前回は、最大最高の冷え対策は「筋肉をつけること」とお話ししました。
筋肉を増やす「貯筋」のポイントは、「食事、栄養」「運動」の2つが車の両輪のように機能して、相乗効果をあげることです。
前回の記事はこちら
貯筋は、若いうちから心掛けておくことをお勧めしています。
今回は、栄養士の結川美帆さんから、貯筋のための食事のコツを伝授していただきましょう。
筋肉を増やすのに欠かせない栄養素は?
「何を食べれば手っ取り早く筋肉がつくのですか?」
職業柄、こういった質問をよく受けますが、残念ながら、これさえ食べていればOK!という魔法の食べ物はありません。
まずは、筋肉の合成に欠かせないたんぱく質、そして炭水化物、脂質、ビタミン、ミネラルの五大栄養素を、さまざまな食品を組み合わせて、バランスよく補給することが大事です。
栄養バランスの良い食事とは、「主食+主菜1品+副菜2品」の基本に、果物と乳製品を加えたものです。
主食…ご飯、パン、麺類、シリアルなど
主菜…肉・魚・卵・大豆製品のおかず
副菜…野菜・海藻・きのこなどのおかず
果物…バナナ・りんご・みかんなど
乳製品…牛乳・ヨーグルト・チーズなど
朝食をとらなかったり、炭水化物抜きで無理なダイエットをしたりしながら、運動だけを行うと、筋肉合成に加えて分解も促進されるため、筋肉はむしろ低下してしまい、残念な結果になってしまいます。
ですので、栄養バランスのよい食事を基本として、たんぱく質を3回の食事に分けて補給することをお勧めしています。
たんぱく質の摂取量が減っているのは高齢者だけではない!
最近は、高齢者のロコモ(ロコモティブシンドローム-運動機能の低下)や、サルコペニア(筋肉量の減少)が社会問題となっています。
筋肉を増やすには、筋肉の材料となるたんぱく質が最も重要な栄養素ですが、実は、たんぱく質の摂取量が減っているのは、高齢者だけではありません。
厚生労働省の「国民健康・栄養調査」によれば、2010年のたんぱく質の平均摂取量は、1995年と比較すると20歳~59歳の働き盛り世代の男性では約20%も減少し、全世代平均でも約18%減少していました。
また、日本の若い女性では“やせ型指向”の人が増えています。
知らないうちに、たんぱく質をはじめとした栄養不足に陥り、貧血や低出産児の増加の原因となっています。
アミノ酸スコアの高い食品を取りましょう
たんぱく質は、約20種類のアミノ酸の組み合わせで構成されています。
アミノ酸のうち、体内で作り出すことができない9種類のアミノ酸を「必須アミノ酸」といいます。
この「必須アミノ酸」が含まれるバランスを数値化したものを「アミノ酸スコア」といわれます。
つまり、アミノ酸スコアが高いほど、“質の良いたんぱく質”ということになります。
ご飯や野菜、果物など、多くの食品にアミノ酸は含まれていますが、アミノ酸スコアが高い食品といえば、肉・魚・卵・乳製品といった、動物性たんぱく質が代表格です。
ちなみに植物性たんぱく質のうち、大豆製品も、昔はアミノ酸スコアが低かったのですが、アミノ酸スコアの概念が変わり、現在は良質なたんぱく質として認識されるようになりました。
筋肉を作るスイッチをONにするには
必須アミノ酸の中でも、筋肉のエネルギー代謝や合成に深く関わると考えられている、
「バリン」
「ロイシン」
「イソロイシン」
の3種類のアミノ酸は、BCAA(Branched Chain Amino Acid)と呼ばれます。
筋肉合成におけるBCAAの役割は大きく、逆に、運動中に分解されるBCAAの量もかなり多いと考えられています。
中でも「ロイシン」が、筋肉合成のスイッチを押す役割があるといわれ、注目されています。
筋肉を作るBCAAが多く含まれる食品
(1食目安量あたり/七訂食品成分表より)
いつもの食事に一工夫 BCAA強化レシピ
最初にお話ししましたとおり、貯筋における基本は「バランスの良い食事」です。
いつもの食事にプラスαで、BCAAを強化しましょう。
レシピ① ピカタに一工夫
豚ヒレ肉100g(BCAA 3900mg)
→卵1個と小麦粉をまぶしてピカタにアレンジ(+BCAA 1300mg)
→粉チーズ大さじ1を混ぜてチーズピカタにアレンジ(+BCAA 570mg)
レシピ② ポテトサラダに一工夫
じゃがいも1個分・ハム1枚入りポテトサラダ(BCAA 630mg)
→高野豆腐の粉大さじ3・牛乳80cc・砂糖少々を混ぜ合わせ、電子レンジ500w 1分加熱したものを加えてアレンジ(+BCAA 1220mg)
レシピ③ 野菜サラダに一工夫
トマト・キュウリ・レタスのサラダ+マヨネーズ大さじ1(BCAA 160mg)
→マヨネーズ大さじ1+ヨーグルト大さじ2を混ぜて、ヨーグルトソースにアレンジ(+BCAA 208mg)
→アーモンド3粒追加(+BCAA 94mg)
※写真はイメージです。