カフェで楽しむ源氏物語-Genji Monogatari #25

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【源氏物語】玉鬘の巻あらすじ解説┃光源氏が忘れられぬ夕顔の娘

【源氏物語】玉鬘の巻あらすじ解説┃光源氏が忘れられぬ夕顔の娘の画像1

こんにちは。国語教師の常田です。
今回は、容姿端麗のもてもて女性が登場します。「モテないよりはモテるほうがいい」と誰もが思いますが、モテるが故の苦しみが、あるのですね。
「玉鬘の巻」のあらすじを解説します。

夕顔の忘れ形見・玉鬘

30代半ばに差しかかった光源氏には、今なお忘れられない女性がありました。
17歳の時に出会った夕顔です。

素直で魅力的な彼女に源氏は夢中になりましたが、2人きりで過ごしていた夜、目の前で彼女は急死してしまったのです。
源氏は夕顔の侍女・右近を口止めのために引き取り、事実を隠しとおしたのでした。

実は夕顔には、源氏のライバル・頭中将との間に生まれた玉鬘(たまかずら)という娘がいましたが、その存在を頭中将の正妻に知られぬよう、乳母が引き取り、ひそかに育てていたのです。
乳母は夕顔の死を知らず、行方不明だと思っていました。

やがて乳母は、4歳の玉鬘を連れ、夫の赴任先・九州の筑紫へ移ります。
西へ向かう船中で、
母の御もとへ行くか」(お母様の所へ行くの?)
と何度も尋ねる玉鬘は、周囲の涙を誘いました。

それから17年――。

玉鬘は求婚からから逃れ、都へ

玉鬘は輝くばかりに美しく成長しました。

うわさを聞きつけ求婚してくる者が後を絶ちません。
乳母は玉鬘を田舎者と結婚させる気はなく、「姫は体が悪いので、尼にしようと思います」と断り続けていました。

ところが1人、どんな断り文句にも動じず、強引に迫る者がいました。
肥後に勢力を持つ豪族・大夫監(たゆうのげん)という30歳くらいの大柄な男です。

「姫を后のように大切にいたす。たとえどんなお体でも、仏神に命じて治させましょう」
と邸に押しかけてきて得意げに語り、「では早速、何日頃に…」と勝手に結婚の日取りまで決める始末です。
ストーカーのような強引さでした。

恐怖に駆られた乳母は玉鬘を連れ、真夜中ひそかに家を出ます。
海賊の出現やもっと恐ろしい大夫監の追っ手に怯えながら、都へと船路を急ぐのでした。
玉鬘は舟の底にうつぶせになりながら、

行くさきも 見えぬ波路に 舟出して 風にまかする 身こそ浮きたれ
(行く先も見えない波路に船出をして、風に任せているこの身こそ、はかなげで辛いことよ)

と先の見えない旅を嘆くのでした。

光源氏に引き取られることに

やっとの思いで京に着き、知人宅に身を寄せたものの、先を思えば途方に暮れるばかりです。

ところがある日、初瀬へ向かっていた玉鬘と乳母は、永く音信の途絶えていた右近と、なんと同じ宿に泊まったのです。

突然の再会に感泣し、一晩中語り明かしました。
この時初めて玉鬘は、母・夕顔がすでに亡くなっていることを知りました。

右近は早速、夕顔の忘れ形見との出会いを光源氏に報告します。

母以上の格別な美貌と知って、大喜びの源氏は、実父の頭中将には内緒で玉鬘を引き取ることにしました。

お先真っ暗だった玉鬘たちには願ってもない話です。
しかし、当の本人は不安にさいなまれます。

母はいない。
父にも会えない。
自分を養うと言ってきた源氏とは、どんな人物なのやら…。

数ならぬ みくりやなにの すじなれば うきにしもかく 根をとどめけん
(ものの数にも入らぬ私は、どういう縁があって、みくりが沼に根をおろすように、この憂き世に生まれてきたのでしょうか)

安心できる所に身を落ち着けたい。
玉鬘の願いはそれだけでした。

六条院で暮らし始めると、玉鬘のモテモテぶりには拍車がかかります。
それゆえ彼女はますます人生の苦しみを味わうことになるのです。

人物紹介:玉鬘

源氏のライバル、頭中将と夕顔の娘。
母の死は知らず、乳母の夫の赴任に連れられて九州で育つ。

九州から都に戻ったあと、光源氏に引き取られる。
容姿端麗なため、貴公子たちからモテモテで、光源氏からも言い寄られた。

逆境に適応していくしなやかさがあり、前向きに与えられた環境の中で努力する人、とも言える。

玉鬘については、こちらの記事でも詳しく解説しています。

※「玉鬘」の巻名は光源氏が詠んだ「恋ひわたる身はそれなれど玉かづらいかなる筋を尋ね来つらむ」の和歌から。「玉鬘」から「真木柱」までの十帖は「玉鬘十帖」と呼ばれることもある。
※初瀬:奈良県の地名
※肥後:現在の熊本県
※みくりが沼:「みくり」は水草の名。みくりが群生する沼のこと

◆ ◆ ◆

四季を模した大豪邸「六条院」について

『源氏物語』の後半に多く登場する「六条院」という邸は、栄華を極めた光源氏が、愛する女性たちを一堂に住まわせようと、35歳の時、新たに造営した大邸宅です。

東京ドームの1.5倍ともいわれる広大な敷地を、春夏秋冬の四つの町に分け、それぞれの季節に映える木立や草花を植えています。

源氏は正妻格の紫の上、娘の明石の姫とともに「春の町」に住みました。

「夏の町」には花散里、「秋の町」は源氏の養女・秋好中宮(あきこのむちゅうぐう)の里帰りの場所に、「冬の町」には明石の姫の実母・明石の君が、皆より遅れて移り住みました。

源氏物語全体のあらすじはこちら

源氏物語の全体像が知りたいという方は、こちらの記事をお読みください。

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