カフェで楽しむ源氏物語-Genji Monogatari #48

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【源氏物語】橋姫の巻あらすじを解説!忘れられた光源氏の弟・八の宮

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こんにちは。国語教師の常田です。
光源氏が亡くなって十数年、彼の末子・薫は二十歳になりました。特に先帝の冷泉院(源氏の異母弟)に大切にされ、高位に就いています。
しかし、自らの出生への疑念をきっかけに、”私はどこから来て、どこへ行くのか”と人生に悩み、「仏門に入ってこの苦悩を解決したい」と人知れず仏法に心寄せていました。
源氏物語・宇治十帖「橋姫の巻」のあらすじを解説します。

橋姫の巻:光源氏の陰で落ちぶれた弟・八の宮

同じ頃、都から少し離れた宇治では、八の宮という年老いた男が、落ちぶれた暮らしを送っていました。
八の宮は光源氏の弟の一人です。光源氏は十人兄弟の二番目、八の宮は八番目、冷泉院は十番目に生まれました。

八の宮は若くして両親と死別し、力のある後見人もなく、政治や実務的な仕事を学ぶ機会もないまま、日々を音楽や詩歌に親しんで過ごしてきました。
管弦の才には秀でていましたが、おっとりとした性格ゆえ、敵対勢力に目をつけられ、権力争いに利用されてしまいます。

かつて光源氏がスキャンダルを起こして都を追われた時、東宮の座にいたのは、源氏の後見する冷泉院でした。
この冷泉院を引きずり降ろそうと敵対勢力が画策し、新しい東宮候補に八の宮が担ぎ出されたのです。

ところが、間もなく光源氏が政界に復帰したため計画は頓挫、見捨てられた八の宮は世間から忘れられてしまいます。
仕えていた人々も薄情で、出世が望めないと悟るや、彼の元を次々と去っていきました。

歯車がうまくかみ合えば、帝になっていたかもしれないのに…。
輝かしく栄達の道を歩む光源氏の陰で、八の宮は零落の運命に甘んじてきたのでした。

「なぜ私だけ生き残っているのか」妻も家も失った八の宮

そんな彼の支えは唯一、北の方(正妻)でした。
互いに頼り合い、仲睦まじく暮らしていましたが、その妻も二人目の娘を出産後に亡くなってしまいます。
八の宮は途方に暮れ、周囲に再婚を勧められるもその気になれず、出家して一途に仏道を求めたいと願うようになりました。

しかし、幼い二人の娘を残して仏門に入ることはできません。
しとやかで思慮深い長女の「大君(おおいきみ)」と、愛らしく初々しい次女「中の君」。
八の宮は彼女たちの成長だけを楽しみに、日々の勤行に励みます。

財産管理に無頓着な八の宮は、気がつけば、遺産も家宝も、何もかも手離してしまっていました。
そのうえ自邸も火事で焼失、新築する蓄えのない八の宮は都を離れ、辛うじて所有していた宇治の山荘に移り住みます。
宇治川の急流が耳につくほとりでした。

八の宮は前にもまして物思いに沈み、

見し人も 宿もけぶりに なりにしを なにとてわが身 消え残りけん
(ともに暮らした妻も邸も煙となってしまった。なぜわが身だけが生き残っているのだろうか)

妻が生きていてくれたなら…と恋しく思うばかりでした。

八の宮と薫の出会い

やがて八の宮は、宇治山に住む僧と知り合い、「私を仏法に導き入れようと、仏さまがあえて、つらい目に遭わせてくだされたに違いない」とますます勤行に打ち込みます。
彼の熱心さに感服した宇治山の僧が、ある日、親しく交流している冷泉院や薫に、八の宮父娘の話をしました。
うら若き娘二人に関心を示す年配の冷泉院とは対照的に、仏法に志を寄せる薫は八の宮に引かれます。

八の宮もまた、僧から薫のことを聞きました。
「私のように不幸続きで、仏縁を求めようと思うのはよくある話だが、薫の君はどうか。
年まだ若く、光源氏の子息として声望高く、全てが思いどおりなのに、後生を心にかけ、仏法に関心を寄せているとは、なんと殊勝な若者か・・・」

八の宮と薫、過去にどんな因縁があったのでしょうか。
年齢も境遇も超え、二人は法の友となり、手紙を交わし始めたのでした。

******

※橋姫の巻の巻名の由来は、「橋姫の心を汲みて高瀬さす棹のしづくに袖ぞ濡れぬる」という薫の和歌が由来となっている。

源氏物語全体のあらすじはこちら

源氏物語の全体像が知りたいという方は、こちらの記事をお読みください。


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