2人の歴史ナビゲーターがおくる新感覚歴史クイズ「歴シル」!
手軽にサクッと学べる13問のクイズを解き終えるころには、あなたも立派な戦国通です!
ナビゲーター紹介
長宗我部元親
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名前の読みかたは「ちょうそかべもとちか」。 四国・高知県の戦国武将。戦国時代をクールに分かりやすく解説する。 |
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リン
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都内の大学に通う明るく元気な1年生。歴史はくわしくない。元親のことをチカさんとよんでいる。 |
今回のクイズはこちらです!↓↓
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【Q8】戦国時代の戦争について、正しいのは次のうちどれ?
A・宣戦布告をしないといけなかった
B・兵士のほとんどは、実は武士ではなく農民だった
C・捕虜は面倒みる義務があった
D・使ってはいけない武器が決まっていた
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まだテストしていない人はコチラから!
驚きの事実! 兵士の7割は○○だった!? 信長軍の大改革
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正解は「B・兵士のほとんどは、実は武士ではなく農民だった」だ!
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えぇっ!? 兵士の7割は農民っ? 武士じゃないの?
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そうだ、ふだんは農業をしていて戦争のときだけ武器をもって戦ったんだ。それら農民兵を率いている人だけが武士だったんだよ。
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意外~!
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農民なので、田植えや稲刈りの時期は戦えない。「いまが攻めるチャンスなのに~」ってことになる。
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なるほど。
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農繁期に戦争に引っ張りだすと……?
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戦争のせいで畑仕事でぎねぇす……オラもうこりごりだす……(涙)
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と、みんなの反感を買うことになる。
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テスト期間中に部活の練習させられるようなものね…
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また専門の訓練を受けているわけでもない。そこで信長さんが大改革をしたんだ!
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大改革? なになに?
*チカさんのひとこと解説*
そもそも「武士」とは何か?
定義はまちまちだが、ここでは「土地や給金をもらって大名と主従関係を結んでいる人」としよう。
「オレたち○○家の家臣団! ○○様がオレのご主人!」
と言えるような人たちだな。戦場で戦う兵士のうち、武士は3割くらいで、ほとんどは地元の農民を駆り出していたんだ。
「○○様がご出陣だ、お前たち来い!」
「へ~い」
という具合だ。兵士として出向く農民を「雑兵(ぞうひょう)」という。大名のもとに一軍を指揮するような上級武士がいて、その下に下級武士がいて、下級武士が雑兵を率いるという構図だ。
「拙者の剣術は○○流…」のような人同士が戦うのではなく、「おらが村では~だべ」という人同士が戦っていたのが実情なのだ。手柄を立てれば恩賞がもらえるが、決まった給付金はない(涙)
そして武器も鎧も食料も基本的には「自前」だ。
刀や槍や鉄砲はお金がかかるから、田んぼで使う鋤や鍬をもって参加する農民もあった。装備も格好もばらばら。統一された軍服に身をつつみ、勇ましく行進し、軍律のもとに管理された近代の軍隊とは全く別世界なのだ。
また農民兵士が戦場で命を落とすと、農業の担い手がいなくなるので、国の生産力が下がってしまう。だから頻繁に戦争をするのは難しかったんだ。
そんな軍隊事情を根本的に変えたのが信長さんだ。
農民を兵士として駆り出すのではなく、専属の兵士を「雇う」ようにしたんだ。
農業の忙しい時期も戦争できるようになったし、農民が命を落として田畑が荒れることも防げた。兵士が減ってもすぐ雇い直して補充できるので、間なしに攻めてくる信長さんに相手は「もう疲れました…」と白旗をあげざるをえなかったのだ。
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なるほど~、信長さん強いはずね。でも雇うとなるとすごいお金かかるんじゃない?
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そうだ。金持ちだからできた戦法だ。信長さんは一流のビジネスマンでね。
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ビジネスマン? どういうこと?
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たとえば。足利将軍から「ワシのために頑張ってくれたから副将軍にしてあげるよ」と申し出があったけど「それよりも堺(大阪)や大津(滋賀)を下さい」と頼んだ。
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それ、どんなメリットがあるの? 副将軍、よさそうなのに。
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当時、堺や大津は日本有数の港町! 今でいうなら横浜や神戸みたいなもので、とくに堺は外国ともやりとりする日本一の国際貿易都市だった。「落ち目の足利幕府の副将軍になっても儲かるものか。商業都市を直轄地にして税金でわんさか儲けてやる!」と考えたんだ。戦国版・長者番付があったらたぶんトップだったろうな。
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税金でわんさか……なんかコンビニでちまちまバイトしてるのが空しくなってきた。
●まとめ
戦国時代、兵士のほとんどは農民でした。
ふだんは畑仕事をしていて、戦争のときだけ武器をもって駆けつけたのです。そうした兵士を「雑兵(ぞうひょう)」といい、雑兵を率いる人だけが武士だったのです。ドラマなどで
「このままでは名もなき雑兵に討たれるだけ! ここは退却してください!」
と聞こえてくることがあります。「腕利きの武士にやられるならまだしも、雑兵に討たれるのは不名誉なこと」と考えていたからです。
戦争で農民が命を落とせば、兵士が減るのももちろん痛手ですが、農地を耕す人がいなくなり国力が落ちてしまうのも問題でした。頻繁に戦争を起こす大名は農民からすれば大迷惑です。武田信玄が父親を追放したのは、何度も戦争することに対するブーイングをなだめるためです。
そこで信長は、農民を駆り出すのではなく、専属の兵士を「雇う」スタイルに大改革しました。農繁期も戦え、減ってもすぐに補充できる。そして信長はたくさんの兵士を雇うだけの資金を蓄える、財テクの才能があったのです。
やっぱりお金がものを言うのですね^^;
なお、クイズの選択肢A、C、Dは、いずれも近代戦争における国際ルールです。
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