ここ最近、メディアや書店、SNSでもよく目にするようになったHSCという言葉。
HSCを初めて日本に紹介した『ひといちばい敏感な子』(エレイン・N・アーロン著、明橋大二 翻訳)が出版されたのは2015年です。
以来、HSCは少しずつ知られるようになり、この本を翻訳した心療内科医の明橋大二氏が2018年に『HSCの子育てハッピーアドバイス』を出版すると、一気に認知が広がりました。
HSCとは、いったいどんな子なの?
うちの子もHSCなの?
気になる方のために、『HSCの子育てハッピーアドバイス』の中から、分かりやすく紹介したいと思います。
HSCのおおまかな特徴は?
HSCとは、Highly Sensitive Childのことで、明橋氏は、「ひといちばい敏感な子」と訳しています。
おおまかにいうと、次のような子どもです。
- 「ひといちばい敏感」という特性があります
(5人に1人の割合)- 生まれつき、よく気がつき、深く考えてから行動します
- 体の内外のことに敏感です
- よく気づく得意分野は、人それぞれです
(雰囲気や表情、におい、ユーモア、 動物とのコミュニケーションなど)- 悲しみや喜びを、他の子よりも強く感じています
- 感受性が強く、豊かな想像力があります
HSCかどうかを知るための23のチェックリスト
HSCを提唱したアーロン博士が作ったチェックリストがあります。
次の質問に、感じたままを答えてください。子どもについて、どちらかといえば当てはまる場合、あるいは、過去に多く当てはまっていた場合にはチェックを入れてください。
13個以上にチェックが入っているのなら、お子さんはおそらくHSCでしょう。
しかし、心理テストよりも、子どもを観察する親の感覚のほうが正確です。
たとえチェックが1つか2つでも、その度合いが極端に強ければ、お子さんはHSCの可能性があります。
では、具体的に、どのような特性をもつ子どもなのか、『HSCの子育てハッピーアドバイス』のイラストで紹介します。
イラストで分かるHSC
体の刺激に敏感
痛いのが苦手
まぶしい光、騒音、臭いにおいには簡単にノックアウト
1人になる時間が必要
すぐ驚く
2つ以上のことを同時に抱えるとパニックになる
他人の気分に影響される
ものすごく人に気を遣う
よく気がつく
悲しいニュースを聞くだけでも暗くなる
豊かで複雑な内面世界を持っている
芸術や自然に深く感動する
正義感が強い
弱い者には優しい
平和主義
ささいな変化によく気がつく
人に見られていると緊張してうまくいかない
空腹になったり、眠くなったりするとたいへん
変化が苦手
空気が悪いのが苦手
赤ちゃんのときの特徴
①よく泣く
栄養状態もよく病気もないのに、1日3時間以上激しく泣くことが、週に4日以上ある場合は、周囲からの刺激に敏感な子といわれています。
ただ、よく泣くのには、さまざまな背景があり、必ずしもHSCとは限りませんし、HSCでも、あまり泣かない子もあります。
②眠らない、すぐ目を覚ます
生後6カ月頃になると、HSCの多くは、眠りにくい、すぐに目を覚ます、といったことが起こります。
③注意力がある
「細かいことに気づく」「母親の動きをしっかり目で追う」などの特徴があり、新生児のときから、親の気持ちを感じやすいといわれています。
HSCでぜひ知っておきたい7つのこと
最後に、HSCを育てるに当たって、ぜひ知っておきたいことを紹介します。
①育て方でなるのではありません
HSCは、持って生まれた気質です。
赤ちゃんでもカンの強い子、動じない子、意志の強い子などいろいろありますが、そのような気質の一つが、「ひといちばい敏感である」ということです。
②障がいや、病気とは異なります
持って生まれた気質ですから、「治す」ものではありません。
このような性質を「自分らしさ」ととらえて、伸ばしていくことが、HSCの子育てです。
③5人に1人がHSCです。男女比も同じです
HSCの割合は、15%から20%。だいたい5人に1人で、この割合は、人種によっても変わらず、男性も女性も同じ比率です。
④何に対して敏感かは、人それぞれ違います
同じHSCといっても、「敏感だ」というところが共通するだけで、何に敏感かは、千差万別です。
⑤大人になっても、敏感な性質は変わりません
後天的な環境によって、敏感さが目立たなくなることがありますが、敏感である、という性質は、生涯を通じて変わることはありません。
大人の敏感な人を、HSP(Highly Sensitive Person)といいます。
⑥発達障がいと誤解されることがあります
感覚の敏感さをもって、発達障がい(自閉スペクトラム症・アスペルガー症候群など)と誤解されることがあります。
表面的には、似ているところもありますが、最も大きな違いは、自閉スペクトラム症が他人の気持ちを読むのが苦手なのに対して、HSCは、むしろ他人の気持ちを察することにひといちばいたけています。
⑦環境によって作られるものではありません
HSCは持って生まれた性質ですが、環境の影響を受けやすい、ということはあります。
しかし、大きな問題のない環境で育ったHSCの場合、うつ状態や不安症になるリスクは、非HSCと変わらないという調査結果が出ています。
HSCは少数派ではありますが、決して少なくはありません。
人とは違う感性を持っていますので、その分、配慮が必要になることもあります。
しかし、HSCの特性をよく知って育てていけば、見違えるほど生き生きとし、その才能を開花させることができます。
具体的な子育てのアドバイスは、『HSCの子育てハッピーアドバイス』や『教えて、明橋先生! 何かほかの子と違う? HSCの育て方 Q&A』をご参照ください。