心がきらめく仏教のことば #7

  1. 仏教

意志の弱さを貪欲で克服!?煩悩との上手な付き合い方

使い方でイメージが変わる「貪欲」

今回のテーマは「貪欲」です。
「どんよく」と一般的には読むと思いますが、仏教では「とんよく」と読みます。

貪欲というと「貪欲に学ぶ」という言葉のように「夢中になってすること」というイメージがあるかもしれません。
一方で、貪欲の「貪」はむさぼるという字ですから、「むさぼり欲する」という意味で、お金なんかに執着している汚いイメージもありますね。

同じ「貪欲」なのに、このようなイメージの違いはどこからくるのでしょうか?
それは同じ欲するでも、何を欲するかによって変わってくるということでしょう。

知識や技術の習得に対してとても意欲的であれば、向上心があってすばらしいことです。
反対に、人を蹴落としてでも自分さえお金や地位を手にすることができればとむさぼり欲する人もあります。
そうすると、傷つく人、嫌な思いをする人も多く出てくるでしょうから困りものです。

「欲」と聞くと何だか悪いイメージがあるかもしれませんが、その欲の心とどうつきあっていくかによって、よくも悪くもなると言えるでしょう。
この「貪欲」の実態を知って、そして上手につきあっていく道を目指したいものです。

続けられないのは意志が弱いから?

しばしばこんな悩みを聞きます。

「ダイエットしようと始めたはいいけれど、つらくなって断念した」
「ついつい買い物でムダ遣いしてしまい、なかなか節約できない」
「資格の勉強をしようと思っているが、ダラダラしてしまって、なかなか進まない」

そして「どうして私って決めたことを続けられないのだろう…。意思が弱いのかな?」
そんな声をよく耳にします。
「続けられないのはわたしが特別、意志が弱いから」なのでしょうか?

いいえ、それは違います。
仏教では、すべての人間は煩悩を離れて生きれないと教えられるからです。

貪欲は煩悩の一つ

煩悩とは、私達を悩ます心のことで全部で108あるとも言われます。
その中の代表が「貪欲」なのです。

中でも代表的な欲の心を仏教では「五欲」(ごよく)と教えられます。
食欲、財欲、色欲、名誉欲、睡眠欲の5つです。

食欲は、美味しいものが食べたい、飲みたいという欲です。
財欲は、お金が欲しい、アクセサリーが欲しい、服が欲しい、バックが欲しい、少しでも安く買いたい、損したくないという欲です。
色欲は、異性を求める欲です。
名誉欲は、誉められたい、認められたい、かっこいい、かわいい、きれいだと言われたい、悪く言われたくないという欲です。
睡眠欲は、寝むたい、楽がしたいという欲です。

朝から晩まで欲に動かされている

考えてみると私達は朝から晩までこれらの欲に振り回されているのではないでしょうか。

朝目覚ましが鳴っては、眠たいという睡眠欲。
起きてきて、鏡の前で洗顔や身支度を整えるのは名誉欲。
朝食を食べるのは食欲。

仕事するのは、生活の糧を得るため財欲や少しでも認められたいという名誉欲。
昼になれば、また食欲。
昼過ぎに眠くなるのは睡眠欲。
仕事の後、コンパに行ったり、恋人に会うのは色欲。

などなど、いつも欲に突き動かされているのです。

心の葛藤は「欲の綱引き」

ときどき、漫画などで善い心と悪い心が葛藤するという場面が描かれます。
主人公の女の子が学校から家に帰ると、台所に高そうなお菓子が置いてある。
しかも母親はいない。

小腹が空いている女の子は、しめしめと思い、そのお菓子を食べようとします。
その時、天使の格好をした自分が心に現れて、
「ダメよ、お母さんがいないのに食べたら。きっと後で叱られるわよ」といさめるのです。

ところが、今度は悪魔みたいな格好をした自分が現れて、そそのかします。
「何言ってるの?お腹が減ってるんだし、この家のものなんだから食べてもいいじゃない」と。

そしてどうしようか悩むというシーンを時々見かけます。

傍目には、良い心と悪い心が戦っているように見えますね。
ところが仏教からいうと、ただ単にどの欲を満たそうかと悩んでいるだけなのです。

食べてしまいなよと思うのは、食欲です。
一方で、食べたらお母さんから何て言われるだろうと気にしているのは名誉欲でしょう。

食欲と名誉欲が綱引きをしているだけで、いずれにしても欲のために悩んでいるのだと仏教では教えています。
悩んでいるのもすべて欲の綱引きなので、その欲をうまく利用することを考えていくことが大事ではないでしょうか。

意思が弱くて続けられないことも、みんな貪欲があるので、ついつい目の前の誘惑に負けてしまう。
それが人間なのです。
特別、自分だけ意思が弱く続けられないのではなくて、みんなそういうものなのです。

コツコツ続けられるのはなぜ?

そんな中、目の前の誘惑に負けずにコツコツ続けられる人もあります。
それはどうしてなのでしょうか?

とくに続けられない理由として考えられるのが、楽がしたい、怠けたい、という欲の心でしょう。
誰しもある気持ちですので、ほっておくとそうなってしまいます。
ですのでやる気や気合だけでどうにかなるものではありません。

すぐに怠けてしまう、楽してしまう、貪欲いっぱいの自分だと自覚して工夫していくことが大切です。

欲をうまく利用する方法

健康のため、ジョギングをしようという場合でもなかなか続かないことがあります。
そんな場合に、一緒に走る人を見つけて走っている人もいます。

そうすると、サボるとみんなにどう思われるかなという名誉欲があり、続けやすくなるかもしれません。
またみんな頑張ってるんだから、自分も頑張らないとという思いも出てきます。
名誉欲を上手く利用しているといえるでしょう。

ダイエットでしたら、高いお金を払ってジムに通う人もあります。
やっぱり高いお金を払うと人間、もとをとらなければという思いが強くなり、続けられるからです。
楽したいなという欲に勝る、損したくないという欲があれば続けやすくなるということでしょう。

また節約であれば、ずっとガマンし続けるのは、精神的にも大変ですし長続きしなくなってしまいます。
目標の節約ができたら、自分の好きなものを食べてもいいとか好きな映画や本を買ってもいいとか、ちょっとしたご褒美を原動力にしている人もあります。
もちろん節約した以上にご褒美にお金を使っては元も子もないので、あくまでささやかなということですが。

まとめ

人間は欲を満たせるとうれしいですし、楽しみを感じます。
「楽したい」という睡眠欲の強いのが人間ですが、別の欲を満たす楽しみがあれば、続けやすくなるといえるでしょう。

続けてコツコツ何かをしている人も決して、貪欲の心のない人、特別意思の強い人というわけではありません。
貪欲とうまくつきあっていく方法や貪欲を 利用する方法を経験の中から得ているのでしょう。

自分にあった貪欲とのつきあい方がわかれば、新たな可能性が広がっていくことでしょう。
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