「あなたって、何をやってもダメね」
こんな言葉を浴びせられたら、誰でも深く傷つきますね。
「この部分がダメ」と言われたのなら、そこを直せばいいと、かえってモチベーションが上がることもありますが、「全てがダメ」と否定されると、立ち直るのはなかなか大変です。
傷つく言葉を、子どもであれば、親や先生に言われる可能性がありますし、社会人になれば、同僚や上司から言われる場合もあるかもしれません。
そんな時、どのような心の持ち方をすればいいのか。
傷ついた言葉を忘れる方法はあるのでしょうか。NLP(神経言語プログラミング)という手法から学んでいきましょう。
教えてくれるのは、内科医で、東洋医学の専門医でもある清水和彦氏です。
「脳の取り扱い説明書」ともいわれるNLPは、さまざまな手法を駆使して、能力アップや人間関係の改善を図るように進化してきています。
ここでは、比較的分かりやすい、簡単な脳内プログラムの修正方法を紹介します。
医療研修TNサクセスコーチング代表で、サンタフェNLPマスターでもある看護師の奥山美奈さんが、『ナビトレ ナース必修対人力を磨く22の方法』という本に、おもしろいイメージトレーニング法を紹介されています。
看護師を例に挙げていますが、他の職種にも、日常生活にも、広く応用できます。
- パフォーマンスを低下させるものとして、深く傷ついて一生忘れられないような言葉はないか。それを解決するにはどうすればいいいか
- パフォーマンスをアップさせる、なりたい自分になるにはどうするか
- あの人は苦手、あまり近づきたくないという人と、上手にコミュニケーションするにはどうするか
この3点について、興味深いトレーニング方法を教えておられますので、NLP理論に基いて解説していきたいと思います。
言われた言葉は変更できなくても、受け止め方は変えられる
「あなたって、何をやってもダメね」
「あなた看護師、向いてないね」
「君はどうしようもないな」
など、親や上司に言われ、いつまでも忘れられない、過去に深く傷ついた一言はないでしょうか。
現在の仕事を続けていけるかどうかさえも考えてしまう、全人格にかかわるような言葉。思い出すたびに、ブルーになってしまう・・・。
そんなモチベーションを下げる言葉、自分にプラスにならない言葉は、さっさと退治しましょう。
過去の事実は変更することはできませんが、印象や解釈は変えられます。
言われた言葉についても、その解釈や印象をどうするかは自分の問題であり、まったくの自由なのです。
ではどのように解釈して、頭の地図を作成すればいいのでしょうか。
事実を事実として受け止めて、今後どうしていくか、自分にとってプラスになるように作成するのが基本です。
感情がマイナスになるような地図(プログラム)は、修正すればいいのです。
深く傷ついた言葉を修正する6つのステップ
ある看護師が、先輩から心ない一言を言われて、深く傷ついたという想定で、奥山さんが解決法を教えています。
イヤ~な言葉の「3分間消去法」
- 「あなたって看護師じゃない方がよかったのかもね」主任に言われたひと言を思い出します。このときいやな気分も一緒に再現しましょう。
- ちょっと気分転換をします(メールチェックや、窓の外を眺めるなどほんの数秒)。
- 今度は、反対に人から言われて嬉しかったひと言を思い出しましょう。例えば、
「あなたが受け持ちで本当によかった、ありがとう」
などの患者さんから頂いたひと言や、後輩から
「〇〇先輩(あなたの名前)がいてくれると安心します」
と言われたひと言。または、
「〇〇(あなたの名前)と友達になれてホントに感謝してるよ!」
なんて友達からもらったひと言などです。または、
「看護師ってやっぱ私の天職なんじゃないかなぁ」
とか
「私は精いっぱい頑張ってる、たいしたもんだ」
などの自分が自分をほめるときにかけている言葉でもOKです(これらは内的な会話といいます)。ちなみに私は「先生と出会えて本当によかった。一生、忘れません!」という教え子からもらったひと言が言われて嬉しかった言葉です。こんなふうに、思いだすと一気にモチベーションが上がるようなひと言が最適です。- 再度、気分転換をします(メールチェックや、窓の外を眺めるなどほんの数秒)。
- 今度は目を閉じて目の前に大きなスピーカーをイメージします。そこからは
「あなたって看護師じゃない方がよかったのかもね」
と、主任に言われた言葉が何度もくり返し流れてきます。でも、その言葉が流れてきたらあなたはブチッと電源を切ることができます。電源の切り方は電源のボタンを押すでもいいし、プラグを差し込み口からブチッと引き抜くのでもOKです。電源を切ると、
「あなたって看護師じゃない方がよかったのかもね」
という言葉がスピーカーに吸い込まれてヒューッと消えて行きます。言葉が消えていくのと同時に、3の言われてとっても嬉しかった言葉があなたの耳元で反響しながら聞こえてきます(そういうふうにイメージします)。
*以下を3回ほどくり返します。
①嫌な言葉「あなたって看護師じゃない方がよかったのかもね」を思い出す②電源を切る→言葉がスピーカーの中にヒューッと消える③嬉しかった言葉(例)「あなたが受け持ちで本当によかった、ありがとう」が反響しながら聞こえてくる- テスト。嫌な言葉「あなたって看護師じゃない方がよかったのかもね」を思い出しても「嫌な気分にならなくなった」または「嫌な言葉を思い出しても、同時に嬉しかった言葉も思い出すようになった」、こんなふうに変化があったら大成功です。
(『ナビトレ ナース必修対人力を磨く22の方法』より)
なぜ傷つくことを言われたのか、確認することも大切です
「看護師のトラブル」と聞くと、思い出すドラマがあります。40年以上前の「冬の貝殻」という番組です。
山本陽子さん演じる美人で有能な先輩看護師と、松坂慶子さんは、その妹で新人看護師でした。
お姉さんに憧れ、どこかコンプレックスを抱いて看護師となった妹が、お姉さんと同じ病院に勤務することになりました。
冬の寒い夜、2人で深夜勤務をしていて、ストーブを囲んで深刻な話をしている場面。
妹が医療ミスを起こして、一人の患者が亡くなったらしいのです。
夜中に、ストーブの前でコーヒーを飲みながら、うとうと居眠りをして、大事な処置をし忘れてしまいました。
このことは、2人しか知りません。
妹の罪をかぶって、姉は病院を辞職することにしました。
その後、妹は、努力して、一人前の看護師に成長していきます。そんな筋書きであったと記憶しています。
当時の美人女優の代表が共演したこともあり、中学生の頃、熱中して見ていました。看護師の仕事の苛酷さに衝撃を覚え、学校の友達に話したのを覚えています。
わずかな気の緩みが、命に直結する医療の現場では、厳しい叱責が飛び交います。交代勤務で、当直があり、生活のリズムも乱れやすい状況です。
看護師は、肉体的にも精神的にも、つらい職種の代表でしょう。
一人の患者が亡くなってしまったという結果は重大ですが、その背景には少なからず問題がありそうです。
今日でも、看護の現場で、まったくミスを犯さない看護師はいないでしょう。
「To err is human」
ミスをするのが人間だという有名な言葉があります。
だから、ミスがあっても、何かトラブルがあっても、大きな事故につながらないようなシステムが必要なのです。
電車でも、ブレーキが故障すれば、ブレーキが効かなくなるのでなく、電車が停まるように設計されています。
「あなた看護師、向いてないね」と言われた時、頭の中に、どのような地図が作成されてしまったのでしょうか。
どんな歪曲、省略、一般化がなされたのでしょう。
自問して、確認したほうがいいのです。
超過勤務が続いて疲労がたまっていなかったか、緊急入院が重なって非常に忙しかった、急な欠勤者がいて、その看護師の分まで負担していた、など。
また、サポート体制はどうであったか、業務内容を確認するシステムに問題はなかったか。
ミスをするのが人間なら、ある意味、すべての人は看護師に向いていないかもしれないです。
「あなた看護師、向いてないね」と言った先輩に確認すれば、「私も切羽詰まっていて、つい感情的になって言い過ぎたね」と言われるかもしれません。
「えっ、そんなこと言った、覚えてないな」と言うかもしれません。
悪いイメージを壊して、プラスに修正しましょう
一つの事実を、どう解釈し、どのような印象を持つか。
強い感情をともなうようなこと、衝撃的な出来事は、いつまでも、記憶に残ります。なかなか忘れられません。
ぜひとも、よい面に目を向けて、プラスの地図を作成したほうがいいのです。
また、知らず知らず、マイナスの地図になってしまったなら、修正すればいいだけです。
深く傷ついて忘れられないこと、そのことを思い出すと、落ち込んでしまうのは、マイナスのアンカリングがなされてしまったのです。
それを修正することを、コラプシングアンカーといいます(上記の、悪いイメージとよいイメージを同時に再現し、悪いイメージをなくす方法)。
さまざまな言葉や物事に対する印象を修正し、意味づけをし直すことをリフレーミングといいます。
「消極的」は慎重な性格、「鈍感」は精神的にタフなど、プラスの意味づけをすればよいです。
コンピューターのプログラム修正と同じです。
何気なく言われた、心ない一言で、いつまでもクヨクヨしているのはつまらないことです。
言った本人も忘れているかもしれません。
その言葉を、どのように印象づけて解釈するかは、あなたの自由です。
まずは、悪いイメージをぶち壊して、足を引っ張られないようにしましょう。
※コラプシングアンカー、リフレーミングについては、こちらをごらんください。
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