「うちの子は落ち着きがなくて…」
「頑固だから、つい厳しく注意してしまう」
「引っ込み思案なのが心配…」
「どれだけ言っても聞かないときは、どうしたら?」
毎日、子どもに接していると、そんなマイナス面ばかりが気になってイライラしたりしませんか?
心の根っこを育みながら、短所だと思っていたところが長所となって伸びていく、具体的な関わり方を、家庭教育専門家の田宮由美先生にお聞きしたいと思います。
(1万年堂ライフ編集部)
「できていないこと」より、「できていること」に目を向ける
私たちは、ひとつのモノを見るとき、欠けているところがあると、「有る」ところより「無い」部分に目が行きます。
たとえば、茶碗やコップが欠けていると、その部分が目に付きます。色鉛筆やクレヨンでも、1本欠けていると、その無い色が気になるものです。
子どもを見るときもよく似ていて、「できていること」より「できていないこと」が目に付き、気に掛かることが多いのではなないでしょうか。
そしてその「できていないこと」も切り口を変えて見ると、まったく別の一面が見えることもあります。
たとえば同じモノでも、切り口によって全く違う形に見えることがあるでしょう。
円柱の茶筒を思い浮かべてください。上から見ると円、横から見ると長方形。斜めに切った切り口は、楕円形です。
同じ円柱形の茶筒でも、見る角度によっては、全く異なる見え方をするのです。
もし、子どもに欠点と感じるところがあっても、視点を変えて見ると、長所に見えてくることもあります。
次のような、子どもの短所と感じているところを長所に見ていく「心根育リフレーミング」法を、順番にお伝えしていきたいと思います。
- ①落ち着きがない
- ②頑固で言うことを聞かない
- ③引っ込み思案
- ④すぐに言い訳や口答えをする
リフレーミングとは、今までと違った角度からアプローチしたり、視点を変えたり、解釈を変えたりして、意図的に自分や相手の生き方をポジティブに捉えていくことです。
そしてその時、心の根っこ(自己肯定感)を育みながら、能力を伸ばしていく関わり方が「心根育リフレ―ミング」です。では具体的にどういった言葉を掛ければよいのでしょうか。
【①落ち着きがない】
「少しは落ち着きなさい!」と思わず言いたくなるような、じっとしていることのない子がいます。
日常生活に支障をきたしているわけではないのですが、物事にあまり集中せず、「もう少し落ち着いて取り組めば、成績も少しはよくなるのに…」と思うこともあるでしょう。
「すぐに他の事が気になり、集中力が続かない」
「どうして、こんなにも落ち着きがないのかしら?」
と嘆く親御さんもいらっしゃると思います。
「心根育」でリフレーミング
いつもソワソワして落ち着きのない子は、好奇心旺盛といえるでしょう。
何でも興味関心を持ち、幅広い視野を持っているのです。新しい物が次から次へと気になり、毎日、イキイキ、ワクワクしながら過ごしているのです。
「落ち着きがないタイプ」の能力を伸ばすには?
「楽しいことがいっぱいで、ジッとしていられないのね」
「毎日、ワクワク過ごしていて、ステキね」
などの声を掛けましょう。
そして何かに没頭しているときは、たとえ食事やお風呂の時間でも、臨機応変に対応し、続けさせましょう。
子どもが何かに取り組んでいるとき、いつも横から声を掛けていないかなど、親自身、時には振り返るのもよいでしょう。
また、部屋の中にモノが多すぎないかをチェックしたり、同じテーマに関して掘り下げて質問したりしてみるのもいいですね。
【②頑固で言うことを聞かない】
「本当にガンコな子!」と言いたくなる子もいるでしょう。
一度、言い出したら、何を言っても聞かない、「これでなきゃあ、いや!」「絶対、私は○○する」と頑なに自分の考えや思いを押し通そうとする子がいると思います。
その頑固さに親も、疲れ果てることがあります。
「心根育」でリフレーミング
頑固で言うことを聞かないのは、意志の強い子といえるでしょう。
何事もあきらめず、そして他人の意見に流されず、強い信念を持って歩み続ける素晴らしさを持っています。
「頑固タイプ」の能力を伸ばすには?
「周りに流されず、自分の思ったことをやり抜くのね」
「いつも信念をもって行動しているね」
などの声を掛けましょう。
そのうえで、相手と意見や考えの相違があったとき、自分の意見を一部引くことで、相手も一部退け、折り合いをつけると清々しい気持ちになることを体感させましょう。
子どもの頑固さにイライラし、怒りたくなることもあるかもしれませんが、頭ごなしに叱ったり、注意したりするのは逆効果です。
方法や解決策は一つではないこと、「なぜ、それでなければダメなのか」など、子どもの気持ちを丁寧に聴きながら、代替え案を親から出してみるのもいいでしょう。
また、いつも親の都合を優先させていないか、忙しさに紛れて、子どもの話をゆっくり聴く時間が取れていないかなど振り返ってみてください。
リラックスできる環境や、「お母さん、あなたを信じているから、任せるね」と、子どもの気持ちが和らぐような語りかけもしてみましょう。
【③引っ込み思案】
「少しは自分から意見を言ってみれば?」
「どうしてあなたは、いつも人の後ばかりついていくの?」
と、引っ込み思案の子どもに、ため息がでる場合もあるでしょう。
いつも友達の後ろからついていくタイプで、自分の意見を言うのも躊躇する子どもに、歯がゆく感じることがあるかもしれません。
「心根育」でリフレーミング
引っ込み思案な子どもは、温和で心優しく、相手の気持ちを尊重できる子といえるでしょう。
周囲の雰囲気を読み、仲間と歩調を合わせ、チームを大切にする面を持っています。
「引っ込み思案タイプ」の能力を伸ばすには?
「あなたはチームワークを大切にするね」
「お友達の気持ちを分かってあげられるあなたは、本当に心優しいわ」
などの声を掛けましょう。
家庭では、小さなことから役割を決めて任せてみるのもいいですね。
家族旅行の計画を、リーダー役になって立ててもらう、今晩のメニューを決めてもらうなど、小さなことから始めましょう。
そして、子どもが自分で決めて行動したことは、必ず認めてほめましょう。
「大丈夫!」「がんばって、あなたならできる」と、親が少し背中を押してみるのもいいですね。
「お母さんはいつも応援しているわ」というような、安心と勇気が湧く言葉を掛けてくださいね。
【④すぐに言い訳や口答えをする】
母「ゲームは1日1時間の約束でしょう?」
子「明日、急に出かけることになって、できなくなることもあるから、明日の分をしているんだ」
母「食べたあとの食器は、自分で流し台に運んでね」
子「お父さんの分は、いつもお母さんが運んでるんじゃない?」
子どもの言い訳や、揚げ足取り、屁理屈を日常の中で探すと、きりがないくらい出てくるでしょう。時には親が閉口してしまうくらい言い訳の上手な子もいます。
親としては「どうして、こんなにも言い訳や口答えが多いの?」と悩むこともあるでしょう。
「心根育」でリフレーミング
言い訳や屁理屈が多く、いつも口答えしてくる子どもは、物事を客観的に見ていて、頭の回転も早いといえるでしょう。
「口答えタイプ」の能力を伸ばすには?
「なるほどね~、言われてみれば、そのとおりね」
「うまく言うね」
などの声を掛けましょう。
「大人と子どもは違うでしょう!」「明日はどこにも出かける予定はありません!」などの正論で言い返したり、「屁理屈言わないの」「あなたはいつも言い訳ばかり」と、一方的に否定したりしないでください。
子どもは親の対応に、また言い返す言葉を考えます。そうすると親子げんかにまで発展してしまいます。
子どもの言い返してきた言葉に、「なるほどね~」と感心した様子で、いったんは受け止めましょう。そして、
「お母さんは、あなたが、○○してくれると嬉しいんだけどな!」
「あなたが△△したら、本当に助かるの」
という感じで、親の気持ちを伝える言い方を試してみてください。
実は、言い訳や屁理屈の多い子どもは、身近な人の言動から、その言い返し方を覚えているものです。親も理詰めで子どもに話すことがないか振り返ってみましょう。
親の言葉が子どもにレッテルを貼る
親が何気なく言う言葉、「ノロマ」「落ち着きがない」「すぐにふざける」など、それらは、親が言うことにより、子どもは「自分はノロマなんだ」「ワタシは落ち着きがない」「ボクはすぐふざける子なんだ」と思い込み、また周囲の人も、その子どもの性格を言葉どおりに見るようになります。
いわば、親の言葉が子どもにレッテルを貼っている、といえます。
「心根育」的な見方と声掛けで、子どものマイナスと思われる性格も、強みに変えていくことができます。
ぜひ実践してみてくださいね。
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