質問:不登校が続き、最近息切れ気味です
不登校の子どもがいます。フルタイムで働いているので、帰宅してからと、休みの日は、できる限り子どもたちに寄り添えるように、日々奮闘しています。
しかし、長期戦になってきて、最近、息切れ気味であせっています。
これから子どもにどう接していけばいいのか、どこに希望を持てばいいのか、アドバイスをお願いします。
答え
この相談の内容は、日々の私の仕事そのものです。
病院でも常にそういう子どもの相談に乗っていますし、私が理事長を務めているNPO法人「子どもの権利支援センターぱれっと」でも、不登校の子どもたちのサポートのための居場所を開設しています。
これまで、たくさんの不登校の子どもたちに会ってきましたが、結論から言いますと、本当に不登校は心配ありません。
今は、親もつらい時期だと思いますし、1カ月2カ月単位では変化が見えないですが、年単位で見ていくと、ほとんどの子どもが元気になっていくし、回復していくのです。
文部科学省も関わって行った、不登校の予後調査というものがありまして、不登校だった中学3年生の子どもの5年後を追跡調査したところ、5年後に仕事をしている、あるいは学校に行っている子どもの割合は、約80%でした。
もちろん、子どもによって状況は様々ですが、少なくとも不登校の子がみんなずっと引きこもりになるようなことは決してない、ということです。
よく学校の先生が、「学校さえ行けない子が、社会に出られるはずがない」と言いますけれど、何の根拠があってそういうことを言うのかと思います。
そうではないことは、上の調査によっても明らかになっていますし、実際、学校に行けなくても元気になって活躍している子がたくさんいるのです。
私が関わった子も、みんな元気になっています。ですからまずは、あせらなくていいと、言いたいですね。
不登校は時期に合わせた3通りの対応を
次に、質問にある親御さんの接し方についてですが、不登校の対応は大きく分けて、3つの時期に分かれるといわれます。
最初は休養期、次が充電期、3番めは援助期です。
1.学校に行けなくなったら、まずはたっぷり休ませる【休養期】
休養期は、学校を休み始めた時期で、心身共に疲れ果てているので、食欲もないし、暗い顔しているし、1日中寝ている。そういう時は、とにかくたっぷり休ませる、ということです。
休ませると、だんだん元気になってきます。テレビを見るとか、食欲が戻ってくるとか、家の中では元気になってくるのです。
2.家で元気になってきても、親から「学校へ行こう」は言わない【充電期】
そうなると、もう子どもは学校に行けるのではないかと思うのですが、ここから充電期が始まるのです。充電が必要なのです。
例えばスマホを充電しますね。充電10%でも使えますが、使ってもすぐに電池が切れてしまいますよね。
だからやっぱり100%まで、ちゃんと充電しないといけないのです。
家で元気になったといっても、それはまだ10%くらいで、学校行こう、外行こうと言っても、それではすぐに電池が切れてしまうのです。
ですから、しっかり、焦らずに、家で充電することが大事なのです。
3.子どもが外に行きたいと言い出したら、後押しする情報を【援助期】
家でたっぷり休んで充電が完了すると、子どもは家の中では退屈してきて、「外に行きたい」と言いだします。
そこで、学校復帰に向けて、どういう援助をしていくか、という段階に入ります。これが援助期です。
「充電期」から「援助期」への変わりめの目安は、子どもの口から学校の話題が出てきたり、友達の話題が出てきたりした時です。調子が悪い時は、一切そういう話題は出ません。
そういう話題が出てきたら、いきなり学校に行ける子もいますが、放課後だけ先生の顔を見に行くとか、まずは保健室登校とか、あるいは学校そのものにアレルギーになっている場合はフリースクールとか支援教室に行くなどしてみる。
集団が苦手ならば、とりあえず家庭教師に来てもらって、家族以外の人と会う場を作るなど、いろいろ選択肢はあると思います。
大人の役割は、とにかく「情報集め」です。
どんな行き先があるか、情報を集めます。そして、決めるのは子どもです。
そうしていくと、「じゃあここ行ってみようかな」と少しずつ通いだすようになっていきます。
先の心配よりも、1カ月前と変わった子どもを見る
ここで大事なことは、マクロな見方ではなく、ミクロな見方をすることです。
学校行くか行かないか、勉強するかしないか。そういうマクロな目で見ると、1カ月たっても2カ月たっても「うちの子はちっとも変わりません」となってしまいます。
でもそういう時、私は親御さんに聞くのです。
「では1カ月前と全然変わらないですか?例えばリビングに出てくる頻度はどうですか?食欲どうですか?」と聞くと、
「最初に比べたら、ご飯も食べるようになりました」とか
「笑顔が見られるようになりました」とか
「テレビを見るようになりました」と答えられます。
ちゃんと変わっているのです。
ミクロの面で見ると、確実に、一歩一歩回復しているのです。
無理なプレッシャーさえかけなければ、子どもは必ず、少しずつ元気になっていきます。その右肩上がりの延長線上に、回復ということがあるのです。
決して焦る必要はない、ということです。
ただ、こういうことを親一人で抱えるのは大変ですので、親も支えが必要です。
不登校の子どもを理解してくれるカウンセラーや、相談機関もあります。
私がおすすめなのは、「親の会」です。
不登校の親御さんが各地で親の会を作っています。全国にありますので、ネットで調べればすぐに見つかります。
みんな同じ経験をしていますので、「分かるよ」とみんな共感してくれますし、一緒に涙を流してくれます。
また、先輩お母さんお父さんの話を聞くと、ああ、ちょっとずつ元気になっていくんだ、ということが分かりますので、親自身がホッとできる場所になると思います。
親が楽になると、子どもも楽になります。それが回復につながっていくのです。