遇してしまう可能性があります。
とはいっても、一生涯で、何度も交通事故に遭う人は多くはありません。
ほとんどの人にとって、交通事故は初めての大事件ですから、交通事故に遭遇した場合、どのように行動したらいいか分からずに焦ってしまって、不適切な行動をとってしまうこともあります。
ここでは、交通事故に遭った時にすべきこと、やってはいけないことについて、ご説明します。
交通事故に遭った時にやるべき対応
交通事故が起きた直後は、気が動転しているとは思いますが、まずは、次の5つの対応をしましょう。そうすれば、後悔を最小限にすることができます。
もし、保険会社同士の話がまとまらないなど、困ったことが起きた場合、後遺障害が残ったなど、深刻な状況になった場合は、弁護士に相談しましょう(対応⑥に書きました)。
対応① 被害者の救護は絶対に最優先
もし、自動車で人をひいてしまったら、まず、絶対にやらなければならないのは、被害者の救護です。
道路を走行していたところ、突然、ものすごい大きな衝撃があった。
これは、おそらく、人をひいてしまったのではないか…。どうしよう、どうしよう…。
もし、大怪我をしていたらどうしよう、大変なことになってしまう…。
…。
どうも、目撃者もいないようだ。このまま逃げたら、分からないのではないか…。
そんな悪魔のささやきが聞こえてくるかもしれません。
しかし、絶対に悪魔のささやきに従ってはいけません。ひき逃げは、非常に重い犯罪です。
きちんと救助していれば厳罰に科せられることがないような事故でも、ひき逃げをすれば、逮捕され、刑務所に行かねばならなくなる可能性も高くなります。
もし、すぐに救助していれば被害者は助かっていたのに…ということになれば、どんなに後悔しても済みません。
すぐに、救助をして、救急車と警察に連絡をしましょう。
これをしないと、一生涯、後悔することになります。
対応② 例え軽い事故でも必ず警察に連絡を
どんな交通事故でも、必ず、警察に連絡をしましょう。
怪我をしていない事故でも同じです。どんなに軽い事故でも警察に連絡しましょう。
皆さんは交通事故の保険に入っていると思いますが、保険の手続きを進めて行くうえで、最低限、必要となる書類に「交通事故証明書」というものがあります。
これは、警察官が交通事故があったことを確認して作成してくれるものです。
交通事故の症状や痛みは、その時はなくても、後で出てくることもあります。
事故直後はたいしたことがなかったから「面倒だから、もういいや」ということで警察に連絡をしなかったとすると、後で症状が出てきたような場合に、交通事故証明書を発行してもらえなくて、交通事故の賠償をきちんと受けられなくなる可能性もあります。
加害者になってしまった場合でも、交通事故証明書がなければ、被害者に対する賠償金が支払われないという事態が発生してしまうかもしれません。
交通事故に遭ったら、必ず、警察に連絡しましょう。
対応③ 交通事故のプロ、保険会社に連絡する
警察に連絡したら、自分が加入している保険会社や代理店にも早めに連絡しましょう。
警察が来るまでにも、少しは時間がありますから、その間に連絡をしてもいいでしょう。
保険会社は交通事故のプロですから、落ち着いて対応してくれますし、どのようにすればいいか、アドバイスをしてくれることもあると思います。
突然の事故で焦ってしまい、どうしたらいいか混乱してしまっている時、冷静になるためにも、保険会社に連絡をするのがよいでしょう。
もっとも、突然の出来事で頭が真っ白になり、どこに連絡したらいいか分からない、ということにもなりかねないので、保険会社の連絡先は、携帯電話に登録をしておくか、メモした紙を自動車のダッシュボードなどに入れておくのがよいと思います。
対応④ 当事者同士で情報交換を
交通事故の当事者同士、お互いの連絡先や保険会社を教え合いましょう。
そして、その後は、基本的には保険会社に任せるのがよいと思います。
もっとも、自分の方が悪いと思った時には誠実に謝るのがよいと思います。
特に、怪我をさせてしまった場合には、誠実に謝罪しましょう。
弁護士の立場では、「謝罪がない」ということから感情的になって揉めたり、裁判になったりすることが多いという印象を持っています。
金銭的な賠償は保険会社がしてくれますが、謝罪は加害者本人にしかできません。
とはいえ、被害者が、例えば土下座を求めてきたり、執拗に連絡をしてきたり、保険会社が支払うといっている金額に上乗せをするよう要求してきたりするようなこともあります。
そのような場合には、保険会社に任せるか、場合によっては、弁護士に依頼することも考える必要があると思います。
対応⑤ 怪我をしたら、病院へ
交通事故の被害者となって怪我をしてしまったら、きちんと病院に行きましょう。
我慢をしたり、無理をしたり、遠慮をしたりするのは禁物です。
例えば、「痛いけど、我慢しよう」「仕事が忙しいから、もっとひどくなったら病院に行こう」ということで、すぐに病院に行かず、事故から1カ月以上が経過してから病院に行っても、「事故によるものかどうか不明」ということで、治療費が支払われないということがあります。
交通事故で怪我をしたら、遠慮せず、しっかりと治療のために病院に行くようにしましょう。
対応⑥ こんな時は弁護士に相談しましょう
事故直後にやるべきことは、上記のとおりですが、少し落ち着いたら、弁護士に相談に行くのがよいでしょう。
最近は、弁護士特約が付いている保険が非常に多く、弁護士特約があれば、弁護士費用を負担することなく、弁護士に依頼、相談することができます。
また、弁護士特約がなくても、交通事故については、弁護士に対する無料相談の制度も多くあります。
弁護士に相談にしたほうがいいのは、以下のような場合です。
怪我をして治療が終了し、相手保険会社から示談提示があった時
ほぼ90%以上の確率で,慰謝料を増額させることができます。
過失割合に争いがあって、保険会社同士では話がまとまらない時
弁護士から通知をしたり、裁判を起こしたりするしかありません。
後遺障害があるのに、認定されなかった時
異議申立をしていく必要があります。
重症や後遺障害が残った時
弁護士に依頼することで、賠償金が数百万円以上の単位で増額になる可能性があります。
正しい知識を身につけて、交通事故の問題を適切に解決しましょう。