日本人なら知っておきたい 意訳で楽しむ古典シリーズ #39

  1. 人生

思わずニンマリする『枕草子』にかかれた「気まずいもの」〜ばつの悪いもの(枕草子 第122段)

キラキラしている清少納言

天気もニュースもどんよりと暗いこの頃。こんな時は、キラキラしている清少納言に会いたくなりますね。

清少納言は、人の心の機微を、ありのままに、感じたままに、『枕草子』に記しました。それは、千年経った今でも、「そうそう」「あるある」と共感し、思わずニンマリしてしまうものなんです。

例えば、第122段の「はしたなきもの」。
木村耕一さんの意訳では、「ばつの悪いもの」と題されています。
清少納言さんの、ばつの悪いものって何ですか?

他人が呼ばれたのに、勘違いして自分が出ていくと、気まずいですよね

思わずニンマリする『枕草子』にかかれた「気まずいもの」〜ばつの悪いもの(枕草子 第122段)の画像1

(意訳)
ばつの悪いもの。

他の人が呼ばれたのに、自分のことだと勘違いして、出ていった時。それが、何か、物をもらえる時だったら、なおさら気まずい思いをします。

どこかで他人の悪口を言ったことを、幼い子供が聞いて覚えていて、その人の前で、その悪口を言い出してしまった時。

悲しい話を聞いて、思わず泣いてしまうのが当たり前の時に、「そうですね。本当に悲しいですね」と口では言いながら、涙が全く出てこないのは、本当に、間の悪い思いがします。わざと泣き顔を作って、暗い表情をするのですが、どうにもなりません。

そのくせ、素晴らしいことを見たり、聞いたりすると、自然と、涙が、後から後から出てきて困ることがあります。

(『こころきらきら枕草子』木村耕一 著 イラスト 黒澤葵)

木村耕一さん、ありがとうございました。清少納言さんの率直さに、スカッと心が晴れる感じがします。

イマドキのばつの悪いもの

少し恥ずかしいですが、イマドキの「あるある」を清少納言風に書き留めてみました。

イマドキのばつの悪いもの。

ビンゴゲームで、「ビンゴ!」と自信いっぱいに叫んで、商品を受け取りに行ったら、ビンゴになっていなかった時。

立ち食いそば屋で、おろしそばの食券を出して、間もなく、「おろしそばのお客さま〜」と言われたので、取りにいこうとしたら、前の人の注文だった時。

病院の診察室で、待っていると、「〇〇さま」と名字を呼ばれたので、「はい」と立つと、「〇〇〇〇さま」とフルネームで呼ばれて、私じゃなかった時。

映画を観にいって、ある場面で、隣の友達は、涙を流して鼻をすすっているのに、自分は泣けない時。

反対に、自分は感動して涙が止まらないのに、隣の友達は、平然としている時も、間の悪い感じがします。

ある時、吉川英治の『三国志』にはまり、通勤電車で読みふけっていました。
劉玄徳の仲間の一人、関羽が死ぬ所では、満員電車にも関わらず、涙が後から後から出てきて、困りました。

どうでしょう、清少納言さん。
現代でも、『枕草子』に書かれた「あるある」が、たくさんありますよ。
千年前に書かれた古典で共感できるって、とても不思議ですね。
キラキラしている清少納言さんと、友達になれた気持ちになりました。


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