2人の歴史ナビゲーターがおくる新感覚歴史クイズ「歴シル」!
手軽にサクッと学べる13問のクイズを解き終えるころには、あなたも立派な戦国通です!
ナビゲーター紹介
長宗我部元親
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名前の読みかたは「ちょうそかべもとちか」。 四国・高知県の戦国武将。戦国時代をクールに分かりやすく解説する。 |
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リン
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都内の大学に通う明るく元気な1年生。歴史はくわしくない。元親のことをチカさんとよんでいる。 |
今回のクイズはこちらです!↓↓
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【Q6】信長の妹・市姫は時代のキーパーソンを生んだ。市姫の血を引いていないのは、次のうちだれ?
A・豊臣秀頼(秀吉の子)
B・徳川家光(家康の孫)
C・伊達政宗
D・明正天皇
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幸せから一転 なぜ兄と夫が戦争に?
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正解は「C・伊達政宗」だ!
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信長さんの妹・市姫は、浅井長政という武将に嫁いだ。政略結婚だったがそれはそれは仲がよくてな、側室を何人ももつのがふつうだったが、長政は市姫以外に妻をもとうとしなかった。3人のかわいい子どもにも恵まれたんだ。
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自分だけを見てくれてる感がハンパない! 市さん、幸せだったろうな~。お兄さんは強い信長だし、安泰ね!
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いやいや、甘いよ。
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どういうこと?
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「昨日の友は今日の敵」が戦国時代。急に敵どうしになることがある。
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え~なに、急にLINEブロックされるみたいな感じ? せっかく仲間になったのに…
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たとえばリンちゃんがA子ちゃんと元から仲よくて、B子ちゃんとは最近仲よくなったとする。
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うんうん。
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ところがB子ちゃんはA子ちゃんが嫌いで、悪口を言うようになったら?
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B子ちゃんにA子ちゃんをいじめないでって言うかも。
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それでもやめなかったら?
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たぶん、B子ちゃんを嫌いになる。
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戦国時代も同じなんだよ。
浅井長政は、古くから朝倉氏と同盟していて、信長とは新たに同盟した。ところが信長は朝倉がきらいで戦争しかけたから、浅井長政も信長と仲が悪くなり、戦争になったんだ。
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なるほどね~。なんか戦国時代っていっても、人と人とのつきあいなんだなって思った。
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逆にA子ちゃんが、リンちゃんの嫌いなC子ちゃんと仲よくしはじめたから、A子ちゃんのことも嫌いになる、みたいなパターンもたくさんあった。
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あるあるね……
ん? 待って。じゃあ市さんからすると、お兄さんと旦那さんが戦うことになったの!? -
そうだ。
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えーーっ! そんなの残酷すぎる!
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戦国の悲しいさだめだ。
*チカさんのひとこと解説*
浅井と朝倉は古くから助けあってきた仲。浅井と織田が同盟するとき「朝倉を勝手に攻めない」という約束になっていた。
しかし信長さんは朝倉が大嫌い。信長さんには「ますます強くなるオレから、長政が離れることはないだろう」という計算があったかもしれない。しかし長政は古くからの絆(きずな)を大事にする義理がたい武将だった。義理の弟のとつぜんの裏切りに烈火のごとく怒った信長さんは、長政との全面戦争に突入する。
長政は城を囲まれみずから命を絶つ直前、信長さんに妻・市姫と娘たちの命を保証するよう求めた。
「私もいっしょに果てまする!」と市は夫といっしょに死のうとする。しかし「生きて浅井の血を残すのだ!」と長政に強く説得され、娘たちとともに織田家にもどって生きのびる道をえらぶ。
最愛の夫を殺した兄を、どんな気持ちで見つめていただろうな…
なお市姫の娘たちは、歴史のキーパーソンを生んでいる。豊臣秀吉や徳川秀忠(家康の子で2代将軍)に嫁ぎ、豊臣秀頼、徳川家光(3代将軍)を生む。この2人、実はいとこ同士なのだ。
運命は残酷でな、やがて徳川が豊臣をほろぼす。戦国時代の争いの多くは、「親せき争い」といえるぞ。
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市さん、かわいそう……死なずに生きる道を選んだ市さんって、きっとすごく強い女性だったんだと思う。
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そうだな、戦国時代、女性たちもまた戦っていたんだろうな。
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ん…明正天皇っていう人が子孫って?
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市姫のひ孫だよ。奈良時代以来、859年ぶりの女性天皇になる。
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天皇っ!? しかも女性は859年ぶりっ!? 徳川家光にしても豊臣秀頼にしても、市さんの血が歴史を作ってるって感じね~。
●まとめ
血筋は男子を通じて受け継がれると信じられていました。だから大名が滅ぼされたとき、どんなに幼くても男児は殺され、女性は助けられるのがふつうでした。しかし助けられることを拒んで自殺することも珍しくありません。
また女性は夫にしたがうものとみなされ、決定権はありません。
本能寺の変がおきたとき。
明智光秀の娘・玉(たま)は、信長の家来・細川忠興に嫁いでいました。
「お願いです! 父・光秀に味方してやってください!」
しかし細川は光秀には味方しません。玉は父が滅びるのをじっと見つめているしかありませんでした。
「父を見殺しにされた…」
きっと心の中で、ずっと格闘したことでしょう。
この玉姫。関ケ原の戦いのとき、敵の人質にとられそうになります。
「私が人質になれば、夫も戦いにくでしょう」
と人質になるのを拒んで自害してしまいます。それは「裏切り者の娘」という負い目からの逃避でもあったかもしれません。
きらびやかな歴史舞台の裏に、どれだけ女性の涙があるかしれません。
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