最近、メディアにも取り上げられることが多くなった、HSC(ひといちばい敏感な子)。
環境になじめなかったり、不登校になったりする子も多く、発達障害と誤解されてしまうこともあると言われます。
今回は、書籍『ひといちばい敏感な子』(エレイン・N・アーロン(著) 明橋大二(訳))より、HSCと発達障害の違いについてご説明します。(1万年堂ライフ編集部より)
HSPの基本的な内容は下記でまとめていますのでご覧ください。
記事の内容はHSCとして書かれていますが、HSPにも当てはまりますのでHSPと発達障害との違いとしてもご理解いただけます。
HSC(HSP)と発達障害(ADD/ADHD)との違いは?
よく受ける質問に、敏感な気質と、ADD/ADHD(注意欠陥・多動性障害)との関係について教えてほしいというものがあります。
表面上はこの2つはとてもよく似ていて、多くのHSCが、ADHDと誤診されていると言う専門家もいます。
私はHSCが、ADHDだということは、ありえると思います。
でも、この2つは同じではありませんし、ある意味で正反対ともいえます。
例えば、HSCの大半は右脳の血流が左脳に比べて活発ですが、ADHDの子は左脳の血流のほうが活発です。
ADHDの子どもは、おそらく冒険システムが極めて活発で、用心システムが比較的おとなしいのでしょう。
HSCとADHDが混同される理由の一つに、HSCはいろいろなことに気づくので、ADHDの子のようにすぐに気が散ってしまうことがあります(といっても、時には一つのことを深く考え込んで、他のことにはあまり気づかないこともありますが)。
しかし、ADHDは、意志決定したり、集中したり、結果を考えたりするのに適切な機能が全般的に欠如している疾患です。
HSCの場合は普通、少なくとも穏やかで慣れた環境にいる時は、これらのことを得意とします。
ADHDの子は何かしらの理由により(理由は分かっていません)
- 優先順位をつける
- いったん外の景色に心奪われても、元どおりに注意を戻す
- 先生が自分ひとりに話しているわけではないと分かる
といったことが不得手です。
HSCは、必要な時には、少しは気が散るものから意識をそらすことができます。
しかし、そのために多大な精神的エネルギーを使います。
気が散る要因がたくさんある時や、そのような状況が長引く時、あるいは、動揺してすでに内面から過剰な刺激を受けている時に、さらに外からの刺激を受けると、圧倒され興奮して「おかしな」振る舞いをしがちです。これが、ADHDと間違われてしまうもう一つの理由です。
学校での長く雑音の多い生活の中では、途中で疲れてしまうこともあります。
大切なテストで興奮したり気が散ったりしていつもどおりできないのではないかと不安になると、神経が高ぶって、ふだんなら気にせずに済むことでも気になってしまうのです。
ADHDの治療には、さまざまな支援制度があります。
診断されれば支援の対象になるので、教師はHSCをADHDだと評価することがあります。前にも述べましたが、異質な行動の原因が敏感さにあるとは、人はなかなか考えないものです(気質について研究している人々の間では、ADHDの多くは正常な範囲の特性であり、敏感性と同様、誤解されているのではないかということが大きな議論になっています。ADD/ADHDについて興味深い文化的銀論については、リチャード・デグラドプレ著『リタリン・ネイション〈薬漬け国家〉』をごらんください。HSPについても取り上げられています)。
自閉症スペクトラム障害について(HSCとの違い)
通常、子どもに深刻な問題がある場合、親や小児科医が早い段階で気づきます。
多くの場合、早期発見が、良い支援を受けるための鍵となります。もしお子さんの行動が心配な場合は、きちんと医師に診てもらいましょう。本書はその代わりにはなれません。
一つの心配は、お子さんが、かつてはアスペルガー症候群と呼ばれていた軽度または非定型自閉症を含む「自閉スペクトラム症」かもしれない、ということです。自閉スペクトラム症(ASD)は、社会的相互作用とコミュニケーションがうまくいかず、行動パターンも限定的、反復的、常同的(同じ動作を繰り返す)です。通常、2歳までには気づかれます。
ASDの程度は非常に重要です。ASDの人の中には、社会的にも彼らの関心という点でも、ほんの少しだけ普通と違う、という人もいるかもしれません。
そして高機能ASDの人のほぼ半数は、平均よりも高い知能をもっているようです。率直に言って、お子さんの行動が示すのがHSCかASDかはっきりしない場合、ASDだとすればお子さんが高機能ASDである可能性がたかいでしょう。また、ASDの子がHSCである可能性もあります。
ただ、高機能ASDとHSCは異なるものであるということは研究で明らかです。HSCとASDの違いは脳にありますが、それだけが違いではありません。HSCは、子どもの約20%です。一方で、ASDが影響するのはそれよりはるかに少ない数です。これらの割合から、HSCは正常の範囲内であり、ASDは「障がい」として分類されます。
しかし、ひといちば敏感(HSC)であることと、高機能ASDは両方とも、「神経多様性(ニューロダイバシティ)」の実例の一つです。彼らは一般の子どもとは違いますが、どちらの場合でも、他とは同じような行動ができなかったとしても、障害者として扱われることは望みません。
ご存知のように、ひといちばい敏感なことは、マイノリティの中でも大きな割合を占めており、100以上の種で見られる正常な生存戦略です。しかし環境によっては、高機能ASDの人も「定型発達」を上回る生存戦略を見せてくれます。彼らは彼らにしかない素敵な人生を歩んでいるのです。
ニューロダイバシティがもう一つ教えてくれることは、一人ひとり指紋が違うように、脳も異なっているということです。本書では「ひといちばい敏感」という重要な気質に焦点をあてていますが、私たちは本当はみんな、HSCと同様に、複数の気質を持って生まれてきたのです。
そして、ある気質がそうでない気質よりも役に立つということがあります。「ヴィーラ・ラ・ディフェホンス(違い万歳)なのです。」
(『ひといちばい敏感な子』エレイン・N・アーロン(著) 明橋大二(訳)より)
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