ステイホームで、家庭教育や、家庭学習が注目されはじめてきています。
「でも、親が勉強しろと言っても全然言うことを聞かない…」という悩みに、前回は子どもの意欲を高める方法をお伝えしました。
心の根っこを育てながら、子どもの才能を伸ばす「心根育(ここねいく)」を提案する、田宮由美先生。
連載第2章は、失敗しても落ち込んでも、折れない心が自然と備わるためのレッスンです。
(1万年堂ライフ)
大人になっても「折れない心」を培うために
親は、子どもの健やか成長や、将来自分の望む道に進めることを願うことでしょう。
ですが、人生は順調にいくときばかりではありません。
人との関係に傷ついたり、自分の能力に悩んだりし、心折れることもあるでしょう。それはどんな人でも、ありうることです。
もちろん子どもも落ち込んだり、壁にぶつかったり、転んだりするでしょう。
そこで大切なことは、どんな困難な状況であっても、前を向き、歩もうとする気持ちを持つことです。
転べば、また立ち上がる力をつけることです。
心の根っこを育みながら、日常生活に落とし込んだ「折れない心」の育み方を5つのポイントにまとめ、お伝えします。
折れない心を育てる5つのポイント
- ポイント1:折れない心を育むには、「硬さ」ではなく「しなやかさ」を求める
そもそも、折れない心とは何でしょうか。 - ポイント2:挑戦して失敗したときこそ、褒める
子どもが失敗すると、親はどうしても注意したくなるもの。ですがそれは、子どもを伸ばすには逆効果です。 - ポイント3:転ばぬ先の杖ではなく、転んだとき立ち上がる力をつける
大切なことは、転んだとき、立ち上がる力をつけることです。 - ポイント4:立てた計画は、修正する習慣をつける
素晴らしい計画を立てても、すぐに挫折…、それでは意味がありません。 - ポイント5:自信過剰でなく、本物の自信をつけさせる
心の根っこが育まれる「自信」でなければ、状況の変化で壊れてしまいます。
今回は、その中でも3つのポイントを特に詳しく説明いたします。
【ポイント1】折れない心を育むには、「硬さ」ではなく「しなやかさ」を求める
今の子どもたちは、人を思いやることを学ぶ機会は結構多いと思います。
学校では、
「相手の立場になってみましょう」
「人に思いやりの気持ちを持ちましょう」
と教えられ、家庭でも弟や妹、友達の気持ちになって考えることを教えます。
ですが、自分自身に対しては、どうでしょうか。自分を思いやることを教えられたり、学んだりする機会は少ないのではないでしょうか。
例えば、子どもに泣きたいほど悔しい、辛い、悲しいなどネガティブな感情がわき起こったとき、
「それくらいで、泣いちゃあダメ!」
「そんなに悔しいのなら、もっと努力すればよかったんでしょう!」
「誰でも、辛いときってあるものよ」などと言うことはないでしょうか。
親としては、子どもを慰めるためや、もっと強く育てたいという気持ちから、このような言葉をかけるのだと思います。
ですが、それが反対に子どもの気持ちを追い詰めることもあります。
折れない心とは、「硬さ」ではなく、しなやかさです。
ですので、泣きたいときは心ゆくまで泣かせてみればいいでしょう。悔しいときは一緒に悔しがりましょう。
そして、その気持ちを子ども自身が認められるようにしてください。親は、
「それは、悔しいよね」
「辛かったね」
「泣きたいときは、思いっきり泣いてもいいのよ」
と声をかけ、先ずそのネガティブな気持ちを認めることです。
【ポイント2】挑戦して失敗したときこそ、褒める
親は、子どもより人生経験が長いものです。
ですので、子どもの様子を見ていて、「これでは、上手くいかない」「必ず失敗する」とわかることもあるでしょう。
例えば、夕食の準備を手伝おうと、食器をテーブルに並べようとしたり、小学生でも高学年になると、ラジオや時計などの精密機械に興味を持ち、分解して、またそれを組み直そうとしてみたりすることもあるでしょう。
食器を並べようとして、テーブルから落とし、割ってしまう。
また、ラジオを分解しても、元通りに組み立てられなかったときに、
「だから、余計なことはしないで、って言ったでしょう」
「あなたに、できるはずがないでしょう!」
と言うことはないでしょうか。
子どもが何かに挑戦しようとする場面は、日常の中でたくさんあると思います。例えば、
「明日の朝は、自分で起きる」
「友達の家まで、一人で行ってみる」
「夕食のカレーはワタシが作る」
日常の小さなことから、オーデイションや審査のようなことに、挑戦することもあるでしょう。
そして、思うような結果が得られず、失敗に終わったとき、
「だから、ダメだって言ったでしょう」
「ほ~ら、みなさい、あなたは何をやっても失敗ばかりね」
とは、決して言わないでください。失敗して最もガッカリしているのは、本人です。
親は子どもを責めるつもりはなく、歯がゆさから出る言葉であるかもしれません。
ですが、子どもは、次に挑戦しようという気持ちを大きく低下させます。そうなると意欲も萎み、能力も伸びていきません。
子どもが失敗したときは、
「次はきっとうまくいくわよ」
「挑戦したあなたは、立派よ、すごいわ」
と温かく褒める言葉をかけましょう。
そしてできれば、なぜうまくいかなかったか、その原因を親子で一緒に考え、次の挑戦へとつなげていければいいですね。
【ポイント3】転ばぬ先の杖ではなく、転んだとき立ち上がる力をつける
親は子どもが危険に遭遇しそうになると、もちろん回避させようとするでしょう。
つまずくと、転ばないように注意もします。それは親の一種の愛情であり、そのような関わりを持つことは決して悪いことではないでしょう。つまずいたこと、転んだことを叱責するよりは良い関りです。
ですが、あまりにも親が先回りし、転ばぬ先の杖を出しすぎると、子どもの伸びる能力の妨げになることもあります。
どんな人でも人生はつまずきがあります。転ばせないようにするのではなく、転んだときの起き上がり方を学ばせましょう。例えば、
- 寝坊
朝、寝坊をして、遅刻しそうになったので、学校まで送って行く。 - 忘れ物
忘れ物をしたから困るだろうと、学校へ届ける。 - きょうだいげんか
きょうだいで意見の相違から、言い合いになったので、間に入って止める。
このような状況のとき、すぐに助けの手を差し伸べるのではなく、少し見守ってみましょう。
そして、見守る中で、様子を見ながら、次のような関わりをしていけばよいでしょう。
・寝坊
親は、「朝、早く起きるには、夜早めに寝てみれば」と、話してみてください。
一度遅刻して、先生に注意されるなど、恥ずかしい思いをすれば、子どもの心の中に、「今度からは、寝坊しないでおこう」という気持ちが生じるはずです。
それを上手に受け止め、早い就寝を提案すればよいでしょう。
・忘れ物
忘れ物をしたら、友達に借りる、何かで代用できないか考えるでしょう。
そのとき、臨機応変に対応する力などが育っていきます。
そして、忘れ物をして、困った経験をすれば、次からは忘れないように気をつけようとするでしょう。
どうすれば忘れ物をしないようになるか、朝にチェックすることや、必要な持ち物を玄関に置くなど、アドバイスしてみましょう。
・きょうだいげんか
お互いの意見を言い合っている間に、折り合いのつけ方を覚えていくでしょう。そして親はその気づきをサポートしてください。
例えば、きょうだいでどちらが先におもちゃで遊ぶかを言い争っているとき、
「どうして、そのおもちゃで遊びたいの?」
「どちらかが、他のおもちゃじゃあ、ダメなの?」
と問いかけます。そしてお互いに考えさせ、
「順番に使うのはどうかしら?」
「一緒に遊べば?もっと楽しいかもしれないわよ」
と、言葉で気づきをサポートしてください。
そして、自分の主張を一部退けると、相手も少し主張を引き、お互いに納得する一致点を見出せること、つまり「折り合いをつける」ことを経験させ、そのことで味わう充足感や、清々しさを感じさせるとよいでしょう。
幼い頃の失敗やつまずきは、じゅうぶん取り返しがつきます。むしろ生きていくための学習と思って、見守れるといいですね。
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