小学校入学とともに始まった登校しぶり
保育園で、集団行動に少しずつ慣れてきた息子は、休まず登園するようになっていました。
しかし、小学校入学と同時に妹が生まれ、環境が大きく変わりました。
順調に思えた学校生活でしたが、だんだんと学校に行くことをしぶるようになりました。
その頃、赤ちゃん返りも始まりました。
近くの公園に、娘をベビーカーに乗せて遊びに行くと、わざと転んで、私の気を引こうとします。1人でできていたことが次第にできなくなり、食事、歯みがき、着替えも手伝わないとできなくなりました。
些細なことがきっかけで、思い悩んだり、落ち込んだりすることもありました。
「〇〇くんは90点だったのに、僕は80点だった。みんな、もっとできたのに、僕はできなかった。どうせ僕はダメなんだ」
と落ち込み、それが気になって、夜寝つけないこともありました。
赤ちゃん返りに寄り添う日々
幸い、私が育児休業中で、娘もあまり手がかからない子どもだったため、赤ちゃん返りをする息子に合わせることができました。
「きっと今まで私が仕事に忙しくしてきたから、我慢してきたんだな。じゅうぶんに甘えることができなくて、赤ちゃん返りしているんだな」
と思い、息子との時間を大切にするように心がけました。
朝から元気になるように息子の好きな朝食を作り、学校から帰ってくる息子のために手作りのおやつを準備し、学校での出来事を親身に聞くようにしました。
ところが、私なりに甘えをじゅうぶんに受け止めているつもりでしたが、どれだけやっても、息子の登校しぶりは変わりませんでした。
スクールカウンセラーに相談するも…
「きっと、新しい環境の変化に対応しきれないのだろう。でも何とか元気に学校に行かせてやりたい」と思い、生まれたばかりの娘を連れて、 学校のスクールカウンセラーと週に1度面談し、相談しながら息子の登校しぶりに対処することにしたのです。
スクールカウンセラーからは「6歳なら、改善するのに6カ月かかります。ともにがんばりましょう」と励まされ、半年頑張れば、登校しぶりが解決できる!と、以下のことを必死に頑張りました。
- 私が不安定だとその思いが息子に伝わり影響を受けると言われたので、私自身が、睡眠時間をしっかりととり、安定した生活を心がける
- そして、たまには息子と2人で出かけて楽しい時間を共有する
- 規則正しい生活をさせるように努力する
息子のために、私ができることは何でもしました。
しかし、一時的には休まずに登校するようになりますが、しばらくするとまた元どおりになり、登校しぶりは改善しませんでした。
そのたびに一喜一憂し、だんだんと私自身が追い込まれていきました。
「明日は学校頑張って行くって言ったでしょ!」
翌朝のことが心配で、夜になっても宿題ができない息子に合わせて、
「宿題はできなくても大丈夫だよ。先生にも伝えておくからね。宿題はしなくてもいい、明日は少し遅れてもいい、お母さんが車で送るから、頑張って行ってみようね」
と、何とか息子に登校を約束を取りつけようと必死でした。
しかし、翌朝になるとなかなか起きてきません。叱りつければ逆効果なので、優しく起こします。
皆が登校する時間にやっと起きてきた息子に、朝食を何とか食べさせ、着替えをさせ、直前まで学校のことには触れずに、登校するように誘導します。
そこまで頑張っても、息子は動こうとしません。
私も仕事をしていたので、時間切れになると、
「昨日、明日は学校頑張って行くって言ったでしょ」
とつい息子を問い詰めてしまい、息子は無言で抵抗する毎日でした。
私は私を責め、息子も自分を責めた
毎朝が、息子を学校に登校させるための親子バトルでした。
そんな私に、スクールカウンセラーも学校の先生も決まって口にするのは、
「お母さん、頑張りましょう。あきらめないで。お母さんがあきらめたらダメですよ。学校へ来させてください」
という言葉でした。
その言葉が、私たち親子をますます追い込んでいきました。
「こんなに一生懸命頑張っているのに、なぜ息子は学校に行かないのか」
と息子を責め、
「こんな弱い子に育てたのは私のせいだ」
「私が弱いから、息子もそうなったのだ」
と自分を責め、心身ともに、ボロボロになっていきました。
そして息子も
「学校に行こうとしても行けない自分はダメなんだ」
と自分を責めるようになりました。
HSC(ひといちばい敏感な子)にとって、学校は過酷な環境
ある朝、いつものバトルをしていると、息子が泣きながら、ベランダからランドセルや文具、教科書などを捨ててしまったのです。
そしてついには「死にたい」と毎晩泣くようになり、うなされ、頭痛と腹痛で苦しみ、家からも出られなくなってしまったのです。
そんなときに、スクールカウンセラーをされていた心療内科医の明橋大二先生に出会うことができたのです。
そして初めて「HSC(ひといちばい敏感な子)」という言葉を知りました。
もっと早く知っていれば、息子も私もこんなに苦しまなくてもよかったのに、と思いました。
登校しぶりをした原因が、「ひといちばい敏感な特性」であったことを知らず、間違った対処をしたために、親子ともに苦しむことになってしまったのです。
他の子には何でもない学校が、HSCの息子にはとても過酷な環境だったのだと思います。
そんな息子の気持ちやペースに合わせず、学校に馴染めない息子を否定して、何とか学校に合わせようとしていたのだと分かりました。
ありのままの子どもを受け入れよう
子どもを育てていると、周囲の人からさまざまなアドバイスを受けます。「もっとこうしたらいいんじゃない?」「あなたがこうだから、子どもはこうなるのよ」などです。
しかし特に、HSCを育てるときには、そういうアドバイスは、たいてい的外れで、役に立ちません。5人に1人の子を育てるときに、5人に4人の子育てのアドバイスは、合わないことが多いのです。
しかし、何度も何度も言われると、「やっぱり自分が間違っているんじゃないか」「やっぱりこの子がおかしいんじゃないか」と思えてきます。
そうすると、子どもを無理やり、5人に4人のタイプに押し込めようとしてしまいます。そうすると、子どもも親も苦しくなります。
帽子が頭のサイズに合わないために、頭を削って帽子に合わせようとすることになってしまうからです。
帽子が合わないときは、帽子を頭のサイズに合わせればいいのです。どんな人も、自分の生きやすい生き方を選ぶ権利があるのです。
「この子はこの子でいいんだ、私は私でいいんだ」と、親も子も思っていいのです。(『HSCの子育てハッピーアドバイス』より)
学校に息子を合わせるのではなくて、
息子のありのままの姿を受け止めて、息子に合わせた子育てをしたらいいのだ
子どもが元気に明るくいられるのは、学校ではなかったのかもしれない
息子が笑顔で輝ける環境をつくろう
と心に決めました。
ここからが息子と私の再出発でした。
ボロボロになった親子が、笑顔を取り戻すことができたのは、親子ともにHSC、HSPということを認め、そんな特性に誇りを持てるようになったからだと思います。
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