「今、生きている。この喜びを、日々、楽しもう。」
存命の喜び、日々に楽しまざらんや
(徒然草 第九三段)
700前の自由人、兼好法師からのメッセージです。
年を重ねるほどに、人間関係のもつれ、病の苦しみ、天災や人災、色々な荒波が襲ってくるのではないでしょうか。
荒波に揉まれて、すべてを投げ出してしまいたくなる時もあります。
そんな時、人生の根っこの部分「今、生きている」事に、目を向けてみませんか。
生きている喜びって?
明石家さんまの座右の銘は、「生きてるだけで丸儲け」。
「生きている」この大前提が、喜びでいっぱいで、毎日が楽しい。
この土台がしっかりすると、色々な問題は、変わりなくやってきても、乗り越える力がわいてくるのかもしれません。
兼好さん、どうしたら、なれるのでしょうか?
「ちょっと心の持ち方を変えると、随分、楽になれるよ。そして、苦しみの元を突き止めて解決することが大事なんだ」
兼好法師は、日々、見聞きしたことを題材に、エッセーを書き始めました。
もしかしたら、ブログやツイッターのパイオニアかもしれません。
四季の移り変わり、名人に極意を尋ねるインタビュー、落語のように笑える事件……。
こうした244のエッセーから『徒然草』が誕生したのです。
江戸時代の編集者が、『徒然草』をベストセラーに!
『徒然草』の著者は「吉田兼好」と、学校で習った人が多いと思います。
しかし、本当の名前は「卜部兼好」といい、最近の教科書では書き換えられています。
卜部兼好は、鎌倉時代の終わりに京都の吉田神社の神官の家に生まれました。
高い教養を身につけていた彼は、朝廷の官僚となり、天皇に仕えて、周囲がうらやむほどの出世を果たします。
ところが30代で、突然、貴族社会に別れを告げ、地位や名誉には見向きもせず出家しました。
仏教を求めて出家したので、「兼好法師」と呼ばれるようになったのです。
出家といっても、山に入って修行したのではありません。
寺を回って学んだり、和歌を詠んだり、文化人や名士と交流したりして、幅広く、自由な活動を展開していくのです。
70歳ほどで亡くなったといわれています。
『徒然草』は、兼好法師が亡くなって、300年もたってから、江戸時代の天才的な編集者の目に留まります。
彼は、「いつの時代にも共通する素晴らしいメッセージだ」と直感。
兼好法師の原稿に解説を加え、新たに編集して発売したところ、大ベストセラーとなったのです。
スティーブ・ジョブズにも影響を与えた『徒然草』
そして、江戸時代から始まった『徒然草』ブームは、今も続いています。
アメリカで、アップルコンピュータ社を設立し、革新的な事業で大成功したスティーブ・ジョブズは、若い時から日本文化が大好きでした。
仕事の進め方、信念を語る言葉の中には、『徒然草』そのまま、といえるメッセージがあります。
彼も、英訳で読み、仕事の原動力にしていたのでしょう。
『徒然草』を読み解くことで、人生の荒波に、違った視点を向けられるかもしれません。
考え方の引き出しが、多くなると、きっと人生のプラスになります。
兼好さんとお茶をいっぷくしてみませんか。