「抱き癖」がつくって本当?
そもそも「抱き癖」といわれているのは、一体何でしょうか。
泣くたびに、ちゃんと抱っこしてもらえた赤ちゃんは、「不安なときは、泣けばいいんだ」「泣いたらすぐに来てくれる。抱っこしてくれる」と安心し、保護者への信頼感を育んでいきます。
このとき、赤ちゃんからのサインが増え、一時的に泣くことが多くなる場合があります。
それが母親の目には、「すぐに抱っこするから、よく泣く子になったのでは?」と、まるで癖がついたかのように思えてしまうのです。
それをもし抱き癖というなら、つけて心配ということは決してありません。
「思い切り泣く」「それを受け止め、抱っこしてもらう」という対応が、子どもの心の成長にとって、とても大切だからです。
泣いたら抱っこのプロセスを繰り返すことが大切
これについて、精神科医・明橋大二先生の『子育てハッピーアドバイス』から引用してみたいと思います
1.思いっきり泣く
2.抱っこしてもらい、ヨシヨシしてもらう
3.泣きやむこの一連のプロセスを何度も何度も繰り返すことで、自分の感情を表現してもいいんだ、それをちゃんと受け止めてもらえるんだ、と、自己肯定感を育むことになります。
そうすると、もう少し大きくなれば、逆にたくましくなって、しだいに、ちょっとしたことでは泣かない子どもになっていきます。
出典 明橋大二(2006).「Q4 泣き声を聞くとイライラします。どうすれば強い子になるでしょうか」『子育てハッピーアドバイス3』1万年堂出版
抱き癖を問題にするのは、大人中心の育児法
「抱き癖はよくない」という考え方は、昭和30年代に日本じゅうに広まりました。当時の育児書のベストセラー『スポック博士の育児書』(ベンジャミン=スポック・マイケル=B=ローゼンバーグ著)といわれています。
この育児書は、「大人中心の育児法」といわれ、大人の都合に子どもを合わせていく考え方が採られています。
しかしその後、乳幼児の心の世界への理解が進み、抱き癖は心配ない、むしろ大いに抱っこすべき、という考え方が、外国でも日本でも主流になっていきます。
それを知らない世代の中で、いまだに「抱き癖はよくない」という間違った考えを持ってしまっている人がいるようです。
抱っこしないことが続くと…「サイレント・ベビー」とは
泣いても抱っこしないことが続くと、どうなるでしょうか。
赤ちゃんは、あるときから泣かなくなります。そして、無表情になります。
これは、甘えたい気持ちを、自分の心の中から締め出してしまった状態です。そして、悲しみや怒りを、深く無意識の中に潜行させることになります。いわゆるサイレント・ベビーです。
赤ちゃんがあきらめて、泣いたり、声を出して笑ったり、喜んだりといったサインが乏しくなったもので、とても心配な状態です。表面上は喜怒哀楽が少なく、手がかからないので良い子に見えますが、心のダメージは相当大きくなっています。
このまま成長すると、いずれさまざまな心のトラブルとして、表面化してきます。
いずれにせよ、スキンシップや抱っこというのが、赤ちゃんの時期には、最も大切です。
たとえサイレント・ベビーになってしまった赤ちゃんでも、たっぷり抱いたりあやしたりすることによって、少しずつ感情の交流が芽生え、赤ちゃんからのサインも豊かになっていきます。
まとめ
- 抱っこというのは、赤ちゃんにとって、すごく気持ちのいいこと。放っておくよりも、ずっと早く泣き止ませる力がある。
- 何より、赤ちゃんは抱っこされることによって、「自分は大切にされている」という、自己肯定感が高まる。
- だから、その赤ちゃんとお母さんの気持ちに合わせ、抱っこは大いにやったほうがいい。