「短い夏休みなのに、全然宿題をやろうとしない…」
「このままだと、新学期からの成績が心配…」
子どもがのびのびと勉強に取り組めるようになるには、どうしたらいいでしょう?
親に負担がかかりがちな家庭学習。
「心の根っこ」を大事にすれば、親も子も楽しく取り組めるに違いありません。
悩める勉強について、家庭教育専門家の田宮由美先生にお聞きしたいと思います。
(1万年堂ライフ編集部)
第5章 成績がアップする「心根育」サポート法 学習編
「あの子は勉強ができるから」
「○○君は、頭がいいから」
などの会話を耳にすることがあります。
能力は持って生まれたもので、もともと高い低いが決まっていると思われている人もいるかもしれません。
ですが、人には、秘められた能力(潜在能力)と、発揮される能力(顕在能力)があるといわれています。
そして顕在能力をいかに引き出すかで、その人の能力の高い低いは決まっていくそうです。
このことは、心理学者のフロイトや脳科学者のペンフィールドらが詳しく唱えていますが、その潜在能力と顕在能力の割合が、9:1や、8:2と、説はいろいろあり、詳細な発揮指数は分かりません。
ですが、私から見れば、「本来持っている能力の多くが使われないでいる」ということに変わりないと思います。
子どもの能力を考えたとき、秘められた潜在能力をいかに引き出すかが、ポイントになってくるといえるでしょう。
試験の点数や成績を上げることが人生の目標ではありませんが、勉強ができると、将来の進む道の選択肢は広がるでしょう。そして世の中を理解することにも役立ちます。
そういった意味でも、子どもの学力は、親の気になるところですね。
では、子どもの潜在能力を引き出し、能力を高めるには、どのようにすればよいのでしょうか。
このとき、大切なことは、能力のみを高めるのではなく、「心の根っこ」を育みながら、能力を高める関わりをすることです。
子どもの「心の根っこ」を育みながら、学習面に特化した能力の引き出し方「心根育学習サポート法」を具体的にお伝えします。
(1)勉強は「便利で生活に役立つこと」から教える
子どもの勉強は、まずはその目的と、その学習を習得すれば、どういった点で、日常生活が便利になるか、どのように使えば、役に立つかなど、その便利さから指導するほうがよいでしょう。
ただやみくもに、何かを覚えたり、公式や解き方を暗記したりするだけでは、身にはつきにくいものです。
それを覚えれば、日常生活のどういった場面で便利になるか、そこから説明しましょう。
たとえば、
算数では、足し算、引き算ができれば、お買い物をするとき、お釣りの計算ができます。
掛け算を覚えれば、きちんと同じ数だけ並んだ物を数える時、早いです。
割り算は、物を均等に分ける時、便利ですね。
キャンデイのような固形のものを分ける時から、ジュースのような液体物を分ける時など、さまざまな場面があるでしょう。
理科は、見通しを持って実験や観察を行なうことで、物事を予想したり、推測したりするとき、役立ちます。
社会、生活科では、地域に密着した生活、職業への理解、災害のことなど、どれも生活に直接役立つことばかりです。
国語では、読解力は本を読み解く力になります。あらゆる分野の勉強をする根本になり、物語や小説を読めば、登場人物の気持ちを理解する力が養われ、また社会に出たとき、契約書などを交わすときにも役立ちます。
このように、「その勉強をすることで、便利になること」「生活の中で役立つ場面」を説明することで、子どもの学びはぐっと伸びていきます。
親は子どもに勉強させたい一心から、「勉強しなさい」や「あなたのために言ってるのよ」と、つい言ってしまいがちですが、命令されたり、恩着せがましく言われたりするほど、子どもにとって、やる気が失せることはありません。
それだけでなく、親への反発心が生じてくることもあるでしょう。
そうではなく、「この勉強をすれば、こんなに便利で、こういう時に役立つよ」と伝えてください。
(2)何度も繰り返すこと(反復)で、学習は身につく
今、習っている漢字は書ける、だけど前の学年で習った漢字をいきなり問われると書けない。
今、習っている算数の問題は解ける、だけど前の単元の問題は間違う。
このようなことは、ないでしょうか。
その時は「書ける」「分かる」「解ける」で、テストの点数も良く、問題なく感じるでしょう。
ですが、学習は定着させることが大切です。定着していなければ、学習の基礎の部分が弱く、学年が上がっていくにつれて、学力は不安定になっていくでしょう。
その結果、今までのように理解ができず、テストの点数が下がり、勉強が嫌になっていく、というケースが非常に多いように思います。
では学習を定着させるには、どのような方法が良いかといいますと、やはり「反復」が効果的でしょう。
その場合、親は「繰り返し取り組みなさい」と言うのではなく、その繰り返しが楽しくなるような言葉がけをしてください。
たとえば、
「こんなに難しいこと、習っているのね!お母さんにも教えて」
「今度、漢字をいっぱい使って、おばあちゃんにお手紙を書きましょう。きっと驚くわよ」
のように声がけをすると、その学習が楽しくなり、集中力も上がり、さらに定着しやすくなります。
このような好ましい循環はすぐにはできませんが、日々の生活の中で、親が子どものテストの結果だけに関心を持つのではなく、習っている学習内容に興味を持てば、反復をサポートする言葉が多く出てくることでしょう。
(3)リビング学習は効果ある?大切なのは、各家庭にあった学習環境
「リビング学習をした子は伸びる」「中学受験を成功した家庭はリビング学習を行っていた」など、「リビング学習が良い」という言葉が、一時、メディアでも取り上げられていました。
確かに、リビングにいれば子どもが勉強をしている様子が目に入ります。子どもに分からないところがあれば、すぐに教えることもでき、また励ましの言葉もかけられます。
勉強している様子を見守ることができるので、リビング学習は良いと思います。
ですが、リビングにゲームやマンガ本などの気が散るおもちゃは置かないなど、配慮も必要です。
そして、幼い弟や妹がいて、そばで騒いでいる、お年寄りが居て、いつもテレビを見ている、人の出入りが多いなどの事情があれば、違ってきます。
基本的にリビング学習はよいと思いますが、子どもが勉強に集中できる環境であるかどうかを判断し、各家庭の状況にあった勉強場所を考えるとよいでしょう。
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