質問
自己肯定感が低い親に育てられ、自分の自己肯定感を高めることができません。
自分の子どもは大切に育てたいのに、うまくいかないことが多く、つらいです。
答え
自分がどういうふうに育てられたのか、ということにちゃんと気づかれているのは、本当に大事なことだと思います。
本当は親に分かってもらって、「そう言われればそうだね。それはお母さんが間違っていたね。悪いことしたね」と言ってもらえれば、いちばん救われるのですが、たいていは、「そんな昔のことを言われても困る。私は私で精一杯だったんだ」と開き直られて、よけい傷ついたということもあります。
あるいは親がもう亡くなっている、ということもあります。ですが、私は「お墓の前でも、とにかく文句をたくさん言ってきてください」と言っています。それも親の仕事だと思うのですよね。
聞いているかどうか分かりませんけれども、やっぱり自分がやったことの落とし前は、自分が引き受けて死んでいくということが親の務めで、それをしないから、結局どんどん孫やひ孫に受け継がれていくわけです。
そういう意味で、「自己肯定感が低い親に育てられた」と気づかれたということは、大事なことだと思います。だから決して、自分が悪い、ということではないのです。
そのうえで、では自分の自己肯定感をどうするかということです。
私は、大人になってからでも、自己肯定感を回復したり高めたりできると思っています。
実際、われわれ精神科医の仕事は、自己肯定感が低くなって来られる患者さんの「自己肯定感の回復のお手伝い」だと思っています。
その方法は、簡単にいうと2つあります。
1つは、自分をほめてくれる人を1人でいいから見つける。
絶対1人はいますから。それが夫や親であればいいのですが、そういう人に限って、ダメ出ししかしない、ということはよくあります。
そういう場合は、ママ友でもいいし、SNS上でもいいいし、子育て支援センターの相談員でもいいし、保育園の園長先生でもいいのです。
誰か1人はほめてくれる人がいるはずです。そういう人からほめ言葉のシャワーをたくさん浴びてもらいたい、ということです。
もう1つは、自分で自分をほめる練習です。
自分のできていないことばっかりに目がいってしまうのですが、できているところもあるわけです。たくさんほめるところがあるはずです。
あるいは、ほめ帳を作る。そういう患者さんもあります。
1日1回、自分が頑張ったこと、いいところを手帳に書いていくのです。
毎日1つずつ書いていくと、2カ月3カ月たつと、すごくたくさんたまっていきます。
それをたまに見返すと、
「こんなに自分、頑張っているじゃないか」
「こんないいところもあるわ」
と自分で自分を認めることができるのです。
そういうほめ帳を続けて、だんだん自己肯定感が上がってきた患者さんもあります。
そうして自分のことを認められるようになると、子どものこともほめられるように、必ずなるのです。
ですから、まず、自分を認める練習をしてもらいたいと思います。