「親」という字は
10月8日は、「木の日」なんだそうです。
十月八日、「十」と「八」を組み合わせると「木」になるからだとか。
なるほど〜。漢字を分解したり、成り立ち(諸説あり)を知るのは面白いですよね。
「親」という字は、「木」の上に「立」って「見」ると書きます。
この中には、子を思う親心が込められているようですね。
今回は、そんな「親のこころ」について、木村耕一さんにお聞きしました。
(『新装版 親のこころ2』の内容から掲載します)
子供を心配する親心
「木」の上に「立」って「見」ると書くと「親」。
例えば、子供の帰りが遅いと、親は非常に心配になります。
「学校で何かあったのか?」
「まさか、交通事故に遭ったのでは?」
時間がたつにつれて、悪いほうへ悪いほうへと考えてしまうのです。
とても家の中で、じっとしておれなくなり、玄関で背伸びをして、「まだか、まだか」と待ち続けます。
もし、近くに木があれば、少しでも高い所へ登って、我が子を捜したい心境になるものです。
「親」の一字は、我が子の安否を気づかう、切ないまでの親心、そのものなんですね。
そんな「親心」が伝えられている、中国の昔話を紹介しましょう。
我が子の願いをかなえてやりたい
昔、中国の揚子江の上流に、母と子の二人で暮らす親子がいました。
息子は成長するにつれ、
「都へ行って、学問に励み、出世したい」
と夢みるようになりました。
しかし、家に、そんな余裕はありません。母親は、我が子の願いをかなえてやりたいと、方々から借金して学費を工面してくれました。
「この母を、不幸にしてはならない」
彼は、固く誓いました。
旅立ちの日
いよいよ都へ旅立つ日、揚子江の岸辺は、激励に集まった人々であふれました。片田舎から中央の大学へ若者を送り出すことは村の誉れだったのです。
彼が乗った船が岸を離れると、村人はさっさと帰ってしまいます。
ただ一人、母親だけは、いつまでも見送っていました。
岸から船が見えなくなると、今度は近くの山へ登りました。頂上の木の株の上に立ち、船の姿が完全に消えるまで、我が子の無事を念じ続けるのでありました。
いつも同じ、母からの返事
都に着いた息子は、一生懸命、勉学に励みました。
彼は、親を安心させようと、日常の様子や大学の成績を手紙に書いて、毎週、故郷へ送っていました。
母親からの返事は、いつも、
「体は大丈夫か。早く帰ってきておくれ」
と短く書かれているだけでした。
親の苦労を知っている彼は、人一倍、努力しました。その結果、大学を首席で卒業。役所へ入っても、異例の早さで出世を果たします。そして、ついに故郷の長官に就任し、村へ帰れることになったのです。
母親の喜びは、例えようがありません。息子の顔を早く見たい一心で、船が到着する7日前から、揚子江の岸へ行き、指折り数えて待っていました。
「無事でよかった。元気でよかった」
いよいよ、その日が来ました。
母親は夜明けとともに近くの山へ駆け登ります。
頂上の木の株の上に立ち、我が子が乗った船が無事に到着することを念じながら、じっと川下を見つめています。
昼過ぎになって、ようやく小さな船影が現れてきました。母親は、山を下り、岸辺へ急ぎました。村人たちも大勢集まってきています。
立派になった彼を迎えて、
「偉くなったのう。村一番の出世だ」
と、人々の大歓声がこだまします。
しかし、母親は、
「無事でよかった。元気でよかった」
と、ただ涙を流して喜ぶばかりでした。
村人は、彼が出世したからこそ祝ってくれたのです。
しかし、母親にとって、子供が出世しようが、夢破れて帰ってこようが関係ありません。元気でいてくれることが、一番の願いなのです。たとえ、大学の成績が悪く、落第して帰省したとしても、同じように山頂の木の株に立って、息子を待ちわびてくれるでしょう。
(イラスト 黒澤葵)
親が見守ってくれたからこそ
木村耕一さん、ありがとうございました。
親って本当にありがたいな〜と思います。
我が子の願いを叶えようと、お金、食事、住居、洋服など、さまざまな面倒を見てくれます。
それなのに、結果はどうであっても、子供を温かく受け入れてくれます。
「元気でいてくれればいい、あとのことは、なんとでもなるよ」というように。
ありがとうございます。親が見守ってくれていたからこそ、ここまで頑張れたんだな、乗り越えられたんだな、と思い出し、目頭が熱くなってきました。
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