日本は日焼け対策が後れている
紫外線対策は、いつから始めればよいのでしょうか。
①幼児期
②思春期
③30歳
④還暦
正解は①の幼児期です。
一生涯で浴びる紫外線の大半を20歳までに受けます。
25歳は「お肌の曲がり角」といわれ、以降、若さは下降線をたどります。
20歳までのツケが後になって出てくるのです。
10歳までに多く太陽に当たった人は、将来皮膚がんになりやすいというデータもあります。
小学校時代は公園や野山を駆け回り、中学高校はスポーツに興じる。夏休み明けに誰がいちばん焼けたか「黒んぼ大会」なるものもありました。
欧米では子どもの頃からの日焼け止めが常識とされていますが、日本では日焼け対策がまだまだ後れているのではないでしょうか。
シミの来院者の過去を尋ねてみると、
「帽子もかぶらずセミ取りをしていた」
「炎天下で何時間もテニスの練習していた」
など、アウトドア派やアスリートがほとんどです。
紫外線対策は、「できるだけ早く」が原則です。
大人は紫外線ダメージの回復が遅いだけではなく、取り返しのつかないことになります。
たった一日、海で焼いたため、肩から背中にシミができたという「ひと夏の過ち」があります。
「今年は焼かない」という化粧品会社のキャッチコピーがありましたが、「今年も焼かない」と言いたいです。
紫外線が肌に与える深刻なダメージ
紫外線は、波長の違いによりUVAとUVBに分かれます。
紫外線の影響で皮膚に何が起こるのでしょうか。
UVAによってメラニン細胞が活動を開始し、色素を作ります。
メラニン色素が増えることで肌が黒くなっていきます。
若い時は色むらなく小麦色に日焼けし、秋以降は元のお肌に戻ります。
見た目、元通りになるので、紫外線の恐ろしさが分からないのです。
異変に気づくのは、お肌の曲がり角の25歳を過ぎた頃からです。
メラニン細胞も年を取るのでしょうね。正しく働かなくなるのです。
色むらができたり、一部分だけが黒くなったり、秋を過ぎても色素がそのままだったり。これがシミ、くすみです。
またUVAが真皮に届くと、膠原線維と弾性線維が正しく作られなくなり、ブチブチに切れ、皮膚のハリがなくなってしまいます。
これがシワです。げに恐ろしき。
「ぷるんぷるんのゆで卵」が、「シワシワの梅干し」になってしまうのです。
UVBは、細胞のDNAを傷つけます。
細胞には傷ついたDNAを元通りにする仕組みが備わっており、事なきを得ています。
しかし、繰り返される傷は、「直し屋」をもってしても、直せなかったり、間違って直してしまったりすることになります。
この蓄積が、皮膚がんへとつながっていくのです。
つまり、UVAは老化を、UVBはがんをもたらします。
太陽と上手につきあう紫外線対策
紫外線を確実に避ける方法は、「外出しない」ことです。
確かに太陽に当たらなければ光老化はしませんが、妖怪人間でない限り無理な話です。ベム(主人公)もお日さまが恋しいのでしょう。「早く人間になりた~い」と叫んでいます。
人間は古来より、太陽と活動をともにしてきました。太陽の光は、私に活力と解放感をもたらしてくれます。
しっかりと紫外線対策をして、お日さまと仲良くつきあっていきましょう。
曇りの日も油断しない
紫外線は4月から9月(特に6~8月)に強く、夏は冬の4、5倍も強烈です。
曇っているからといって、油断できません。
晴れの紫外線を10とすると、曇りは5、雨の日でも2の強さがあります。
曇りの日の1時間の無防備な作業は、炎天下で30分、じりじりと焼いたのに相当します。
シーンに合わせて日焼け止めを選ぶ
紫外線対策で、まず思いつくのが日焼け止めです。
日焼け止めの効果を表示したものがPAとSPFです。
PAは、紫外線UVAを遮る強さを示し、「PA+」~「PA++++」の4段階で表示されています。「+」が多いほど遮断効果は強くなります。
SPFは、紫外線UVBを遮る強さを示し、50までの数字で表示されています(50以上は50+)。
性能の高い日焼け止めを使うに越したことはありませんが、強い日焼け止めほど、「塗ったら白くなる」「クレンジングでないと落とせない」などの煩わしさを伴います。
「日々使う物」と、年に数回の「勝負の時、使う物」に分けて選ぶのがコツです。
「日々使う物」は、性能の強さよりも使いやすさを優先します。
日常生活では「PA++」、「SPF20」程度でじゅうぶんです。
「さらっとしている」「塗って白くならない」「せっけんで落とせる」製品が、使い勝手がよいです。
子どもや男性は地肌が黒いため、塗るとピエロのように白くなる物は適しません。
海や登山などのレジャー、スキー、スポーツ大会など、「勝負の時」には最高に強い物を、分厚く塗りましょう。
PAやSPFの評価は、しっかり塗った時の測定値であり、塗る量が半分だと効果も半減します。
勝負の時は、ピエロやちんどん屋になってもしかたがないと割り切りましょう。顔だけでなく、首、腕、手の甲にも塗りましょう。
首のシワや手の甲のシミは、特に年齢を感じさせますからね。
有効な紫外線対策グッズ
日光は上からだけでなく、横からも下からもやってきます。
木陰で直射日光に当たらなくても、横からと、地面の照り返しにより、直射の半分の紫外線を受けています。日焼け止めにプラスして、第2、第3の防御策が必要です。
まずは帽子が大事です。
つばが長い物ほど効果があります。前だけにしかつばがない帽子では、横からの日光は防げません。帽子をぐるっと囲んでつばのある物や、横や後ろに垂れのついた帽子がオススメです。
帽子以外にも、日傘を差し、腕カバーや手袋で露出部をガードしましょう。ひじまである長い手袋もあります。
運転中は要注意!
無視できないのは運転中の、手の甲に当たる紫外線です。運転中の綿手袋は欠かせません。
手袋がない場合、ハンドルは8時20分です。
「8時20分???」
時間のことではありません。
自動車教習所で、ハンドルに手を添える位置を、時計の針になぞらえて10時10分と教わりました。この位置では手の甲にシミができます。
8時20分の位置だと、受ける紫外線をぐっと減らせます。
6時30分が最も日光の当たらない位置ですが、事故を起こしますのでやめてください。
サングラスは色がついていない物を
夏はサングラスも必需品です。
目の老化防止になることはいうまでもありませんが、シミの予防にもなります。
目から入る紫外線によって、皮膚のメラニン細胞が色素を作れと命令するからです。
サングラスは色のついていないUVカットの物を選んでください。
濃い色のサングラスは瞳孔が開き、より多い紫外線が目に入るからです。
横から直撃する朝日も危険
井戸端会議での位置取りも重要です。
朝、ゴミ出しに行ったら近所の人とばったり出くわし、5分のつもりが30分も長話。よくあることです。
朝日が横から30分も顔を直撃していたら大変です。
世間では「おてんとうさまに背を向けるようなことはしてはならない」といわれますが、ケース・バイ・ケースです。
何気なく、太陽を背にした位置を確保しましょう。
話の途中でジリジリ移動していては不自然です。「あ~ら奥さま」と話しかけられた最初の位置取りが肝心です。
ただ、相手もこの記事を読んでいたら……。
おそらく無言の駆け引きが繰り広げられることでしょう。