夢に向かって
1月28日は、白瀬矗(しらせのぶ)率いる南極探検隊が、「大和雪原」に到達した日です。
明治45年のことでした。
子供の頃、映画「南極物語」を見て、自然の厳しさに驚きました。そんな過酷な環境の中でも、犬のタロとジロが生きていた姿に感動しましたね。
南極探検という夢に向かって、白瀬さんは、どのように進んでいったのか、木村耕一さんにお聞きしました。
──白瀬さんは、どうして、南極を目指すようになったのでしょうか?
木村:
白瀬矗の少年時代には、北極点へも、南極点へも、まだ、誰も行ったことがありませんでした。
世界中の探検家が一番乗りを競っていたのです。
白瀬少年は、12歳の時に「北極探検をしたい」と決意します。
しかし、目標達成へ向け努力している途中で、アメリカの探検家が先に北極点へ到達してしまいます。
その時、白瀬は、夢を捨てずに、北極よりも、もっと寒さが厳しい南極へ向かう決意をします。
常に前向きに、夢に向かって突き進んだのですね。
──先を越されたら、心が折れてしまう人が多いと思います。気持ちの切り替えが潔くて、前向きな人だったんですね。
悪口を言われても、笑われても、クヨクヨしない
──白瀬さんが、南極探検の計画を発表した時には、多くの人が、その勇気に感動し、拍手して応援してくれたそうですね。
木村:
そうです。すぐに後援会が組織され、新聞社も協力し、探検への募金が呼びかけられました。
ところが、白瀬が、わずか200トンの船で出発することが分かると、人々の反応が、ガラリと変わります。
──えっ、どんな反応になったのでしょうか。
木村:
「そんな小さな船では無理だ」
「すぐに沈没して、笑われるぞ」
と、さんざん悪口を言われました。
そして新聞社は、支援を断ってきたのです。
──こんなことを言われると、「もう、イヤだ」と投げ出したくなりますね。
木村:
ところが、白瀬は違いました。こう言っています。
「何とでも言えばいい。
ほめられても、悪口を言われても、そんなものは、山にかかる雲か霧のようなものだ。
山が、どっしりと自信を持って構えていれば、どれだけ雲や霧が出てきても何ともない。
やがて晴れる時が来るさ」
──かっこいいですね。
木村:
私たちも、誰かに笑われたり、悪口を言われたりしても、クヨクヨしなくてもいいのです。
そんなものは、雲や霧だと思えばいいのです。やがて、風に吹かれて消えていくのですから……。
大切なのは、「これが正しい」「これをやり遂げたい」と思うことを、自分で考え、自分で責任を持ち、努力して進んでいくことだと思います。
雲や霧は、やがて消えていく
木村さん、ありがとうございました。
白瀬さんの言葉に、ほれぼれしました。
ほめられても、悪口を言われても、それは、山にかかる雲や霧のようなもので、やがて消えていく。
ほめられると、すぐに舞い上がって有頂天になり、悪口言われると、落ち込んで、いじける私とは正反対です。
時間が経てば消えてゆく雲や霧に振り回されて、夢を見失ってしまったら、もったいないですね。
一度きりの人生、山のように、どっしりと構えて、生きてゆきたいなと思います。
白瀬矗のエピソードは、『人生の先達に学ぶ まっすぐな生き方』に掲載されています。
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