手紙のやりとり
2月18日は、エアメールの日。由来は、明治44年のこの日、世界で初めて、飛行機によって郵便が配達されたのだとか。
最近は、海外の人とも、メールやLINEでやりとりができるようになりました。
時代の流れは速いですね。
手段は変わっても、そこには人と人との心のやりとりがあるようです。
『徒然草』に、兼好さんが忘れられないという、ある女性との手紙のやりとりが記されていました。
木村さんの意訳でどうぞ。
「わからず屋の、おっしゃることなんか、聞けるものですか」
(意訳)
朝から、珍しく雪が降り出した日のことです。
ある女性に、急ぎの用事があったので、用件だけ書いて手紙を持っていかせました。
すると、まもなく届いた返書には、
「今朝の雪のことに、一言も触れていらっしゃいませんね。
そんな風流を理解しないような、わからず屋の、おっしゃることなんか、聞けるものですか。
本当に、情けないお心ですこと。がっかりしました」
と書かれていました。まったくそのとおりで、実に心に残る手紙でした。
その人は、もう亡くなっているので、こんなちょっとしたことも忘れることができないのです。
(原文)
此の雪いかが見ると一筆のせ給わぬほどの、ひがひがしからん人の仰らるること、聞き入るべきかは。かえすがえすくちおしきみ心なり。(第31段)
(『こころ彩る徒然草』木村耕一著 イラスト 黒澤葵より)
忘れられない手紙
木村さん、ありがとうございました。
兼好さんと、ある女性とのやりとりは、簡潔に書かれていますが、それ故に、切ない気持ちがしてきます。
用件だけ書いて、手紙を送る……。
時候の挨拶などを省いても、この人なら、分かるだろうという「親しみ」を感じますね。
しかし返書は、「今朝の雪のことを一言も触れていない、わからず屋」とピシリ。
女性は今朝の珍しい雪のことを、兼好さんと語り合いたかった、共有したかったのでしょう。
お互いを認め合い「この人ならば」と期待したからこそ、生じたすれ違い。
それを、遠慮なく「がっかりした」と書いてくる、また「まったく、そのとおり」と素直に受け取れる関係は、ステキだなと思いました。
しかし、その女性は、亡くなってしまった……。
ドキリとしました。
これから先も、まだまだ手紙のやりとりができると思うから「今回くらい、いいだろう」と、ぞんざいになってしまいがち。
この手紙が最後になるかもしれないから、後悔しないように、1回、1回を大切に伝えていきたいと思いました。
兼好さん、大事なことを教えてくれて、ありがとうございました。
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