「空の巣症候群」とは?母の愛が深いからこそ寂しさを感じる
孤独の名言レシピ、第3回は「空の巣症候群」について取り上げます。
空の巣症候群とは、子どもが家を出たり結婚したときに、多くの女性が感じる憂うつで不安になる苦しみを表す言葉です。
子どもが家を巣立っていったあたりからこの症状が出てくることが多いため、このように呼ばれています。
子育てが終わった喪失感から、「燃え尽き症候群」とも言われているようです。
なぜそこまでの状態になってしまうのでしょうか。
母の子に対する愛情がよくわかる、こんな話があります。
「親」という漢字は、「木」の上に「立」って「見」る、と書く。
この中には、子供を思う親心が込められている。例えば、子供の帰りが遅いと、親は非常に心配になる。
「学校で何かあったのか?」
「まさか、交通事故に遭ったのでは?」
時間がたつにつれて、悪いほうへ悪いほうへと考えてしまう。とても家の中で、じっとしておれるはずがない。
玄関で背伸びをして、
「まだか、まだか」
と待ち続ける。もし、近くに木があれば、少しでも高い所へ登って、我が子を捜したい心境になるものだ。「親」の一字は、我が子の安否を気づかう、切ないまでの親心、そのものである。
『親のこころ おむすびの味』(木村耕一編著)p.66
母の子に対する思いはどこでも変わらないことがわかりますね。
それだけ心をかけている子どもも、やがては自分の元を離れて巣立ってゆく…。
空の巣症候群の悲しみはどれほど大きいのでしょうか。
今回は、「空の巣症候群」を予感し、不安を感じておられるSさん(52歳女性)のお悩みを紹介します。
空の巣症候群の予感…シングルマザーのお悩み
20代の時結婚し、男の子が生まれました。
ところが、当時の主人とは意見が合わずに離婚。
小さい息子を抱えて、数年後に別の人と再婚しました。優しくて男前で、息子にも優しい素敵な人でした。
しかし、次男が生まれてまもなく、主人は心筋梗塞で突然亡くなったのです。
それからは実家に戻り、シングルマザーとして、女手一つで息子2人を育ててきました。今では2人とも成人し、しっかり者でとても頼りになる存在です。
職場の同僚や友達には明るいイメージで通っている私ですから、なかなか外では弱音は言えません。
そんな時は、家で息子たちに話を聞いてもらうのです。
息子たちはずっと私の心のよりどころでした。ですから、長男が実家を出て県外で一人暮らしをすることになった時は、本当に寂しく悲しかったです。
今はまだ次男が一緒にいるから頑張れますが、やがては長男に続き次男も巣立つ時がやってくるでしょう。
子どもが離れていくのが怖いです。空の巣症候群を予感しています…。このままでは寂しくなるのは目に見えていて、焦っています。
婚活も始めていますが、うまくいかなかったら独りになってしまうのではないかと思うと不安です。
孤独名言に聞く、子どもが巣立つ母の寂しさ
2人目のご主人を亡くされてから、お子さんを一人で育てられたこと、なかなかできることではありません。
自分の時間も取らず、息子さんたちにすべてを注がれてきたことと思います。
しかもそんな苦悩を周囲に見せることなく、明るく振舞われるのはどんなにか大変だったことでしょう。
お母さんにとって、お子さんは心の支えになる大事な存在と言われますよね。
こんな言葉を言っている人がいましたので紹介します。
なんと女は孤独な者だろうか。子ども以外に女を支えるものは何もない。
その子どもさえ、女をつねに支えるには足りない。
ロマン・ロラン(フランスの作家/1866~1944)
子どもはお母さんの生きがいともいえますが、いずれ必ず巣立っていきます。
そうなれば、ずっと子どもだけを頼りにするわけにはいかないですよね。
多くのお母さんが同じように空の巣症候群の寂しさを抱えているのではないでしょうか。
お母さんも子どもと一緒に巣立てるチャンス
子育てに自分の存在価値を見出しているお母さんは多いでしょう。
ですから、子育てが終わって子どもが離れていくときには空の巣症候群になり、大きな寂しさを感じて不安になるのも無理はありません。
しかし、子どもが巣立っていくのは、必ずしも寂しいことばかりではありません。
このような名言があります。
顔をいつも太陽のほうにむけていて。
影なんて見ていることはないわ。
ヘレン・ケラー(アメリカの教育家、社会福祉活動家/1880~1968)
子どもを心の支えにされていた分、どうしても離れていくことの寂しさ、孤独感という影の部分に目が行ってしまいますよね。
それは、これまでお子さんを大切に育ててこられたことの現れで、とても素晴らしいことだと思います。
ただ、これからの人生を明るく生きていくために、視点を太陽の方に向けてみましょう。
子どもが巣立っていくということは、同時に、自分自身も巣立てるチャンスが来たということではないでしょうか。
今までお子さんのために使っていた時間を、これからは自分のために使うことができるのです。
自分の人生を自分で切り開き、充実させていくことにシフトチェンジしてみてはいかがでしょうか?
セカンドライフの可能性はどこまでも広がっています。
まとめ
ずっと成長を見守り、大切に育ててきた子どもが巣立っていくのは、とても寂しいことです。
それが、ぽっかりと胸に穴が開いたような「空の巣症候群」の症状を引き起こしているのでしょう。
しかし、子どもが離れていって寂しいと感じる時間も続かないものです。
空の巣症候群の苦悩は必ず乗り越えていけます。
お子さんが巣立ったときが、1人の人間としての成長のチャンスともいえるのではないでしょうか。
子育てを頑張ってこられたからこそ、お子さんは立派に巣立っていけるのです。
そのことに胸を張り、今度は自分のための人生を送って頂きたいです。