あなたは普段、どれくらいの自信を持てているでしょうか。
自信を失えば、行動する気力も出てこなくなり、自分の言いたいことも言えずに、生きづらさを感じかねないでしょう。
反対に、適度な自信を持つことができれば、グッと生きやすくなります。
そんな安定した自信を持てるようになるにはどうすればいいのか、トレーニング法をご紹介しています。
前回は、自信を構成する3要素(自己評価・行動・自己主張)の中の「行動」するためのトレーニング法をお話ししました。
やる気を出すために目標を立てることは大切ですが、あまりに高い目標を設定すれば、行動してもなかなか目標を達成できずに、自己評価が低くなるかもしれません。
そこで短期間で実現できそうな、身近な目標を設定することが勧められています。
また行動にはつきものである失敗とうまく付き合うことで、自己評価が傷つくことを防ぎ、失敗を成長の糧へと変えられます。
それには、失敗に対するネガティブな見方を変えることです。失敗の良い面を見られれば、失敗を受け入れることができる、ということをお話ししました。
前回の記事はこちら
今回は、「自己主張」するためのトレーニング法をお話ししていきます(今回は前編です)。
「自己主張」するためのトレーニング法
自信を構成する要素の3つ目が自己主張です。自己主張ができるようになることで、自己評価も高まり、行動もしやすくなり、自信そのものもつけることができます。
その自己主張のトレーニング法として2つをご紹介します。
トレーニング法① 自己主張の必要性を知る
そもそもなぜ自己主張するのが大切なのか、その必要性を知っていただきたいと思います。
自己主張すなわち自分の気持ちや考えを言わなければ、まわりの人は、そもそもあなたがどんなことを考えているのかがわかりません。そのため、あなたの気持ちや都合を尊重しなくなる恐れがあります。
あなたの考えや気持ちを確認せず、事が進んでいくようになるかもしれません。
さらに、「この人は何も意見を言わないから大丈夫だろう」と、急な残業を押しつけたり、みんながやりたくないようなことをやらせたりすることも出てくるでしょう。
何を頼んでもいい人、周囲にとって都合のいい人になりかねません。
そうなると、あなたは「私はみんなから、一段低く見られているんだ」と思い、と自己評価を下げることになってしまうのです。
そうして自己評価が下がれば、ますます自己主張ができなくなる、という悪循環に陥ります。
この悪いサイクルから抜け出すには、思い切って自己主張をすることです。
一度でもいいので自己主張すると、2回目、3回目はもっと簡単に言うべきことが言えるようになり、よいサイクルへと入っていけます。
まずそのことを念頭に置いていただければと思います。
トレーニング法② 自己主張の4つのステップを実践する
では適切に自己主張するには具体的にどうすればいいのかについて、
フランスの精神科医 フレデリック・ファンジェ氏は、自己主張するための4つのステップを教えられています。
今回のそのうちの、前の2つのステップをご紹介します。
ステップ① 自分の要求や希望を伝えなかった時に起こる、よくない状況を想像する
自己主張といっても、その内容はいろいろありますね。
たとえば、
「友人に、自分の子どもの面倒を見てもらう」
「仕事でつらいことがあったときに、夫に話を聞いてもらう」
など、助けや協力を求めること、
「上司に昇給を要求する」といった、自分の利益を守るための主張、
「友人が、いいよ、と言ってくれたことに対して、それが本心かどうかを聞いてみる」という、相手の気持ちをたずねることもあるでしょう。
自信が持てないでいると、これらのことを言いたいと思っても、「やっぱり、やめておこう」という思いが先行し、結局、実践できなくなりがちです。
そういうときはまず、自分の要求や希望を伝えなかった時に、どんなよくないことが起こるのかを想像してみましょう。
- 友人に自分の子どもの面倒を見てもらうのを頼まなかったら?
→出かけることができず、ずっと楽しみにしていた予定を過ごせない - 上司に昇給を要求しなかったら?
→「どうして自分の会社への貢献を評価してくれないのか」という不満を抱えたまま仕事をすることになる - 友人に「いいよ」と言ってくれたことが、本心かどうかを聞かなったらどうなるか?
→「もしかしたら友人は本当は別のことがしたいのに、無理に私に合わせているのかもしれない」と、罪悪感に悩まされるかもしれない。これでは一緒に過ごしても、心から楽しめない
このように「自己主張できないために、自分が困った状況に陥っている」ところを想像することで、「このままではいけない、自己主張しよう」という気持ちになれるでしょう。
こうした「先を想像することで、回避しようとしていた行動を取れるようにする」ことは、「論理的帰結」という心理技法として教えられています。
自己主張のみならず、先延ばしにしていることを実行に移すときに使えるテクニックです。
ステップ② 自分の要求や希望を伝えるのを邪魔するネガティブな考えを追い払う
あなたが、いざ自分の希望や要求を伝えようとすると、心の中にネガティブな考えが浮かんできて、伝えることにブレーキがかかることもあります。
自己主張の邪魔をするネガティブな考えとは、たとえば、
- 自分の希望や要求を伝えるのは、自分勝手な人間のすることだ
- 自己主張すれば、相手の迷惑になる
- そんな要求はとうてい認めてもらえない
- 相手の気持ちを確かめたら、相手との関係がかえって気まずくなるかもしれない
というものです。
こういう考えにとらわれると、心が折れてしまいかねません。そのため自己主張がきちんとできるようになるには、こういったネガティブな考えを追い払う必要があります。
それには自己主張のポジティブな面を見ることです。よい面に着目すれば、ネガティブな考えが追い払われ、ポジティブな考えへと置き換わり、自己主張しようという意欲が再び高まります。
脳科学の研究によって、人間は一度に注目できる範囲に限界があるとわかっているそうです。ゆえにポジティブなことを考えると、それまで頭を占めていた心配事や不安な考えは意識の外に押し出されるのですね。
では、先に挙げたネガティブな考えをどう捉え直せば、ポジティブな考えへと置き換えられるのでしょうか。
- 自分の希望や要求を伝えるのは、自分勝手な人間のすることだ
→誰にでも、自分の希望や要求を伝える権利がある。自己主張しても、自分勝手な人間とは思われない - 自己主張すれば、相手の迷惑になる
→迷惑に感じるかどうかは、相手にたずねてみればいい - そんな要求はとうてい認めてもらえない
→確かに、要求はいつも認められるわけではない。でもダメだったらダメで、あきらめればいい。言いたいことがあるのに黙って悶々しているより、実際に要求をしてみたほうが納得できる - 相手の気持ちを確かめたりしたら、相手との関係が気まずくなるかもしれない
→気持ちを確かめてもらえたら、相手だって「私のことを気にかけてくれている」と思って嬉しいだろうし、こちらも安心だ
このようにネガティブな考えに反論し、自己主張のよい面に注目すれば、もっとポジティブな考えへと置き換わり、自己主張に踏み出す勇気を持つことができるでしょう。
否定的な考えに反論して、もっと柔軟な考えへと変化させ、行動を起こしやすくすることは、自己主張に限らずに適用できます。
こちらもぜひ日常で実践していただければと思います。
次回は、「自己主張の4つのステップ」の、残りの2ステップをお話ししていきます。
まとめ
- 自信を構成する要素の3つ目が「自己主張」です。自己主張することで自己評価も上がり、行動もしやすくなります
- 自己主張するのにまず大切なのが、自己主張の必要性を知ることです。自分の気持ちや意見を伝えなければ、周囲にとって都合のいいだけの人になりかねません。そうなれば自己評価も悪くなります。一度でも自己主張ができれば、自己評価のよいサイクルに入っていけます
- 「自己主張の4つのステップ」のうち、今回は2つ目のステップまでをご紹介しました
- 自分の要求や希望を伝えなかった時に起こる、よくない状況を想像する
-自己主張しなかったら、どんな困った状況になるのかを想像することで、「このままではいけない、自己主張しよう」という気持ちになれます - 自分の要求や希望を伝えるのを邪魔するネガティブな考えを追い払う
-自己主張にブレーキをかけるネガティブな思いに反論し、ポジティブな考えに置き換えることで、自己主張しようという意欲が再び湧いてきます
- 自分の要求や希望を伝えなかった時に起こる、よくない状況を想像する
【参考文献】
『自信をもてない人のための心理学』(フレデリック・ファンジェ著 紀伊國屋書店)
シリーズ|安定した自信が持てるようになる心理学