「コストを抑える」イコール「突貫工事」か?
一軒家は大きな買い物ですから、少しでも価格を抑えたいものです。
しかし、「ローコスト」と聞くと、コストを切り詰めるために、突貫工事になるのでは?と心配される方があるようですので、まずそのことにお答えしたいと思います。
建設コストは、大まかに次のように分類されます。
①材料費
②人工費(職人さんの手間賃)
③現場管理費(現場監督費用など)
材料費と人工費で、一般的に建設コストの9割ほどを占めます。
突貫工事をすれば、工期が短い分、現場管理費は若干減りますが、人工費が大幅に上がります。
したがって常識的な業者であれば、コストを抑える手段として、突貫工事を選択することはありません。
突貫工事をすれば、手抜き・粗悪工事が発生するリスクも格段に高まり、業者側にもメリットはないからです。
突貫工事が起こるパターンはこんな時!
突貫工事が発生するのは、主に以下のパターンです。
- 業者が悪質で、意図的に突貫工事を行う。
- 業者に力量がなく、段取不足で工事が遅れ、帳尻合わせをするため、結果的に突貫工事になってしまう。
- 業者(経営者)が現場管理費を抑えたために、現場の段取不足で工事が遅れ、帳尻合わせをするため結果的に突貫工事になってしまう。
(施主が強制的にコストを下げさせたため、業者が現場管理費を抑えざるを得ないケースも含みます) - 施主が業者に短工期を押し付ける。
したがって、突貫工事を防ぐのに大事なことは以下のとおりです。
- 業者をよく調べる(過去の施工例や住人の評判など)
- 無理な工期を設定しない
- 業者との価格交渉は必要ですが、過度のコストダウン要求は控える
ローコスト住宅はなぜ安い?
では、ローコストの要因が突貫工事でないとすると、安さの要因はどこにあるのでしょうか。
「ローコスト住宅」にはさまざまなタイプがあります。
例えば…
◎材料費を抑えるために大量購買(数件分まとめて購入)したり、仕様を低くしたりする
◎人工費や現場管理費を抑えるために、プレハブ化して現場での作業を少なくする
◎建具やサッシ、設備機器などを規格化して種類を絞り、材料費から現場管理費までトータル的にコストダウンを図る(ただし設計の自由度は限定されます)
などです。
「坪30万」という売り文句にひかれて頼んだものの、いざ家が完成してみると、カーテンレールがない、タオル掛けもない、照明もない…!のないないづくし。
仕上がりも安っぽいため、「あれを付けて」「これを変えて」とやっているうちに追加変更分も含めると「坪50万」になった…という笑うに笑えない話もあります。
なぜローコーストなのか、その理由を業者によくヒアリングして、ご希望にマッチしたものかを見極めるといいでしょう。
顧客の対応は大手のほうがいいのか
では、実際に家を建てる業者はどこにしようかと、決めるのに迷う方もあるでしょう。
大手ハウスメーカーは安心かもしれないけれど、顧客の対応があまりよくないのではないか、という声も聞きます。
これは会社の大小問題と言うよりも、営業担当者の資質によるところが最も大きいと思います。
また、会社の営業力(営業マンの数、営業研修にかける時間や費用など)も大きな影響を及ぼします。
大手だと専門の営業マンを置いている所がほとんどですが、地元工務店では少ない、ということはいえると思います。
しかし必ずしも「営業マンがいる」イコール「顧客対応がよい」とも言いきれません。
ただし、営業力を強化する経費は、皆さんが支払う建設費に、結果的に上乗せされることは頭の片隅に置いておく必要があります。
地元工務店も当たってみては
大手ハウスメーカーと契約したとしても、実際に仕事をするのは地元工務店というケースが大半です。
大手ハウスメーカー系の工務店は、ハウスメーカー側からそれなりのチェックが入るので、“はずれ”になる可能性は低いのですが、必ずしも“当たり”を保証するものでもありません。
当然のことながら、優良な地元工務店と直接契約を結ぶほうが、ハウスメーカーを介して地元工務店に仕事をしてもらうよりも安くなります。
建売と自分で建てるのと、どっちがいい?
一軒家を一から建てるのは大変なことです。
建てるか、購入するか、それぞれメリット・デメリットがあります。
一軒家を購入する場合、実際に家屋を見ることができるのがメリットの一つでしょう。
建てる場合は、期待と実際が一致せず、「こんなはずでは…」と落胆することもあります。
しかし、購入した場合、基礎・土台や壁の中・天井裏の状況(断熱材や構造材の状態)を見ることが困難です。
建てるのであれば、施主が現場に通う、もしくは設計事務所に頼んでチェックしてもらうことによって確認することが可能です。
また、コストだけを考えると建売住宅のほうが安く済みます。
業者側の都合だけで建てられるため、前述したローコスト手法(大量購買、プレハブ化、建材規格化など)を活用できるからです。
しかし周辺環境や外観・内装・間取りなどにこだわりのある方は、建売住宅に満足されるケースは極めて稀です。
いくら安いとはいえ不満を抱えて生活するよりは、お金がかかっても満足して住み続けたいと、「建てる」を選択される方も少なくありません。
あくまで一例ですが、このようなメリット・デメリットを知ったうえで、ご自身の希望と照らし合わせて選択してみてはいかがでしょうか。