東日本大震災から10年
東日本大震災から10年が経ちました。
もう10年、まだ10年、ようやく10年。
さまざまな思いが聞こえてきます。
古典『方丈記』には、「恐れの中に恐るべかりけるは、ただ地震なりけり」(最も恐ろしいものは地震だ)と書かれてありました。
地震によって、生活が一変してしまう現実は、800年前も今も、変わらないようです。
「平凡な毎日は続かない」と知らされると、「自分にとって、幸せって何だろう?」と考えさせられますね。
そんな『方丈記』の一節をご紹介しましょう。
木村耕一さんの意訳でどうぞ。
方丈庵に住んで5年
この山に住み始めた時は、「しばらくだけ」と思っていましたが、もう5年も過ぎてしまいました。仮の庵も、だんだん住み慣れて、屋根の軒に落ち葉が厚く積もり、土台に苔が生えてきました。
たまたま、何かのついでに、都の様子を聞いてみると、この5年間に、身分の高い人が、たくさん亡くなられたことが分かりました。
まして、一般の人が、どれだけ死んでいったか、数え切れるものではありません。
また、都には、何度も火災が発生しましたので、焼けた家が、どれだけあるか分かりません。
でも、私の、この方丈庵は、安らかで、火災の心配はありません。
ヤドカリの教訓
「狭い家だな」といわれるでしょうが、夜には寝る場所があり、昼には座る所があります。
一人で住むには、何の不足もありません。
ヤドカリは、小さな貝を好みます。
これは、そうすべき事情を、よく知っているからです。
大きな貝に住むと命の危険が高まるのです。
ミサゴという鳥は、荒磯にいます。
わざわざ荒波が打ち寄せる岩場を選ぶのは、人間に捕らえられるのを恐れているからです。
儚い命
私も、ヤドカリやミサゴと同じです。
どんな豪華な家を建て、財産を蓄えても、火災、竜巻、地震などで、あっという間に消えていく喜びであることを知っています。
いつまでも長生きしたいと願っても、病気、けが、事故、災害、戦争などで、いつ死んでいくか分からないことを知っています。
だから、儚い命、短い人生を、欲や怒り、愚痴のために、振り回されたくはないのです。
家や財産、名誉や地位が、多いとか、少ないとか、そんなことにとらわれずに、心から喜べる幸せ、安心を求めていきたいのです。
(『こころに響く方丈記』より 木村耕一 著 イラスト 黒澤葵)
心から喜べる幸せを
木村耕一さん、ありがとうございました。
危険だから、恐ろしいからと目を背けるのではなく、まず「正しく知る」ことが必要なのですね。
そうすると、自分にとって、何が大切なのか、幸せなのかが見えてくるようです。
鴨長明さん、大事な教訓をありがとうございました。
『方丈記」の意訳と原文を掲載した
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