生活を営む土地だからこそ、安心して住める場所を選びたい
昨年7月に起きた西日本豪雨の死者・行方不明者は232人で、平成になってから最悪の風水害となりました。
ダムや堤防などが整備されていても、自然の猛威がそれを上回り、毎年のように各地で甚大な被害が起きています。
また高齢者が増えて、避難もままならないのが現状です。
そこで、「災害の危険のある土地には住まない」という選択によって、災害から免れることを、真剣に考える必要があります。
西日本豪雨による土砂災害で亡くなった犠牲者のうち、「土砂災害警戒区域」などの危険な場所で亡くなった割合は、約9割に上る、とのデータを、国土交通省が公表しました。[※1]
「住んでいた場所が、生死を分けた」ともいえるでしょう。
災害列島といわれる日本では、山崩れなどの土砂災害、地震による地盤の液状化、豪雨などによる水害など、見えないリスクが潜んでいる土地が多くあります。
長く生活を営む土地だからこそ、安心して住める場所を選びたいですし、今自分が住んでいる土地のリスクを知っておきたいものです。
「自然災害」に焦点を当てたリスク回避について、今回は土砂災害について述べたいと思います。
あなたの町の危険区域を知っていますか?
山崩れ、地すべり、土石流などの土砂災害は、一瞬で住宅を呑み込み破壊して人命を奪う、恐ろしいものです。
土砂災害については、法律に基づいて2種類の危険区域が指定されています。
以下の2種類の危険区域は、これから指定される見込みの区域も含めると、全国で約66万カ所もあるといわれています。
- 土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)
- 土砂災害警戒区域(イエローゾーン)
レッドゾーンは「住民の生命に著しい危害が生じる恐れのある区域」で、建築や開発行為に規制が課せられます。
一方で、イエローゾーンは特に開発等の規制はないため、レッドゾーンに比べると甘く見られがちですが、危険な場所であることに変わりはありません。
現に西日本豪雨では、イエローゾーンでも多くの被害がありました。
ハザードマップを調べておきましょう
各自治体ではレッドゾーンやイエローゾーンを表示する看板を現地に建てたり、「土砂災害ハザードマップ」で明示されていることが多いですので、自治体のホームページを調べたら、どの土地が指定されているか分かると思います。
また、「国土交通省ハザードマップポータルサイト」というサイトでも確認することができます。
このサイトでは土砂災害だけでなく洪水や津波などの危険区域も分かりますので便利です。
危険ゾーン以外でも油断できない場所がある
では、上記2つの危険ゾーンに指定されていなければ絶対安心といえるでしょうか。
必ずしもそうはいえない場合があります。
指定から外れた場所であっても、土砂災害が起こることがあります。
西日本豪雨では、危険指定されていなかったがけが崩れたり、土石流が予想外の方向へ流れて、指定区域から外れていた家屋をなぎ倒してしまった事例も、少数ですがありました。
自然の猛威は、しばしば人間の予想を裏切ります。
昨年4月に大分県で、雨も降っていない、地震も起きていないのに突然、大規模な山崩れが起こり、6人が亡くなりました。
地下深くを流れていた水脈が崩壊の引き金になったのではないか、といわれていますが、このような事態を予測できた専門家は一人もいなかったといっていいでしょう。
『歎異抄』という日本の有名な古典には、この世は「火宅無常の世界」だと書かれています。火のついた家のように、いつどうなるか分からない不安定な世界に住んでいるのが私たち、という意味です。
もしいきなり家が土砂で押しつぶされたら、逃げようがありません。
油断は禁物です。
危険指定されていなくても、近くに急斜面やがけがある場所や、指定されているゾーンの周囲も、警戒が必要と考えます。
すでに警戒区域に住んでいる場合は
そのようなリスクのある場所には住まないのが最善ですが、すでに住んでしまっていて移転できない場合も多いと思います。
自分の住む土地のリスクを知ったうえで、日ごろから避難計画を立てておいたり、寝室をがけから離れた部屋や2階に置くなどして、被災時の生存確率を少しでも高める努力をすることが大切でしょう。
まとめ
- 災害リスクを回避するには、まず今住んでいる土地や、これから住もうとしている土地のリスクを知ることが大事です。
- その土地の土砂災害リスクを知るために、ハザードマップを確認しておきましょう。https://disaportal.gsi.go.jp/
- ハザードマップの危険区域から外れていても、近くに急斜面やがけがある場所や、危険区域の周囲も警戒が必要です。
- 災害リスクのある場所には住まないのが最善ですが、住んでいる場合でも自分のいる場所のリスクを知ったうえで、日頃から災害に備えて準備しておきましょう。
※1:国土交通省「実効性のある避難を確保するための土砂災害対策検討委員会」第1回(平成30年9月11日)資料より