今年の「母の日」
外出自粛要請が続く今年の「母の日」。親子で一緒に遊びに出かけたり、食事をしたりするのは難しい状況になってしまいました。連休中に帰省ができない中、テレビ電話で会話を楽しんだり、贈り物を配送したりして、「思い」を伝える方のニュースを聞くと、ほっと心が和みます。
例年この時期は、新生活のスタート、ゴールデンウイーク、こどもの日、母の日……と、あれよあれよと、飛び去るような日々でした。「どこへ行こうか」「あれを見たい」「おいしいものを食べに行こう」と、心はウキウキ、出かけることばかり考えていました。
ですが今年は、「ステイホーム」。
この機会に家でじっくりと、お母さんへ、思いを馳せてはいかがでしょうか。
『枕草子』ドキッとするもの
『枕草子』は、世界最古の随筆文学といわれます。
清少納言は、にくき物、ありがたきもの、かたはらいたき物、はずかしきもの……と、ざっくばらんに、思いを綴っています。「千年前も今も、人って変わらないものだな……」と共感できることばかり。だから、今もなお、愛され、読み継がれているのですね。
その『枕草子』に、こんな一節を見つけました。
ドキッとするもの。
親が、「今日は、どうも体調がすぐれない」と言って、ふだんと様子が違うと、ドキッとします。
まして、悪い病気が流行して、あちらで人が死んだ、こちらでも人が死んだというウワサを聞くと、「親は大丈夫だろうか」と心配になって、何も手につかなくなります。
(『枕草子』第143段 むねつぶるる物)
まさに、今と同じ状況に驚きますね。清少納言は、親元を離れて働いていたので、心配でならなかったと思います。しかも、離れた親に、ほとんど連絡をとれなかった時代。電話でも、メールでも、連絡を取り合える現代を知ったら、「うらやましいわ〜。もっと連絡してあげてね」という、清少納言の声が聞こえてくるようです。
“当たり前”ではなかった
「母へ思いを馳せる」と言われても、「別にぃ……」となりがちです。あまりにも存在が近すぎて、見えていないのかもしれません。
こんなエピソードがありました。
「君は今まで、親の体を洗ったことがあるかね」
ある青年が、一流企業の入社試験で、社長から、こんな質問を受けました。
「いいえ、一度もありません」
すると、社長は、意外なことを言ったのです。
「君、すまないが明日この時間にここへ来てくれないか。それまでに、親の体を洗ってきてほしいのだが、できるか」
「はい、何でもないことです」と答えて、青年は家に帰りました。父親は、彼が幼い時に亡くなりました。母親は、一人で必死に働いて子供を大学まで出させたのです。彼は、「お母さんが呉服の行商から帰ったら、足を洗ってあげよう」と思い、たらいに水をくんで待っていました。
帰宅した母親は、「足ぐらい自分で洗うよ」と言います。事情を話すと、「そんなら洗ってもらおうか」と、縁側に腰をおろしました。
「さあ、ここへ足を入れて」と、青年はたらいを持ってきます。母親は言われるとおりにしていました。彼は、左手で母親の足を握りました。しかし、洗うはずの右手が動きません。そのまま両手で母親の足にすがりつき、声をあげて泣いてしまったのです。
「お母さんの足が、こんなに硬くなっている……。棒のようになっている……。学生時代に毎月送ってもらっていたお金を“当たり前”のように使っていたが、これほど苦労をかけていたとは……」と知らされ、泣かずにはおれなかったのです。翌日、青年は、社長に、
「私は、この会社を受験したおかげで、どの学校でも教えてくれなかった親の『恩』ということを、初めて知らせてもらいました。ありがとうございました」
とうれしそうに言ったそうです。
(『新装版 親のこころ』はじめにより)
ああ、本当ですね。母に申し訳なくなってきました。
思いを綴ろう
こういうエピソードに触れると、親への申し訳なさ、反省、感謝の気持ちなど、どんどん湧き起こってきて、ついつい目頭が熱くなり、泣けてきてしまいます。
そんなあなたの思いを、綴ってみてはいかがでしょうか。
1万年堂出版では「親のこころ」への投稿を募集しています。親への感謝の思いをはじめ、親になって感じたことなど、「親のこころ」にまつわるエピソードをお待ちしています。お送りいただいた投稿は、月刊誌や書籍に掲載を予定しております。
今回は「母の日」特別月間。
ご応募くださった方には、古典シリーズでおなじみ・黒澤葵さんのイラスト入り絵葉書を、プレゼントいたします。素直な気持ちを書きやすい絵葉書です。
プレゼント期間は、風薫る5月いっぱい。
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