大切なモノひとつ~線維筋痛症を乗り越えて #6

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「痛み」は目に見えないし、あなたにしか分からない。我慢せずにSOSを発信して

「痛み」は目に見えない障害

私が「線維筋痛症」と診断を受けたのは、大学5年生の夏でした。

振り返ってみれば、おそらく発症は小学生の頃だと思いますが、「普通」が分からなかった私は、みんな、同じような痛みを抱えて生きているものだと思っていました。

線維筋痛症は、痛みを基本として様々な随伴症状を伴う疾患です。
しかし、目に見える症状は特にありません。
私の場合は微熱が続くことがあったので、強いていえば、体温という数字に表れていたといえるかもしれませんが、個人によって随伴症状はさまざまです。

「痛み」というのは、骨折など、明らかに目に見えて痛いと分かる状態もありますが、けが以外の痛みは、「目に見えない障害」といえます。

それは、他人の目に見えないだけではなく、当事者の目にも見えないのです
それだけでなく、当事者も、比較できる過去がない限り、正常か異常かという判断すらつかないものだと思います。

子ども時代に発症すると、本人はこれが普通と思ってしまう

私は基本的に「痛くない日常」というものを知りません。
小学生頃から、痛みや倦怠感を常に感じていました。

子どもですから、以前の自分と比較する、ということは難しいと思います。だから私は「そういうものなんだ」と思っていました。

大人になってから発症した場合は、元気だった頃の自分と比較して、「これはおかしい」と思えるでしょうが、子ども時代に発症すると、そうはいきません。

「みんなこんなに痛くて疲れるのに頑張っているのだから、私も頑張らなくてはいけない」と思っていました。

「自分は周りと違うのではないか」と気が付いたのは、大学生になってからのことです。

一人暮らしを始めたことで、日常の負担が増え、症状が強くなってきたせいかもしれません。
「何でみんな、こんなに元気なのだろうか?」という疑問が常につきまとうようになり、友人に相談しました。

そこで、自分の痛みや疲労感が、正常範囲内を超えていることに気が付いたのです。

よくなったと思っていたある日…

それでも日常生活に支障が出るほどのことではなく、病気ではないと思っていました。
いわゆる体質の一つくらいに思っていたのです。

腰椎ヘルニアを患ったこともあり、大学に入ってからは特に運動もしていなかったし、食生活の偏りも否めない状況で、体質改善をすればよくなるのではないか、と思っていました。

だけれども、事態は悪化するばかり。

月経周期のホルモンバランス異常もひどくなり、婦人科や和漢診療科で治療をしてもなかなかよくならず、体調もメンタルもズタボロ状態でした。

今振り返ってみれば、無理に無理を重ねた結果、身体からのSOSが出続けていた状態だったのだと思います。

一人暮らしが立ち行かなくなってきた頃、母が私のもとへ来てくれることになりました。
生活が安定し、負担も減ったことで、表面的には症状はよくなっていました。

しかし、ある日突然やってきたのです。

普段の痛みとは、質も強さも範囲も違う痛み。
そして寝ても取れない疲れ。

急激に悪くなったことで、過去の自分の症状と比べて明らかに悪くなっている、と自覚できて、やっと、「病気なのではないか」と疑うことができたのです。

ここで初めて、もともと私が線維筋痛症であり、急激に悪くなった状態(急性増悪)であることが分かったのです。

自分の痛みを疑わず、SOSを発信しましょう

自分が病気であったことを知り、今までの痛みや倦怠感に納得がいきました。

それまでは、自分は体力がなく、常に絶好調ということもなく、自己管理ができないダメな人間だと思っていました。

しかし、世の中の多くの人は、自分が経験しているような痛みや倦怠感を常に感じているわけではなかったのです。

「私は今までとっても頑張ってきていたのだ」と初めて自分を労うことができました。

そして、
「痛みは自分にすらよく分からないのだから、人に分かるはずはない」
「伝えなければ分からない」
ということに気づきました。

痛みは、そんなに簡単には伝わらないという現実もありますが、長引く痛みは、さまざまなことを悪化させます。

ですから、気になる痛みや症状が続いたり、他の人と違うかもしれない…と感じるならば、痛みの専門家に相談することをオススメします。

もし、たまたま相談した医師や医療従事者に「気のせい」とか「気にしすぎ」などと言われたとしても、自分を疑う必要はありません。
必ず、アナタを理解しようとしてくれる医師や仲間に出会えます。

1日でも早くその日が来るよう、日本では今制度が整えられようとしているところです。

共に痛みを乗り越えることができる仲間が見つかることを願って。

今日も笑顔で顔晴って(がんばって)いきましょう。

「痛み」は目に見えないし、あなたにしか分からない。我慢せずにSOSを発信しての画像1

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